そんな事もあったね
「ええええええええっ!?ゾロさんも離脱を起こした事があったんですかああああああああっ!!?」
ある日の昼食後のダイニングで、ブルックは目玉が飛び出る程に驚いた(ガイコツに目玉はないが)
事の始まりは、午前中に図書館で航海日誌を見たブルックがウォーターセブンでのルフィとウソップの決闘やロビンの離脱に関する記述でいろいろと感情が爆発してしまった事をみんなに話したことだった
その話を聞いたサンジが「そういや、このクソコンロも勝手にいなくなった事があったっけなー。おれなんて大怪我したなー」と口走ったことでゾロの“脱退未遂”の話になったのだった
「あれは確か、空島から帰ってきてすぐの頃だったかしら」
「おれ達が上陸した島に海軍がいたんだけど、ソイツらとゾロがいっしょにいたんだよなー」
ナミとウソップの説明に時折ほかの面々からのツッコミ(主にウソップの誇張表現に対して)が入りつつ、アスカ島での冒険や戦いの話がされる
七星剣の呪い、島に伝わる悲しい伝説
そしてゾロの幼なじみであるサガのこと
話を聞いたブルックはルフィ達の活躍に感激し、フランキーはある点に疑問を持った
ゾロはなあなあになりやすい一味の空気を引き締める役割を持っていて、ウソップの復帰に対して誰よりも厳しく対応していた
そのゾロが脱退未遂を起こしてお咎め無しとは思えないし、何より本人がそれを許さないだろう
その事を指摘すると、ルフィが「大丈夫だ」と答えた
「ゾロはあの後ちゃんと謝ったぞ!それに、ゾロはおれ達と海賊やるって約束したからな!」
ルフィはそう言って笑いながらゾロの肩を組み、ゾロも「…ああ」と応えた
あの時ゾロとしてはもう戻らないという選択もできただろうが、ルフィがそれを許さなかった
(ゾロ、お前海賊になるって約束したろ?)
初めて会った時、確かに「海賊になる」と“約束”した
その事を覚えていた事にゾロは呆れつつも、とても安心していた
そんな事を思い出したからか、翼が微かに上下していた
「そういえば、彼には翼がなかったわね」
ロビンが不意に呟いた言葉に、ナミ達が「たしかに」と頷く
「アイツ、ゾロみたいに炎も出してなかったな」
「そうだったんですか?ゾロさんとは同郷だと言っていたので、てっきりサガって方にも翼があるのかと」
ブルックが驚きながら紅茶を飲むと、ゾロが「サガにはねェよ」と言った
「村の奴らが全員おれと同じじゃねェ。そもそも、おれの翼は先祖返りか何からしいからな」
ゾロの説明にブルックが「あ、なるほどー」と返す
「そういや、アイツもけっこう体頑丈でなー。ガキの頃は二人揃って怪我知らずなんてよく言われてたよ。だから、あの時は正直泥試合を覚悟してたな」
当時を思い出しながら緑茶をすするゾロに、フランキーが「正直、ってことは意外と早く決着ついたのか?」と尋ねる
「ああ、思ってた以上にな」
「もしかしたら、七星剣の呪いのせいで彼本来の力を十分出せなかったのかもしれないわね。あるいは…」
ロビンはそこまで言うと、微笑みながらコーヒーのおかわりを受け取って後は何も言わなかった
それを見た一同は顔を見合わせた後、「よし!次はおれ様が恐ろしい海王類からみんなを救った話だー!」と言うウソップにツッコミを入れた(ルフィとチョッパーは除く)
あるいは…ゾロの想いがあらゆるものを超えていたのかもしれないわね