それは据え膳とは違うのか
武田晴信は困っていた。
このところ毎晩景虎が共寝に来る。
共寝と言っても、文字通り共に寝るだけでそれ以上のことは何もない。
ないのだが、腕枕の距離で薄い襦袢一枚で、ぎゅっと抱きつかれ、しまいには脚を絡めだされては、それなりの男女関係を知る男としてはただ寝るだけが逆に辛い。
景虎に反応するわけにもいかないから、ヤツが来る前に1発抜くようにしたものの、効果があったのは2.3日だけだった。
後は反応してしまうのをいかに悟られないように寝かしつけるかに注力する以外なく、それでも朝の生理現象は対応しようがない。
ある朝など、ついにそれに気付いたらしい景虎に陽根を鷲掴みにされて目覚めるというトラウマものの経験をしたのに、それでも勃つものは勃つ男の性がうらめしい。
湯から上がり、寝巻きを着る。
見ていたかのように扉が開かれる。
「晴信、お風呂貸してください」
「おう」
いつの間にかこれも習慣となっていた。湯上がりほかほかの景虎を襦袢一枚で廊下をうろつかせるわけにはいかないからだ。
景虎が脱衣するシルエットを尻目に、書を開く。しかし、毎夜、ろくに読み進められはしない。
「晴信、上がりましたよ」
いつも1.2頁も読まないうちに、甘い香りをまとった景虎が抱きついてくるのだ。
「さ、寝ましょう」
「仕方ないなあ」
抱きかかえて褥に入れれば、柔らかい身体がぎゅうっと密着してくる。
それなりにある胸や内腿の柔らかさは、女でしか味わえない。
「晴信もぎゅっとしてください」
ねだってくるものだから、腕を頭の下に通して肩を抱き、もう一方で尻を掴んでさらに隙間なく抱き寄せる。
景虎の脚が襦袢の裾を割って、俺の足に絡みつく。既にすっかり固くなっている逸物にだけ気づかせないようにして、絡みつくままにさせる。
「はぁ♡」
満足したように吐息をもらす景虎は、どうしようもなく扇状的で、更に血がたぎる。
「ねえ、晴信」
「ん?」
「西洋では、共寝をするときは接吻をするものらしいですよ。知ってました?」
「知らんわけではないな」
というか、日本でもする。
この場合の共寝は、添い寝ではないが。
「で、毎日共寝してるのに、接吻したことがないのはおかしいと言われました。してください」
「それは共寝の意味が違」
いいかけた時には、目を閉じて頬を赤くして(湯上がりだからだ)口付けを待つ女の顔があった。
「っ」
やらなければ済むだけの話なのに、堪えきれなかった。
軽く触れた唇は、しっとりとしていて柔らかい。
「これが接吻というものですか?案外どきどきするものですね」
「おう。もっとするか?」
「はい」
俺のせいではない。請われたから従ったまでだ。
「口を開けて、舌出せ」
「?」
経験も知識もないらしい景虎は、素直に従う。
「ん、ふぅ……♡」
舌を絡めると、景虎が鼻にかかった吐息をもらす。
「はるのぶぅ……なんだか変な気分です♡」
「そうか」
言いながら、さらに舌を絡ませる。俺の唾液を送り込み、歯茎の裏から上顎まで舐め回すと、景虎はびくびくと身体を震わせた。
「っ!♡ぁふ……ぅうん♡」
明らかに感じている様子の景虎に気を良くして更に深く口付ける。
「ん、んんーっ!♡っはぁ……はるのぶぅ♡」
口付けたまま、景虎の尻から腰までを撫で下ろすと、ひときわ大きく身体が跳ねた。そのまま尻を揉みしだく。
「ぁう……♡」
胸もそうだが、女の尻というのは何故こうも柔らかいのだろう?景虎はすらりと引き締まった体躯をしているのに、それでもやはり、男とは違う丸さがある。いつまでも揉んでいられる。
「はるのぶ、もっと」
蕩けた顔で景虎がねだってくる。
「たっぷり愉しめよ」
尻と背中をかかえて、褥に押しつけた。華奢な景虎は、すっぽりと俺の身体に覆われる。完全に乱れた襦袢は、もはや腰紐に引っかかっているだけで、乳房も股間も隠してはいなかった。
ちうと舌を吸う。
ついでに素肌の尻を揉み、もう片方の手で触って欲しそうな乳頭もつついてやった。
「ん、んんーっ!♡っはぁ……はるのぶぅ……♡」
びくびくと身体を震わせ、景虎が軽く達したのが分かった。
そして。
「おやすみなさい……♡」
「はっ?」
寝ると言った景虎は即寝する。
すーすーと寝息を立てる景虎を呆気に取られて眺める。
「うそだろ」
自分だけ気持ち良くなって満足して寝るやつがあるか?俺のコレをどうしろというんだ。もうこのまま突っ込んでやっても合法なのではないか?
思いはするが、実行する気はなかった。
景虎のはじめてをそんな風に終わらせるつもりはない。
果たして、あと幾夜耐えられるだろうか。
早く出させろとうるさい愚息を無視して無理矢理眠ったのだった。