たぶんこんなんだった

たぶんこんなんだった


 寝顔を覗き込みに来る不審者を追いかけていたら両想いと発覚しセックスすることになった。

 意味が解らないがそうなったのでそういうものなのだ。

 不審者ことおばけが用意した部屋でセックスというのも警戒心が足りない話だが、両想いとわかり浮かれ半分他の女とヤったことがあると言われ怒り狂った頭ではそんなことどうでも良い。

 御影の思い出の上書き。それが凪にとって今一番大事なことだ。御影のことを抱きたいがそれは今は置いておきとにかく上書き。おばけに接続させたトイレとシャワー室で尻の中を洗う間にだって全く冷静になれなかった。

 早く準備して御影の元にいかねば御影が待ち飽きるなり寝る時間だと判断するなりして無しになってしまう。あってよかったスマートフォン。面倒であまり食べてなくて良かった夕ご飯。さっさと必要な知識を集めて準備して御影の元へと戻る。

「おまたせー」

「おう」

 反応が鈍い。もうやる気がなくなったのか。御影曰く死体を置く布団が敷かれた床の上、ローションやら軟膏やらが散らばっている。

「医療用だからあんまり効果ないかも」

「まぁ大丈夫っしょ。俺、脱力得意だし」

「そーゆーもん?」

「違うの?」

 御影はやる気を失っているというわけではなさそうなので。布団の上の物たちを押しやって寝転がる。

「はいどーぞ。俎板の上の鯉だよ。好きにして。あ、鮪の方がいい?」

「やだ」

 ほら、と御影が手を引き凪の体を起こす。身を起こせば顔がすぐ近くにあって唇が重なった。啄むようにキスを数回、唇を離して目を見合わせる。

「何かうまくなってない?」

「さっきは緊張してたから」

「下手くそで可愛かったのに」

「可愛い方が好き?」

「どっちも好き」

 もう一度キスをする。ぬるりと舐めてきたのは舌か、こういうときは口を開くのだっけ、映画で見た知識で凪は口を薄く開く。舌を触れ合わせて何が楽しいのだかと思っていたけれどなるほどこれは気持ち良い。

 新しい感覚に夢中になっている間に服の中へと手を入れられた。腹を撫でそれからパンツの中へ。キスだけで少し反応していたソレは御影の手に撫でられて大きくなっていく。あふれた先走りでぐちゅぐちゅと音がするのもなんだか恥ずかしい。

「っ、まってレオ、いきそう」

「そっか」

「な、あ、え、なんで?」

 男同士だと良い所も簡単にバレるのか擦られているうちに達してしまいそうになったのに、それを凪が告げれば御影の手が止まった。根本を指で掴まれてイけそうにない。

「今イくと後が辛いと思うけど」

「辛い……?」

「抱かせてくれるんだろ?」

 それとこれとがどういう関係なのか。凪にはわからないけれど御影が当然のように言うのでそういうものかと受け入れる。けれど、あと少しで達してしまいそうだったのだ。無意識に擦り付けるように動く凪を御影は笑って押し倒した。

「良い子だから得意の脱力しとけよ」

「はーい」

 ズボンもパンツも子供のように脱がされて指が尻の中にいれられる。一本くらいなら余裕だなと腹の中を広げようとする指に対して凪は思う。御影のはどれくらいの大きさだっけ、なんて風呂に入った時にうっすら見た記憶を呼び起こしながらぼんやりとしていると衝撃が走った。あっ、と勝手に漏れた凪の声に御影があぁと頷く。

「前立腺ってやつか」

「なるほど……?」

「気持ちいい?」

「たぶん」

 御影の指がそこを撫でるたびにあっあっと鼻にかかった声が出てしまう。楽しそうにこねくりまわして指を増やす御影をつい凪が睨みつけても御影は余裕そうだ。

「こーら凪、触っちゃダメ」

 何を、とは御影の視線でわかった。さっきイきかけて寸止めされた陰茎を無意識に弄ってしまっていた。けれど達したいのだ。もう少し触ったらイける。御影を見る。ダメと繰り返されたので凪は渋々手を上にあげた。

 手もちぶたさな手はグーパーと開いたり閉じたりしていたけれど、更に指が増やされてその圧迫感に耐えるために握りしめてしまった。切り揃えられた爪は強く握ったって手のひらを傷つけることはない。切り揃えた御影はそんなつもりなかっただろうけど。

「そろそろいけるか?」

「いれるの?」

「挿れる」

「ていうか俺を触ってただけだけど勃ってんの?」

「舐めんな」

 いや何急に怒ってんの、と思ったけれどしっかりと勃起しているものを見せつけられて凪は黙った。俺に触って勃つんだ、と浮かれてしまうのも仕方ない。凪は脱力も関節の柔らかさも自信がある。御影に足を抱えられて曲げられたって全く平気だ。

「本当にいいのか?」

「いいよ」

 次は俺が抱くけど。その言葉はしまって頷く。熱い物が充てがわれた。指と比べ物にならない。

「っきっつ。凪、深呼吸して」

「は、ぁ、れお」

「ほら、吸って、吐いて、吸って、吐いて」

「っはー、はーっ、」

「良い子。そのまま繰り返して」

 止めていたらしい息を吐き、言われるがまま深呼吸を繰り返す。散々弄られた前立腺とやらを押しつぶされ進むような動きにたまに嬌声が上がってしまうがこれは生理現象なので仕方ない。

「ちゃんと入ったよ。良い子」

 先程からい良い子良い子と子供扱いか。文句を言いたいけれど頭を撫でられ霧散する。御影に撫でられるのは好きなのだ。もっとと手に擦りつけばたくさん撫でてもらえたから満足した。

「気持ち悪いとかない?」

「だいじょーぶ」

 慣れない感覚ではあるが無理と言うほどでもない。動いて良い? と御影が聞くから頷いた。動かれたって何か変わるわけあるまい。

「……ーーっ! ひっ、あっ、んん」

 腹の中を好き勝手されて内臓を潰され押し上げられているだけ。なのに気持ちいい。突き上げられれば声を我慢できない。前立腺をいじれば男は気持ちよくなると聞いてはいたけれどそれにしたって単純すぎないか。でも、その刺激だけでは射精するのに足りない。もっとちゃんと刺激がほしい。

「だからダメだって」

 脚を掴んでいた御影の手が凪の腕を掴む。握りしめていたはずの手はまた勝手に自慰行為を行っていたらしい。

「いきたい、いかせて」

「もう少し我慢して」

「やだ、いかせて」

「なーぎ、我慢できるよな?」

 お願いでも質問でもなく命令だ。これだから王様は。凪は我慢など嫌いだ。だって面倒臭い。我慢しなきゃいけないことをわざわざしたくない。でも御影が言うのだ。ならば我慢するしかない。

 再開された抽挿にまた少しずつ快感が募っていく。手はこっちと御影の背に回すように指示され自慰はできない。刺激を求めて御影の腹に擦り付けようにも脚を抑えられていては上手くできない。「っあ、ぁん、……っん、ぁア、」

「凪、気持ちいいっていって」

「ぅん、ん? な、なに?」

「気持ちいい、言ってみて」

「き、きもちいい」

「良い子。何されて気持ちいい?」

「っあ、んン、れ、れお、れおにだかれて、っん、きもちぃ、い!」

「良い子」

「ん、きもちぃ、レオ、いい、きもちい」

 気持ち良い、と凪が言うたびに御影が褒めてくれる。それが嬉しくて繰り返すうちに先程よりも快感が大きくなっていく気すらした。

「れ、れお、やだ、ゃ、なんかへん、いきたい、いかせて、」

「そんなにイきたい?」

 こくこくと頭を振る。振れているかも凪には定かではないけれど、とにかく頷けばそっかと御影の手が凪の陰茎に触れた。触られる前から勃ち上がっていた陰茎に待ちに待った刺激に期待したのに、ゆっくりと撫でられるものだから全く足りない。

「れお、れぉ、や、もっとちゃんと、ぁ、さわって」

「こう?」

「ん、うん、そう、ぁ、アっ、イきそう」

「うん、でも俺はもう少しだからまだ我慢な」

「な、なんで?」

「もう少しがんばろうな」

 何で、とつい緩んだ涙腺から涙が出てきても御影は良い子だからと撫でて宥めてくるだけ。ぐりっと今までより深く腹の中をを抉られた。少しずつ奥へ奥へと拓かれていく。全部入っていたわけでないのだと今更ながらに知った。

「凪、もう我慢できない?」

「できない……」

「じゃあちょっと激しくして大丈夫か?」

「イかせてくれる?」

「イかせてやるから」

「ならいいよ、っん……〜〜っあ゛ぅ♡」

 中の物が引き抜かれたと思ったら一気に置くまで挿入された。先程までゆっくり拡げられていた奥に思いっきり叩きつけられ、それが繰り返される。

「れ、れお♡ ぁん゛、っぐ、ま、まって、こわい、んん♡」

「っふ、あー、やっば、イきそ……凪、中に出して良い?」

「ぅあ、あ? なに?」

「いい?」

「わ、わかんない♡ れおのすきにして♡」

「うん、凪もイっていいよ」

 イっていい、そう言われて御影の背中に回していた腕を自慰するために外す。陰茎を触ればすぐにでも射精できそうだ。

「凪、まだ」

 イっていいって言ったくせに。御影のだめという声に手が止まってしまう。調教されたからではなく御影の言うことはなるべく聞きたいと凪が思っているから。そのはずだ。

「れお、れお、いく、いっちゃう、やだ、だしたい♡」

「ん、わかってるから」

「あっ♡ ぁ、アん♡ 〜〜〜っア゛ぁっ♡」

「ーーっく」

 乱暴に御影に陰茎を扱かれる。本当なら痛いくらいだろうに待ちわびていた強い刺激に簡単に達してしまった。そして御影も達したのだとわかった。

 凪の上に覆いかぶさりふーっふーっと荒い息を吐いていたのも少しの間、同じく息の整わない凪へとキスをする。数回口づけを繰り返し凪の中から御影の物が引き抜かれた。

「……凪、どうだった?」

「さいあく」

「何かだめだったか!?」

「俺はイきたいって何回も言ったのに」

「でも気持ちよかっただろ? それに明日のこと考えたら何回もイかせるのは体の負担になるし仕方なかったんだよ」

「本当に? 調教じゃなくて?」

「……とにかく今日はもう休むか」

「ねぇレオ」

 おばけに部屋から出せと御影が言っているところに声をかける。泣きながら扉を作るおばけの横で御影は何? と凪を見た。

「元カノと比べてどうだった?」

「凪の勝ち」

「っしゃ!」

 満足とばかりに凪がガッツポーズした。俺が初めて見たお前のガッツポーズそれでいいのかと御影は思ったり思わなかったり。けれどおんぶをねだられたのでいつも通りおんぶして、まだ繋がってたシャワー室で落とせるだけ痕跡は落としチームの部屋へと戻った。

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