ちょっとエロい寄生ウタル1
エレジアの騒動を経て、ウタが一味に参加した後。
船内に増設された完全防音のスタジオにて。
「大丈夫だよルフィ。 私はみんなに感染させないから」
「…………」
呆けた表情で椅子に座ったルフィを前に、小さなテーブルの反対側に座ったウタが喋り続ける。
「だってさ、庇護者達(なかま)に感染させすぎたら、私達は共生から討伐対象になっちゃうでしょ」
「……なん……で……」
赤らんだ顔と焦点の合わない目、呂律の回らない口。
まるで泥酔者のような有様で必死にルフィは言葉を紡ぐ。
「なんでって、ヒトと私達のバランスだよ。 私達は『ヒトの社会』その物に寄生するのが本懐だから……って、あ、あーあー! そゆ事?」
余りに高い適合性故か、人類と寄生蛾の境界を超えた意識と化したウタは、笑いながら続けた。
「駆虫薬だよね! 飲んだのにぃ~何で効かなかったのか!? って、事でしょ?」
「…………あぁ」
エレジアの件が解決した後、ウタはチョッパーの作り出した駆虫薬を飲んだ。
確かに嚥下し、口内も確認された。
しかし。
ウタは艶と潤いに満ちた唇を開き、ルフィに口内の奥を見せる。
「…………!!」
その口内には、もう一つの白い喉と舌があった。
「ふふー♪ すごいでしょー♪ 繭糸と私の組織(ニク)で作ったんだ。 こっちに薬を誘導して飲み込んで、ナカで丸めて固めてさ、後は吐いて終わり」
ルフィの脳内に、出港してから数日後の甲板で『船酔い』して吐いていたウタの姿が過る。
気遣って誰もが目を逸らしたのが仇になっていた。
よく見ていれば気付いたのだ。
薬剤を密封して固めた、小さな繭を吐いていた事に。
「でもこれすっっごく便利なんだよ! 機材無しの肉声だけでさ、声にエフェクト掛けられるんだもん! 一人コーラスだって出来るよ!」
絶望に視界が暗くなるルフィを他所に、ウタは得意げに鼻を鳴らす。
救えたと思った幼馴染はその実、急速かつ秘密裏に、ヒトならぬ領域へと心身を変貌させていたのだ。
「「ほら、ね」」
ウタの声が、異なる声色で二重に響く。
「「あ、もう仕上がってきたかな、そろそろ横になりたいよね?」」
仮にウタが寄生されずに育った場合、およそ発揮できない腕力で、テーブルに突っ伏したルフィを起こして立たせる。
そのまま肩を貸して引きずっていった先は、スタジオ内の仮眠室だった。