ただ、それだけで

ただ、それだけで


『アンタの歌、なかなかいいわね。ちょっと元気でたわ、ありがと。』

はじめて、おんなのこのともだちができた。


『人形のくせに話しかけるな、歌うな、喋るな』

うらぎられた?うたえない。はなせない


『ウタ、お前の歌は最高だ!』

わたしの、だいすきなおとうさん

『いつも聞いてると疲れが吹っ飛ぶよ』

『俺たちの歌姫だ!』

『プリンセス・ウタってな。ハハハハ』

だいすきな、なかまたち


『なんだこの人形?俺に懐いてんのか』

『俺には娘もいないしなぁ』

『流石に子供くさいよお頭』

わすれられた。だれもわたしをしらない。だれもわたしのなまえをよばない。


わたしって、いたのかな?わたしって、いるのかな?

もう、こわれてしまいたい。きえて、なくなりたい。


『そうだルフィ、珍しいおもちゃをやるよ!生きてるおもちゃだ!』

あなたにとって、わたしはおもちゃ。さよなら、おとうさん。

『せっかくだし名前でもつけたらどうだ?』

わたしって、だれだっけ?どうでもいいや


だれも、よばないんだから


『うーん・・・ウタ!こいつはウタだ!!』



ああ、そうだ。わたしはウタだ。せかいのだれがわすれても、だれもわたしをしらなくても。


『おれはルフィ!よろしくな!ウタ!!』


あなたは、なまえをよんでくれる。ただそれだけで、じゅうぶんだ。

そばにおいてくれて、ありがとう。

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