たわけ弟のTS騒動録
父サンデーサイレンス✕母父トニービン「ふぅ……いやまさかボタンスレがこんなに続くとはな……」
俺は見ていたスレに投下されたSSを読み終えて独りごちる。見ていたスレは『ウマ娘になれる代わりに』『あにまん民と強制的にエッチさせられる』という実にアホらしい単発クソスレ……に、なると思われていたパートスレだ。
なんで続いてるんですかねぇ、としか言い様がないが、SSが焚べられた概念というのは大体こんなものである。というかTS願望持ちだけならともかく、犯されたがり大杉で芝なんだが?
そんな事を考えながら掲示板を閉じ、今年のローテーション設定を再開するべく、某競走馬育成ゲームを起動しようとしたその時……
ドタドタドタ……バンッ!!バキィッッッ!!!
「に、兄ちゃん!助けてくれぇっ!!」
派手にドアを開き(壊し)、見知らぬ美女が俺の部屋に飛び込んできたのである。
状況を整理しよう。
女が勢い良く開いたドアはものの見事にドアストッパーを無視して壁にめり込み、蝶番さんがツェペリさんになられてしまった。そしてそこに立つ女は胸が大きく、少年のような快活さと、人妻のような匂い立つ色気を両立した美女である。バストも豊満だ。
何故か男物の長袖Tシャツ一枚しか着ておらず、豊かな胸部装甲からはツインタワーがビルディングしており、大変目と股間に悪い。そんな人物が、いかにも『もう泣きそうです』という表情をしている。結婚しよ?
「……えっと、どちら様で?」
そんな頭の中を忍殺とちんちん亭に侵食され始めた俺の口から飛び出したのは、至極平凡な台詞だった。はーっ、オレの心よ平坦なれ!スズカの胸のように!!
このようにどうでもいいことを考えて心を落ち着けようとした俺に対して、女は爆弾発言を爆速ストレートしてきた。
「兄ちゃん、俺だよ!弟の直樹だよ!とにかく話聞いてくれよ、俺このままじゃ……」
「そんな、声まで変わって」
「ナオミじゃねぇ!……兄ちゃん、ネタが古いよ」
「いや、その、なんというか。どういうこと?とつおんしたのお前?ていうかコレ新手のドッキリか何かか??」
女(弟?)のガチっぽい雰囲気にちょっと冷静になる。弟は元々女顔だがこんなに背が低かったか?それとさっきの俺の台詞のように声が違うし、ブカブカTシャツの裾から伸びるムチムチのトモはどうあがいても男のそれではない。
「……何処見てんだよ、変態兄貴」
そう言って女は顔を赤らめて身をよじり、裾を引き下げで下半身を隠そうとする。おいやめろ。乳房が零れ出そうだぞ、危ない。
というか軽率に人を罵るんじゃない、陰茎が苛立つ!
「ん?そういやそのウマ耳ヘアバンド?動いてるな」
「あ、いやこれ本物なんだよ。だから聞いてくれよ兄ちゃん」
「は?つまり……なんだってばよ」
────────
「なるほど?あにまん掲示板で適当にスレを巡回して、やけに伸びてたTSボタンスレを荒らそうとしたらピカッて光って変なスイッチが現れたから面白がって押したらウマ娘になったと……アホか?」
「アホって言うなよ!こっちは真剣なんだぞ!」
「いやー、だってさぁ。経緯もエロ同人の雑な導入くらいアレだし、それで出てきたスイッチを無警戒にポチるのもアホだし……ていうか本当に直樹なんだよなお前」
「だからそう言ってんじゃん」
「俺の弟はアホだからやることに異存はないけど、流石に非現実が過ぎてなあ」
「……三年前、ゲーム借りに来た俺の顔に○液ぶっ掛けたこと覚えてるか?クソ兄貴」
「おま、ちょ、よりによってそのエピソードかよ!わかった!信じる、信じた!!」
アレはお前が悪いんだぞ、VRカスタムメイドでブリッジオナニー中の俺の部屋をノック無しで開けるから……というか今の発言で練乳を浴びた目の前のウマ娘がイメージされて、俺のピルサドスキーがパドックでお披露目したがってるんだが。
今更だがウマ娘化した弟の見た目はエアグルーヴそっくりである。俺の推しウマでもあり、つまるところストライクど真ん中だ。
「つーかその格好は何なんだよ……痴女か?」
「し、仕方ねえじゃん、身体縮んじまったからズボン穿けねえんだよ。トランクスはなんとかケツに引っかかってんだけど、ウエストブカブカだし……」
「お前結構細くなかったか?」
「流石に女の子のほうが細いよ、兄ちゃん彼女いねーからわかんないだろうけど」
「何故ここでディスるのか、コレガワカラナイ」
「そこはわかれよ……つーか大変なんだよ兄ちゃん、このスイッチ見てくれよ」
と、弟からへぇボタンのようなチープなスイッチを渡される。
どう見てもさっきまでSS読んでたスレに出てくる小道具と同じやつです、本当にありがとうございました。
「いやその……書いてあることはわかるし、実際超常現象が起こってるんだが、何で俺のとこ来たんだよ」
「だって『強制的に』って書いてんじゃん……俺、そういう願望無いし……けど、ヤんなきゃいけないっぽいし」
「それはまぁ……いや、だからって兄妹ではダメだろ」
「だから『強制的に』って書いてんじゃん!兄ちゃんに断られたら俺、何処かの知らねーおっさんに犯されるかもしんねーんだぞ!嫌だよ、俺そんなのやだ!助けて、ねえ助けてよ、兄ちゃん……」
確かに。
書かれているとおりになるとするなら、俺以外のあにまん民の所に召喚されてしまうかもしれない。
それに弟であるという点を除けば、生涯通して抱くことが叶わないような上玉で、しかも両親は旅行中だ。誂えたような据え膳。
だが問題がある。
「……わかった。わかったけど問題がある」
「も、問題って……美少女になっても俺相手じゃ勃たないってことか!?」
「そっちは問題ない、むしろ好みストライクでビンビンだ。良いか、俺は彼女いない歴=年齢の童貞だ」
「いや知ってるし……ていうか俺で勃起すんの、なんかフクザツな気分……」
「仕方ねえだろ、男はおっぱいに弱いんだ。それは置いといて……ゴム、持ってねえんだよ」
沈黙、空白の時間が過ぎていく。……ちょっと待てよお前。
「おい直樹、なんだその考えもしてなかったみたいな顔は。お前俺と違って彼女居たんじゃなかったのか」
「エ、エート、ゴム。ウン、オレ、ゴムシッテル。ホケンタイイクデナラッタ」
「棒読みじゃねえか……彼女とはそこまで進んでなかったってことか」
「………………」
「おい」
「はい……」
「お前さ、ゴム持ってねえんだよな」
「……持ってない」
「たまたま持ってないってワケじゃないんだよな、彼女とはどうだったんだ?」
「今まで生でヤッてました」
「このたわけが!!」
唐突に判明した弟の性事情に思わず怒鳴ってしまう。ビクッと震えて縮こまる姿に少し罪悪感があるが、これはビシッと言っておかねばなるまい。
────────
「色々言ったが過ぎたことは仕方ない、でもちゃんとしろよこういうことは」
「うんわかった、でもなんか兄ちゃん風俗嬢に説教するおっさんみたい」
「お前な、そういうとこだぞ。ともかく、もし彼女さんにデキてたらちゃんと責任……責任?どう責任を取れば良いんだ?」
仮に種付けが成功していたとしても弟はすでに妹である。これは難問だ。
「兄ちゃん……どうしたら良いかは俺もわかんねーけど、そうなったら出来ることはちゃんとやるし、そのときは相談させてほしい」
「そうか……そうだな、とりあえず今はそれは置いといて、俺ゴム買って来るから」
そう言って立ち上がろうとした俺の腕を弟……妹が掴む。強ッ!
え、微動だにしないんだけど。これは人間が敵うはずがないわ、じゃなくて。
「話聞いてたか?俺たち兄妹だぞ、生は駄目だろ生は」
「そうじゃなくて……お、俺を一人にしないでくれよ、コンビニついてくから……」
「いやお前……服どうすんだよ、その格好は俺が捕まっちゃうだろ」
再確認だ。
今の妹はブカブカのロンTの下に腰周りがスカスカのトランクスのみという危険極まりない格好……タイツと白衣を脱いだらこれに近い状態になる勝負服で出走してるウマ娘が居るってマ?
それはさておき、当然ブラなども着けていない為、その豊満山脈の頂上には見事な突起が隆起している。頂天は常に一つ。二つあるじゃねえかふざけんな。
「でも兄ちゃん待ってよ、一人でいる間に召喚されるかもしれないじゃん。なんとかして一緒に買いに行かせてくれよ」
これである。
確かに強制的というのがどう働くのかわからない以上、今妹から離れて行動するのは危険かもしれない。
「……そうだな、まずはその耳か。間違いなく目立つし写メられたらヤバい」
「兄ちゃん、フード付きジャケある?俺持ってない……」
「長いやつあるぞ。下の方は……ベルトで締めてもダメか?」
「尻尾が邪魔で……けど尻尾の下で締めるとズリ落ちてくるんだ」
「一応穿いてみようとはしてたんだな……あ、そうだ!」
俺はふと思い出したものがあり、押し入れからあるものを引っ張り出す。よし、捨ててなかったな。
「に、にーちゃん……これ……」
「コートの下それ着とけ、やっすい生地だからチクチクするかも知れんがあきらメロン」
そう言いながら手渡したのはペラペラの生地で出来たコスプレサンタ服(ヒモ下着付き)
「なんでこんなの持ってんだよ……」
「ネトゲのオフでプレゼント交換したんだけど、アキバのエロタワーでそれ買ってきて詰めた馬鹿がいたんだよ」
「ええ……」
「ちゃんと使えるもの詰めてくれねーと困るよな、俺なんか緊縛用ロープと鞭のセットにしたのに」
「大して変わんねえよ!!」
いやだって『君の縄。』とか一発ネタに最適だし、縄があったら鞭も欲しいだろJK(常識的に考えて)などと思いながら。
「とりあえずコンビニ行く間だけ防御力保てば良いだろ。ついでに下着とかも買うか」
「うー…………」
「覚悟決めろよ、一人で置いてかれたくないんだろ?」
「……なあ兄ちゃん、本番必須って書いてないんだし、く、口でするだけで済ませるとかって」
「いやお前元男としてはそっちのが勇気要らねえか?つーかそれやられたら俺のほうが我慢できねえわ」
「ウマ娘って力強いんだろ、押し倒されても……」
「それで俺をそこのドアみたいにするつもりか?」
「!」
「そうならなくても、我慢できなくて無理矢理しちまったら俺後悔するから……だからちゃんとゴム着けてお互い納得してヤろう、な?」
「兄ちゃん……ごめん。……ありがと」
「どういたしまして。じゃあ俺部屋の外で待ってるから早く着替えな」
上から羽織らせるコートを出しつつ、優しく声を掛けて部屋を出ようとすると、腕を掴まれた。デジャヴ。
「だから独りにするなよおおお……」
「いやお前だからって生着替えは理性にサイコクラッシャーだろ」
「耳塞いで向こう向いてればいいじゃん!なんでガン見する前提なんだよ!」
「わかった、わかったから!」
素直に言うとおりにする。全くこっちの気も知らないで……ボケ倒してなければ多分俺は我慢できていない。なにせバストが豊満だ、岳が豊かだ。男に生まれたなら天を掴みたいのは自然の摂理なのだ……ああいかんいかん。
頭の中で、筋肉モリモリの赤鬼に例のBGMと共にフラフープを回させて精神を統一する。『ウェーイ!!』ダメだヘリオスが乱入してきた。尻がやべぇ、実質エロ動画だこれ!
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SIDE:弟(妹)
どうしてこうなった。そう思いながら、兄と手を繋いで夜の街を往く。脚を撫でる風が冷たく、何も着ていないかのような錯覚すら感じる。
本当に何も考えてなかったのだ。ただ目の前に出てきた謎スイッチを『何これマジウケるんだけどwww』と言いながら連打しただけなのに、今こんな姿になっている。
……兄に彼女が居ないことをディスったが、実のところ俺は彼女持ちじゃない。俺の顔に化粧をしたり、スカートを穿かせたりする、質の悪いただのクラスメイトだ。確かに生でヤッたことはあるが、それだって向こうから押し切られた形だ。
だが兄に言われて気づいた。たとえ事実がどうあれ、デキてしまえば悪いのは男のせいなのだと。そのことに気付いたとき、吐き気が込み上げてきた。
なんのことはない、あいつはそうやって俺を支配するつもりだったに違いない。それと同時に、無意識に兄を同じようにしようとしかけていた自分に嫌悪感を感じた。
兄はいつもこうだ。ふざけているとしか思えないことを言うのに、本当に俺が困ったときはこうして助けてくれる。
だから……だから何時ものように兄を頼っただけだ、あの女とは違うんだ。そう心の中で言い訳をして、オレの手を引く兄の半歩後ろを歩く。
時折、人とすれ違う。そのたび感じる、舐めるような視線が気持ち悪い。男の時から手足の出る格好は嫌いだった、こんな風に見られるから。
気を落ち着けるため、大きく息を吸い込む。借り物のコートからほのかに感じる兄の残り香が、おれを安心させる。
自然と、歩き方が内股を擦り合わせるようになっていく。太ももの内側が湿っていることに誰も気づかないでくれと願いながら。
何もかもが恐ろしい夜の闇の中、ずっと繋がっている兄の手の暖かさだけが、あたしの心に温もりを与えてくれた。
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あの後。
サンタ服の前が閉じなかったり、尻尾穴の位置を確かめるためにど迫力のヒップに第一種接近遭遇するなど、紆余曲折あったが、なんとか妹同伴でゴムを買いに行くことに成功した。
この後に期待するあまりつい一番薄いタイプを買ってしまった俺を責めないでほしい、誰だってそうする。リスクがないなら俺だって直に感じたい。
というかさっきから妹の息が荒い。発情期か?立派なメス犬だな、おのが欲望に非常に忠実で猥雑。規約違反。
玄関を閉じ、鍵をかける。ガチャリ、という音とどちらが早いかというタイミングで妹が背中から抱きついてくる。脊柱起立筋に全集中の呼吸。ついでに俺の息子も起立、不礼、不着席。
「今更だけど、本当に俺で良いんだな?もう戻れないぞ」
「……うん。兄ちゃんがいい」
「悪いが風呂を沸かす余裕はない、息子が限界だ」
「兄ちゃん……」
振り返り、こちらを見上げる妹の肩に手を乗せる。少し震えている。無理もない事だ。だが俺がやらねば誰かがヤッてしまうのだ。ならば妹のため俺は罪を背負おう。
そんな風に格好を付けたいところだが、正直マジで顔がいい。バストも豊満だし、カレンのお兄ちゃんでもこれは耐えられないだろう。ましてや童貞の俺には到底できそうもない、だめだこれ淫乱すぎる……。
「……途中さ、辛くなったりしたら言えよ?」
「右手上げたらいいの?」
「それじゃ歯医者だろ、いや確かに手を上げても止まらねえから同じではあるか」
「止まらないのかよ」
「そりゃまあ、無理だろ。餌を前にした躾の済んでない雄犬様だぞ、童貞は。でも、できるだけ優しくするから」
「……ありがと」
チュッ
「……!お前なあ……!」
「おれ……あたし、全部兄ちゃんに任せるから。仕方なくとか、そういうのじゃなくて……だから、お願い」
「ったく……本当に可愛い妹だよ。じゃ、行くぞ」
「ん、来て……」
(省略されました。全てを読むにはワッフルワッフルと書き込んでください)
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──ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ
バンッ!ピカーーーッ
ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ──
「うるせーな……なんで止まらな、あ、目覚ましこっちか」
朝。
ベッドから気怠げに起き上がり、目覚ましを止める。
俺の隣には全裸の妹…元弟がぐっすり寝息を立てている。相変わらず美人だが、どうにも寝顔は残念感のある馬鹿っぽさが前面に出てきている。
「あー……だっる……。結局昨日は、日が昇るまで大安吉日すっぴんわっしょいだったな」
全身の心地よい倦怠感を感じながら生まれたままの姿で起き上がる。
「んー……さて。腹減ったな、メシ作……る前にシャワー浴びるか」
ついでにアイツがゆっくり温まれるよう、湯を張っておいてやるか。そう思いながら風呂場に向かう。なんか視点が低いような……?
僅かな違和感を感じながら洗面所のドアを開けたとき、見覚えのない姿が鏡に写っていた。
否、この顔に見覚えはある。アドマイヤベガによく似たその姿は、訝しげなジト目でこちらを見つめている。
そしてその頭頂部には、当然の如くデカいウマ耳が揺れていた。
「……えっと、どちら様で?」
俺が喋ると、鏡のアヤベさん?も口を動かす。声は一つ、つまりそういうことだ。
「なんじゃこりゃああああああああ!!」
甲高い声が家を揺らす。
そう、俺が先程目覚しと思って叩いたのは、たわけ妹が昨日置きっぱなしにした、例のボタンだったのだ。どっとはらい。
────────
……その後、起きてきた妹にしこたま笑われたあと、ナニがあったのかは伏せておく。
強いて言うなら女の身体は男より膀胱が小さいって何かで見たことあるなあ……とでも。
更に余談であるが、俺たちは旅行から帰ってきた両親には最初からウマ娘だったと認識されていた。もしもボックスかな?
とりあえず、急に母親がエアグルーヴになっていなかったことは安心だが、ウマ娘になって若返ってはいた。
この世界はどうなってやがるんだ。