ちょいアホエロ

ちょいアホエロ


スレッタ・マーキュリーのはまっていること。それは端的に言ってしまえば、彼氏とのセックスだった。

ペイル寮の寒々しい一室には似つかわしくない甘い声が響いている。

「あっ、あっあっあっ……」

「スレッタ、舌、出して」

「はいぃ……」

エランの有無を言わせない命令口調にスレッタの胎が疼いて、自分からも腰を振って彼のものを奥へ奥へと飲み込んでいく。

「んっ……ふぅ……あぁう」

舌先を甘噛みされて背筋を走る快感にスレッタは身体を震わせるとそのまま達した。きゅうっと膣壁でエランのものを締め付けて射精を促すが、エランはまだまだスレッタのなかを味わい足りないらしく抽挿を続ける。

「い、いまっ、イッたばっかり、でぇ……」

「知ってるよ」

エランは腰の動きを止めなかった。普段はスレッタの意思を都度聞く彼が、セックスの時は強引な姿を見せてくれる。彼が優しければ優しいほど、ひどくされるのがスレッタにはたまらなかった。無視ではない。スレッタの反応を見て、勝手に彼が判断するのだ。まだ大丈夫だね、と。

「はぁ、はぁ、はぅ、もぉむりぃ……っ」

「そう? じゃあこの脚はなに」

スレッタは脚を自分からエランの腰に巻き付けていることに今気づいて赤面する。指摘されても脚をほどけそうにない。

「もっと、って君のここ、言ってるね」

とん、と人差し指をエランのものが入っている胎の上に置かれた。

「いってにゃ、ふぁあ、あぁ」

ぱちゅぱちゅと愛液やら精液やら汗やらで濡れた肌同士がぶつかる。

「きもちいれす、きもちぃ、きもちい……」

「うん。気持ちいいね……」

ぽたぽたとエランの汗がスレッタの頬や胸に落ちた。涼し気な彼はどこにもいない。白い頬はピンク色になって、汗でしめった髪を乱雑にかきあげる仕草にスレッタはきゅう、と子宮の奥を甘く痛めた。スレッタはまた絶頂を迎えたが、もう何度目かもわからない。エランも眉を寄せて、どくどくとスレッタのなかに白濁を流し込む。

「ぁん……あつい……」

ずる、とエランのものが引き抜かれると栓を失ったそこからどろりと液体が流れ出た。スレッタはそれを指で、なかに押し戻すようにいじっている。思い出したようにじんわりと快楽が背筋から全身に広がってゆき、その余韻で身体が跳ねると、また中から白濁が漏れてしまった。

「あ……エランさん……」

「そんなに悲しそうな顔をしないで。またなかに出してあげるから」

スレッタの一連の行動を見ていたエランは熱がみるみるうちに下半身にくすぶっていくのを感じていた。

「ねえ、どうしてほしい?」

「スレッタのなかに、ずうっと、たくさんたくさん、注いでくださいっ」




スレッタはその日、端末を手に持ったまま固まっていた。小テストの結果が、よろしくなかったのである。

今度の期末考査の小手調べのような内容で、このままでは不味いのは明らかだ。母に失望されてしまうかもしれないし、エランにかっこ悪いところを見せたくはない。スレッタは早急に勉強の予定を立てようとして、気づいた。

エランと会いすぎているのだ。ほぼ毎日のようにペイル寮へ行っては、お話をして、いつの間にかあんあんと喘がされている。そんなつもりで訪ねずとも、一度キスをしてしまえばカチリとスイッチが入ったように、彼を求める身体になってしまった。

スレッタは唾を飲み込んだ。

エランさん断ちをしなければならない、と。



とはいえ、その道のりは簡単ではなかった。

試験まであと1週間、といったところでスレッタは地球寮のテーブルに突っ伏していた。女子部屋には勉強出来るスペースが無いので、結局はみんなのいるところで勉強をするしかない。静かに出来るわけではないが、分からないことがあればすぐ誰かに尋ねられるのは利点だ。

「エランさん断ち」をしてから4日。

4日目でスレッタはこの有様だった。

端末で参考書を見ようとすれば、すぐそばのメールアプリをタップしようと指が勝手に動く。通話ボタンを押そうとする指をぎゅっと握りこんで、ぱん!と両頬を叩き、へなへなとテーブルに突っ伏していた。端末は学園生活のサポートや教科書を見るためのものではなく、エランと会話が出来るアイテムだと思っている。他はぜんぶオマケだ。

脳内でエランの声がする。

──僕と会いたいの?

会いたいです。

──僕とエッチしたいの?

したいです。

──いけない子だね。

そうです。スレッタはいけない子です。だから、おしおきしてください……


ぴくりとも動かないスレッタを怪訝に思ったニカやミオリネが声をかけてきた。

「スレッタ、行き詰まってる?」

「何か分からないことでもあるわけ?」

「分からないっていうか……集中できない、です」

「ん〜、じゃあさ、スレッタはご褒美があれば頑張れる? 逆に追い込まれたら頑張るタイプ?」

──いい子だね、スレッタ。何かして欲しいことやものはある?ご褒美に僕がなんでもしてあげるよ。

──悪い子。こんなことも出来ないの?見損なったよ。そんな子にはお尻ペンペンだからね。

「……どっちも捨て難いです……」

「? どういうこと?」

「はっ、いえ! よく、分からなくて……皆さんはどうやってやる気を出すんですか?」

ニカが腕を組んだ。

「うーん、私はご褒美タイプかな……? これを乗り越えれば、もっと面白いことに挑戦できるかも!ってワクワクするというか……」

「それ、ご褒美とかじゃなくない? ニカは勉強自体が楽しいってことでしょ。私は普通に、テスト終わったら我慢してたケーキ食べに行くとか、そんな感じ」

「なるほど……」

やはり、ご褒美の方がやる気が出そうだとスレッタも考え込む。

そしてスレッタにとってのご褒美はもちろん、エランだった。

「というか、エランに勉強教われば? あいつ、成績良いはずでしょ。エランの一言一句聞き逃さないようにいつもアンタ、べったりじゃない」

「駄目ですっ!」

スレッタの珍しく鋭い声に二人は目を丸くした。

「一度エランさんに会えば終わりなんです。一回だけだから……って会ったらそこからずるずる会って、今日だけだけだから……が何回も続いて勉強のことなんか忘れちゃいます!」

「麻薬じゃないんだから……」

「! ミオリネさん、さすがです……そうです。エランさんは麻薬なんですよ……」

「どこに感心してんのよ。二人きりだと集中出来ないなら、ここで勉強すればいいじゃない。さすがにアンタたちでも大勢いるところでベタベタ……するわね。やっぱり、会わないようにして何とか頑張んなさい」

「そんなぁ!」

スレッタはうなだれた。

「スレッタ・マーキュリー」

……。

「ええええ、エランさんっ!? 」

がばりと顔を上げると、そこにはやはりエランがいた。聞き間違えようのない、抑揚のない優しい声。いつも素敵だけれどなんだか今日は格別に輝いて見える。

スレッタがどうしてここに、と口を開こうとすると、少し離れたところからリリッケの「先輩、ファイトですっ」という言葉とサムズアップをもらい、彼女のはからいだと察した。

思わず席を立っていたスレッタはエランをてっぺんから爪先までじいっと見てしまう。こてん、と首を傾げる彼を見た瞬間、スレッタの体温が急上昇した。

スレッタはエランに突進するように抱きつくが、彼はそれをなんなく受け止め、彼女の頭に優しく頬を寄せている。

(あっ、ダメ……いいにおい……)

すううう、と思い切り息を吸い込むと、数日間のおあずけがスパイスとなってエランをより感じられた。

これ以上ここにいては、ろくなものを見せられない、とニカとミオリネはさっと退散した。

「勉強……困ってる、って聞いた」

「はい……全然、集中、できなくて。エランさんに会ったら勉強出来なくなる、って思ってエランさんに会わないようにしたのに、エランさんのことばかり考えちゃって……」

テスト期間は会うのを控える!キス以上のことはしない!

そう持ちかけたのはスレッタだ。エランは少し寂しそうにしながらも、スレッタのためなら、と頷いてくれたというのに。

それに。とスレッタは声を落として言った。

「ぇ、エランさんと、ずっとエッチできてないの、つらくて……エランさんの声、聞くだけで私……」

ずっと出来ていないといってもただの4日だが、二人にとってはそうでは無い。

エランに触れているところからじわじわと熱が広がり、スレッタはぎゅっと太ももに力を入れた。エランが耳元に唇を寄せる。

「明日……しようか」

「ふぁ……っ、あ、で、でもぉ……」

「僕にして欲しいことを考えてて。勉強中、僕に会いたいと思ってくれる度に、僕にやって欲しいことを一つ、考えて。後でぜんぶ……やってあげるから」

「あっ……ひゃい……がんばりますぅ」


エランのご褒美作戦とご褒美エッチの効果はてきめんだった。

問題を解く間、なかなか分からず頭をひねっているとエランの顔がもわん、と浮かんで来るのだが、その度に端末のメモ機能に「頭をいっぱい撫でてもらう」だとか書き込むのだ。(これはまだかわいらしいお願いのほうだ。)それで一旦、エランのことを考える区切りがつく。切り替えて勉強に集中が出来るようになった。

そして5日ぶりのエランとのセックスは、格別だった。

でろでろに甘やかされ、ひどくされ、テストのことが頭をかすめるのに、すぐにどこかへ行ってしまう。

エランもスレッタと会えていないのが辛かったのだと伝わってきて、それがまた嬉しさと気持ちよさに拍車をかけた。

「ああぁぁ……えらんしゃ、きもちい、きもちぃぃ……」

「は、……そうだね……」

「いっぱい、あと、きすまーく、つけてぇ……」

「それもリスト?」

「ぁんっ、は、はい……」

「もちろん、いいよ」

エランにそこかしこに唇を落とされる。ぴり、とした微かな痛みすら快感に変わってスレッタは甘い息をついた。

そしてスレッタはこう思った。

5日我慢してこんなに気持ちいいのなら、今度6日間我慢したら……もっと幸せになれるのでは、と。



ガリガリとペンを紙に走らせ、答えを端末に入力していく。

あと10分。全ての科目の試験が終了する。

長かった。実技もあり、MSの操縦だけでなく、体力テストもあったのだ。そして最後の筆記試験。何も一日にこんなにも詰め込まなくても、と思うほどの過密なスケジュールだったが、ここまでくれば最後まで何とか頑張ろうとスレッタは精一杯見直しをした。

「やめ!」

鋭い声とともに、入力用の端末がパッと別ページに切り替わる。

まだ息はつけない。

「生徒手帳を前に取りに来なさい」

教官が預かっていた端末を次々に生徒たちへ返していく。

スレッタも受け取り、一度深呼吸をしてから通知欄をタップする。

我ながら最低な動機で試験を頑張ったと思うがどうだろうか──



「エランさんっ!」

「スレッタ・マーキュリー」

突進するようにエランへと飛び込もうとして、ぴたりと止まった。まだここは周りに人がいる。

とりあえずは、とベンチで待ち合わせをしていたが、早くエランの部屋へと行きたい気持ちを抑えられない。

エランがすっと手を差し出してきたので、スレッタは顔を輝かせてその手を取った。

「えへへ……あ、あのエランさん、私今回は、平均を超えたのが4つもあったんです! けっこう……良いかなって……」

スレッタが端末を取り出して見せると、エランがそれをじっと見てから、スレッタに視線を移す。

「頑張ったね。苦手だと言っていたものも、前より良くなってるね」

「そ、そうなんです……! あ、あの。エランさんは……」

自分の教科の得意不得意まで覚えてもらっていたことに、スレッタは胸がソワソワとした。

「僕? はい」

「ぅ、おお……すごい、です……! 」

「そうかな。ありがとう」

「私がこんな成績だったら、周りに自慢しまくります……」

「ふふ」

エランが笑う。端末を制服に戻す横顔を見て、また胸が音を立てている。彼を笑顔にできるなら、なんだってやる、なんて大げさなことを考えていた。


「……」

ペイル寮へと進む道のり。周りは木に囲まれて、誰もいない。だからか、スレッタは繋いでいた手をするりと離し、両腕でぎゅっとエランの腕を抱き込んだ。むぎゅむぎゅと胸を押し付けるように。

「……スレッタ・マーキュリー」

「あっ、ご、ごめんなさい……!」

慌てて腕をほどこうとすると、エランが手を握って、少し奥まった場所へとスレッタを引っ張っていく。ずんずんと迷いなく進む足取りに困惑していると、エランが足を止め、スレッタを振り返った。そして、誰がここに座りに来るのだろうというような位置にあったベンチにそっとスレッタを座らせる。

「え、エランさ……んっ、んう」

ベンチに片膝をついたエランが、スレッタの顎を持ち上げて口を塞いだ。

突然のキスに驚きはしたものの、スレッタもすぐに口を薄く開き舌をちろりと出すと、絡め取られる。

外で、しかも深い方のキスをされるなんて、と背徳感を覚えながらもエランの舌に夢中で舌をすりあわせた。ちゅ、と少し大きな音が立って離れると、微かに上気した頬が目の前にあり、スレッタは首に腕を回した。

「エランさん……」

「はぁ……ごめん、僕も相当……」

ふと、視線を下にやると、エランのズボンがぐっと持ち上がっているのが見えて、スレッタは赤面した。

「え、え、エラン、さんっ」

「え? あぁ……」

スレッタの視線に気づいたのか、エランは面倒そうにため息をついた。

「ごめん、少し待ってて。すぐ終わらせる」

「えっ、そんな! 」

「まあ、誰もこんなところに来ないと思うから……」

「ち、ちがい、ます。一人でするんですか……?」

「それは、もちろん」

エランが不思議そうに首を傾げている。スレッタはハーフパンツの裾を握りしめて言った。

「ここ、で……し、しません、か……?いっかい、だけ」

6日ぶりだから、一度だってエランのものを無駄にしたくない。外に適当に吐き出されるなんてもったいない。

「え? 人は来ないだろうけど……始末も大変だろうし。スキンでもあれば少しはマシだけど」

そうだ。パイロットという関係もあって月経が来ないようにしているから、いつも中に出してもらっていたのだったとスレッタは肩を落とす。MSの操縦のための処置をこんなことに使っているとは母も思うまい……と罪悪感を覚えていたが、スレッタはハッと顔を上げた。

「私……持ってます」

罪悪感はどこかにすっ飛んだ。

「そうなの? ……でも、本来はそれが正しかったね」

「はい……み、ミオリネさんに、すごく怒られちゃって……」



「アンタ! ちゃんと避妊はしてるんでしょうね!? 」

「ひぃ、は、はいぃぃ……してる、っていうか、赤ちゃん、できないようにしてる、というか……?」

「は? 」

「パイロットは、生理来ないようにしてる人、多いと思いますよ!だから、まあ……」

「あ、あんた……っ」

ミオリネの頬にさっと赤が差す。

「でも念の為、ちゃんと避妊具付けなさい!いいわね!? 」



「だから、前買ったのがカバンに入れっぱなしでした! 」

セルフレジで購入を済ませたものの、買った当時の挙動不審ぶりはすごかったと思う。

カバンから箱を取り出して、これで大丈夫ですよと満面の笑みを見せた。

「……ミオリネ・レンブランの忠告を無視したんだ?」

スキンを付けてした記憶は一切無かった。この前だって付けていない。

「うっ……だ、だって……、なか。かけてもらうの、あつくて、好き、で……エランさん、いっぱい、感じられるし……」

「立って」

「え? は、はい……ひゃっ」

エランがスレッタのハーフパンツの留め具を外し、すとんと落とした。ブーツに引っかかっている。手袋を外すと、するりとスレッタのショーツの中に指を滑り込ませた。

「あ……っ、えら、さ」

「ん、すごく濡れてる」

スレッタはかっと頬に熱が集まった。先程の深い口付けだけで、その部分だけ空気に触れて少し冷たく感じるまでにショーツを濡らしていたのだ。

「ふ、ぁ……や……っ」

すぐに目の前のエランの胸に倒れて、腕をつかんだ。もう膝に力が入らない。ふにふにと指が肌を押し込み、垂れているものを纏わせて割れ目を何度もなぞった。たまらずに顔を上げて息を吸おうとすると、エランの唇が降ってきて、魚のようにぱくぱくと口を開けてしまう。

くるくると陰核の周りをなぞっていた指がぎゅう、と中心を押し込むと、スレッタは倒れ込みそうになったが、びくともせずにエランが腰を支えている。

「え、えらんさん、もう……も、」

「はやいね」

「……っふ、」

陰核をいじっていた指が中につぷりと入り込んできた。あと一歩、というところで絶頂を逃したスレッタはやきもきと太ももを擦り合わせる。

「やぁ……っ」

「ちゃんと気持ちよくするよ。安心して」

「やだ、はやく……っ」

「ふふ、それは駄目」

もう2本目の指が入り、ぬるぬると指が上下している。ぐ、ぐ、とお腹側を何度も押されて、スレッタは喉から情けない声ばかりが漏れた。

「や、やぁ……、」

「痛いのはイヤでしょう?」

「いたかったこと、ない、です……っ、だからぁ……」

「それはちゃんと慣らしたからだよ。ね? もうちょっとだけ、」

がまん。

エランの優しい、少しかすれた声が耳のすぐそばで聞こえただけで、スレッタはがくがくと太ももが震えた。ショーツはもう、見るも無惨なほどに濡れて、後でペイル寮へ行くまでの道はスキン関係なしに大変そうだ。

「ふぁ……っ、あ、あぅ、またぁ……!」

「ごめんね。最初は僕と、なかでイってほしいんだ」

「ん、はぅ……、エランさん……」

また達しそうになったところでエランがいじる位置を変えた。

けれどそれはエランに外で勝手に果てて欲しくないというスレッタの願いと同じのもので、スレッタは荒い息を吐きながらも笑みがもれた。

「……貰うね」

「! は、はい……っ」

エランがスキンを手に取り、口でびりりと包装を開けた。いつの間にハーフパンツの前をくつろげていたのか、屹立にスキンを被せる。

「足を抜いて」

何とか足を持ち上げ、スレッタはショーツとハーフパンツから片脚だけ抜いた。

エランがベンチに座る。

「自分で、いれられる?」

「は、はいっ……や、やって、みます」

ベンチに両膝をつき、そっと指で秘部をひろげた。顔から火が出そうなほど恥ずかしいが、それよりも快楽を得たい気持ちがすぐに上回る。

ずぷ、と先端が入ったところで、エランの肩に両手を置いた。自身の体重のままに、ゆっくりと腰を落としていく。

「ふ、ぁ……っ」

「上手だね。そのままだよ」

「はぁ、あっ、はい……っ」

早く早くはやく。期待と興奮が収まらないのに、それに反して腰はのろのろと落ちていく。ちょっと入っただけでこんなに気持ちがよくて、ぜんぶはいって、動いたら……そう思うと怖い。

スキン越しなのに、不思議といつもより熱く感じる。

「はぁ……っ、」

エランの熱い息が頬にかかった瞬間、ずぶん、と奥まで一気に貫かれた。

「あ!……~っ! ああ、ん……っ! ひゃ、あ……! 」

「……っ」

「あぅ、あ……あ……えらんさ、まって……っ」

びくびくと肩は跳ね、息を吐き出すが、余韻が抜けない。たったこれだけで軽く達してしまっていた。

「ひゃ……! あっあっあっ、だめぇ……っ」

「ごめん……っ、無理……」

「え、えらんさんっ、うご、くの、待ってくださいぃ……! 」

エランの腕をつかむが、力の抜けた手ではどうしようもない。スレッタはそのまま倒れこみながら、がくがくと揺さぶられた。

「やぁ……っ! あう、やっ、やだぁっ、こわ、い……っ」

「もっと怖くなって……」

「やぁっ、やだぁ……っ、んっん、んっ、んっ」

「スレッタ」

エランが首筋に唇を落とす。じゅ、と強めに肌を吸われても、快感に比べればなんのことは無い。

とてもとても、深いものがくる。

その予感だけでスレッタはぷる、と震えが止まらなかった。

エランが腰を突き上げるのに合わせて、的確に自分も腰を押し付けていた。こんなにぬちょぬちょと音を出しているのに、それが全て自分の出したもののせいだとは思いたくはなかった。

「ん〜〜、ん〜、え、えら、さぁ、も、もぉ……!」

「ぐ、ぅ……ぼくも……っ」

エランの頭にすがりつきながらも腰を浮かせて沈めるのを止められない。

誰かに見られたら。ホルダーの制服だって着ているのに。

全てが快感に繋がる。

「ぁ、あ……っ、あ、〜〜〜〜ッッ、」

「く、すれ、った……!」

「あぅぅ、う、ふ、……っ」

ぎゅうう、と中がひどくうねっているのがわかる。ちかちかと目の前がちらついて、エランが何か言っているのに何も聞こえなかった。

つま先から頭までびりびりと甘い痺れが走って止まらない。すり、と制服越しに背中を撫でられただけで大げさに肩が跳ねた。

「はぅ、あ……えらんさん……」

スレッタはエランの胸に倒れこんだ。するするとおしりを撫でられ、こびた声が出た。

「スレッタ、抜こうか……」

「あ……はい……」

少し寂しく思いながらも、エランの言う通りに腰を上げる。ずるりと引き抜くと、スキンには愛液がべっとりとついて糸を引いていた。

スレッタは震える手でスキンを外して、たぷんと揺れるそれをじっと見てみた。

「わぁ……こんな感じなんですね……いつもこれを、何回も……えへへ」

「……またたちそうになるから、言わないで」

「へっ?は、はいっ」

スレッタはそれを縛り、ゴミ箱を探そうと見回したところで、さすがにここには無いかと諦めた。

ベンチから立ち上がり、びちょびちょのショーツを肌になるべく触れさせないよう軽く履き直す。

「うぅ……」

「ごめん。脱いでからすべきだったのに」

「いっ、いえ! ぜんぜん……あとちょっとだけ、我慢すればいいだけですし……」

スレッタはそう言いながらスキンを持ったままハーフパンツのポケットに手を突っ込んだ。

「僕がそれ、持つからいいよ」

「いえ……っ、わ、私が……!」

食い下がるスレッタにエランは諦めた。彼は何故そんなに自分で持とうとするのかと首を傾げている。スレッタは自身の愛液が周りにべっとりと付着しているのを恥じていた。



適当に衣服を直し、なぜだか無言でペイル寮まで歩いていると、後ろから声がかかり、スレッタは飛び上がった。

「み、ミオリネさん……っ」

「なに? そんなに驚いて」

「いいいい、いえ……っ、て、テスト、おつかれさま、ですね……っ!」

「そうね。アンタなんでポケットに手ぇ突っ込んでんの? 」

またスレッタは大げさに跳ねてしまった。

珍しくエランと手を繋いでいないどころか、ポケットに片手を突っ込むなんて、普段のスレッタからは考えられなかったのだろう。何かを握りこんでいるのは察しがついた。

「な、なんでもぉ……?」

「いいから見せなさいよ」

「ひいっ、ほんとに、これは……!」

ぐぐぐ、とスレッタの腕をミオリネが引っ張ろうとする。スレッタも懸命に腕を上げさせまいと奮闘していた。

「見ない方がいい」

貴重過ぎる、エランのミオリネに対する気遣いだった。

すっと顔を割り込んできたエランに、スレッタはまたもやびっくりしてしまった。

「あっ」

ぽとり。手を開いてしまった瞬間、それはスレッタのポケットから呆気なく落ちた。

ミオリネの顔を見られず、スレッタは白々しく横を向く。

ミオリネは正体が分からず、地面に落ちたそれを怪訝そうに眺めていたが、はっ、と気付いて後ずさった。

よく見なくとも、二人とも適当に乱雑に制服を着ているのがわかった。

「スレッタぁ!!あ、あ、アンタ……!ひにん……はしなさいって言ったけど、どこでヤッてんのよ!!」

「ご、ごめんなさいぃぃぃ!」

「エラン、アンタもなに、あっ、ちょっと!」

すかさずスキンを拾ったエランがスレッタの手を取って走り出した。

色々な意味で真っ赤になったミオリネの怒声を背に、二人は走った。




「ふふ、そんなにそのままが良いんだ?」

「ん〜〜っ、い、い、れす……、エランさんの、あつくてぇ、おっきくて……っ」

「いっぱいなかで出してあげるからね」

「ひゃんっ、うれしい、です、ゃあんっ!」

エランの部屋になだれ込むなりエランはスレッタの制服をひっぺがして抱いた。

存分にベッドの上で腰を振ると、スレッタも嬉しそうに締め付けている。

「あんっ、あ、あぅっ、ふ、ふかい……っ」

「もっと奥、いこうか」

「あ゙、あ……、そこ、め……っ」

一瞬スレッタの息の途切れたそこを突き続ければ、スレッタは頭を振ってよがった。

「あぅ、あ……あ……! いく、また、やぁ……っ」

「イヤ、じゃないでしょう。こういう時、なんて言うの」

「きもち、れす……ふぁああ、あっ」

じゅぷじゅぷと愛液と精液の混じった音が響く。エランはスレッタの腰を抱えなおすと、ぐりぐりと腰を回してえぐるように奥をついた。

「ひ、ぃ、あ゙あぁぁ、あっ、〜〜〜〜〜ッッ、やあぁ、やらぁっ 」

「もう。スレッタ。…………かわいいね」

痙攣する中をエランが何度も突っ切るように腰を揺らした。なかは充分過ぎるほどぬめぬめして滑りが良いのに、スレッタが離そうとしないのが堪らなくて、エランは吐精を我慢するのに大変だった。エランが我慢すればするほどスレッタが泣くのも良かった。

ぎりぎりとエランの背に爪を立ててしまっているが、スレッタはそのことに気付いてすらいない。

「んっんっんっんっ、えらんさぁん、すき、だいしゅきれす……っ」

「うん。僕も好きだよ。だからほら、逃げないで」

「あ、あ、おく、だめだめ……っ、らめぇ……っ」

スレッタが一瞬の寒気を感じると、ぴしゃ、と小さな穴から勢いよく潮が出る。エランは構わず突き続けた。

時折スレッタの爪先にぴん、と力は入るものの、すぐに弛緩してしまう。

「やああっ、しんじゃ、あっ、んっんっんっんっ、や、」

「これくらいじゃ死なないよ。もっと気持ちよくなろう? 」

「やだぁぁっ、んぅぅ、んっんっんっ」

「もう。さっきからヤダヤダばっかり。今日は悪い子だね。素直な君はどこへ行ったの」

そう言うエランの瞳は歪んでいた。

エランの笑顔のためならなんだってやるという決意をぼんやりと思い出していた。

(やっぱり好き……エランさんのこんな表情も見られて……やさしくないエランさん……)

「しんじゃう、ほんとぉれす、えらんしゃ……」

「えっちで死んじゃう死んじゃうって……君は本当にかわいいね」

「んううう……っ、ん〜〜」

こんなに暴力的なものを「えっち」で済ませないでほしいし、わざと真面目に取り合ってくれない彼もスレッタは好きだと思った。

背中が浮くけれど、のしかかられて逃げ出せない。

「やぁあ、エランさぁん……」

「気持ちいい以外の問題があれば聞くよ」

「……ん、んぁ、ああっ、あっ」

「無いんだ?」

彼の歪んだ口元も、好き。




「エランさんっ、すぅ〜きっ」

「ぼくも……好き」

「んへへぇ〜、きゃんっ、あっ、もぉエランさんってばぁ」

行為は次の日の昼にまで及んでいた。たまに食事をし、シャワーを浴びたけれど結局シャワー室でもした。

頭を撫であいっこしていたのに、エランが下から突然つきあげてきて、スレッタはダーメ、と指でバッテンを作って額にキスをした。

ベッドの端に置いていたスレッタの端末がぱっと光った。

「スレッタ、連絡来てるよ」

スレッタは口を尖らせながらエランが見せてくれたそれの画面を見る。びっしりと花嫁からの通知が来ていたが、スレッタはぷいと横を向いた。

「知らないですっ、テスト終わった今日をずっと前から約束してたの、エランさんが先ですもん。それに見なければ、気づいてないのとおんなじです」

「悪い子だね」

「やんっ、エランさん♡」



ホルダー義務の決闘が今日だったの忘れてて、ギリギリで倒した。

ミオリネにはめっちゃ怒られた。


~完~

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