だから皆呆れてたのか

だから皆呆れてたのか

恋を自覚して挙動不審になるツララちゃんのはなし


これは恋だ。

そうツララが自覚したのはついさっきのこと。

相手は同僚にして親友のドゥウムである。


「…いやいや、流石におかしいでしょ」


ツララは困惑していた。

確かに他よりちょっとだけ距離が近くて散々熟年夫婦だのなんでこれで付き合ってないんだだのもう付き合っちゃえよ!だの色々言われてきた二人だが、当事者はぶっちゃけありえないと思っていた。

もちろんツララも含めて。

ではなぜいきなり恋を自覚したのか。

それは少し前に遡る。

端的に言えば男に告白されて断った、それだけ。

それだけなのだが、問題はそのあと。

ツララは帰宅後自分の理想の恋人のタイプを考え出しちゃったのだ。


(んー…やっぱり優しい人がいいよね。ボク寒がりだし、あっためてくれる人かな。包容力のある人みたいな?それに家族と仲が良い人がいいよね、実家のゴタゴタに巻き込まれるなんてごめんだし。それと強いに越したことはない…何かあってボクの後ろに隠れなきゃいけないような人はいやだなぁ。できれば隣で一緒に戦える人。ボクの仕事に理解があって、仕事が忙しくても何も言わないどころか労わってくれる人。あと背は高い方がいいかな。ボクが届かないものとる時とかに手伝ってほしいし。あ、でも会話するときにこっちに目線合わしてくれるような…あれ?これって…)


そして気付いてしまった。


「あれ、これドゥウム?」


で、今に至る。


正直認めたくはない。

認めてしまったら、“友人”ですらいられなくなるかもしれないから。

それでも、それが嫌だと、彼の隣を他の誰にも譲りたくないと思うくらいには。


「あー…ボク、ホントにドゥウムのこと好きなんだ」


思わず顔を押さえて蹲る。


「あっつ…」


いつも冷え切っているその肌は、何故か熱を帯びていた。




翌朝。


「おはよう、ツララ」

「お゛っっ…お、おはよう、ドゥウム」

「…?どうかしたか?」

「い、いや何も?」

「そうか?それにしては様子がおか「ミ゜ッッ」な、なんだ」

「か、顔が近い!」

「いや熱を測ろうとしただけなんだが。それにいつもとそう変わらんだろう」

「そ、そうだけども!とにかく、大丈夫だから!」

「ならいいが…」

「じゃあボク仕事行くから!またねドゥウム!!」

「ああ、またな」


ツララは動揺していた。

だって近いのだ。ありえないくらい。

普通にあと三センチくらい顔を近付けたらキス出来る距離だったあれは。

あと顔が良い。自覚するまで気にしていなかったが、ドゥウムの顔立ちはかなり整っている。自覚しちゃって気付いちゃったからには三割り増しで輝いて見える。無理。至近距離で見て良い顔じゃない。あれはもはや凶器だ。


「…いや待ってボクたち普段からあの距離感じゃなかった?」


恋を自覚してしまった今、ツララはその距離感に耐えられる気がしなかった。




ちなみにこの後思っきし避けちゃってドゥウムはちょっと落ち込む。

恋愛相談された神覚者たちは信じられないものを見る目でツララを見る。

ドゥウム兄さんが自覚したらくっつくんじゃないかな多分。知らんけど。

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