“ちゃんときたえてる”

“ちゃんときたえてる”


身の丈を超すほどに膨らんだ巨腕を振りかぶって、“弾む男”となったルフィが飛ぶ。

これが最後の筋肉風船。最後のギア4。

皆に約束した最後の一発KO。



「“ゴムゴムの”ォ――――!!!」


「16発の聖なる凶弾……!!!」


「“大猿王銃”!!!」


「“神誅殺”!!!」


ドレスローザの空、最後の激突で血しぶきを上げたのは、


糸の凶弾が突き刺さった、“弾む男”の拳だった。


悲鳴を上げる市民、歯を食いしばる戦士たち、せせら笑うドフラミンゴ。

しかし。


「だいじょうぶ」


迫ってくる鳥カゴから逃げもせず、ウタは、戦いの行方を見ていた。

勝敗はわかっている。信じている。


「ルフィが勝つよ」


そう確信している。


「だって―――」




「な、に―――!!?」


ドフラミンゴの顔が驚愕に染まる。

王下七武海、“天夜叉”と称される大海賊の切り札は、確かに麦わらのルフィの拳を貫いた。

だが、しかし。


それがなんだ。

それがどうした。

それしきのことで、この拳が止まるものか。


なぜならば。

鍛えたから。

鍛えぬいたから。

あの日から、



―――帰ってきたら、少しは強くなってるか試してあげる! ルフィ!



……あの日からずっと。

ちゃんと、鍛えてるから。

だから。



――おれのパンチは


「ルフィのパンチは」


――ピストルのように強いんだ!!!


「ピストルよりも、強いんだ!!!」



一瞬だった。

武装色を貫かれてなおルフィの巨拳はドフラミンゴの凶弾を正面から押し返し、打ち破り、そして。


「オオオオオオオオオ!!!」


雄叫びと共に、怒りの拳がドフラミンゴに叩きつけられる。

ぶっ飛ばされたその身体は大地を穿ってさらに深く。

鳥籠の底の底、かつてオモチャ工場と呼ばれた地底深くまで沈んで。

その意識さえ闇に沈めた。


天夜叉、地の底へ堕つ。


それが決着だった。


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