それは、まるで親のような

それは、まるで親のような


※モネ、キング、カイドウ・・・次はチャカ視点です。急に彼の視点が入りますので少々読みにくいかもしれません

※少々設定をいじくったとこがあるので閲注。




2年ぶりの再会というものは一同を心躍らせるには十分なものだった。世界各地で仲間の無事と成長、そして必ず冒険の力に、大切な仲間が夢を果たす道の礎になりたいという意志をもって因縁のシャボンディに集結し、そしてリュウグウ王国にて快勝を収めたことで喜びは上限を突破、ついはっちゃけてしまったのである。

そのお陰で現在船上は死屍累々である。久しぶりの宴ではめを外してほぼ酔い潰れているのだ。ただ2人を除いては。少し冷える星空の下にいたからか、つい体に冷えを感じそのまま目が覚めたチャカは少しずつ数時間前を思い出していた。


チャカ「・・・・見事に粉砕されたな」


ン、と声を漏らしながら背を伸ばす。壁に寄り添った変な姿勢で寝てしまったからか肩甲骨辺りがやや痛い。やれやれ、年か?なんて思いつつ立ち上がる。夜風が気持ち良い。周囲にはそのまま寝転がる仲間達。警戒心の欠片もない。次なる目的地も決まらずただ進んでいるだけの状況でしかもこれなのだから少し最先不安になる。


サンジ「お、起きたか」

チャカ「・・・何時だ」

サンジ「23時」

チャカ「随分と寝てしまっていたな」


サンジは空になった皿や瓶を運んでいる途中なのだろう、エプロン姿のままキッチンから話しかけてきた。


チャカ「いつもすまないな」

サンジ「そういうならそいつら運んどいてくれ」


チャカはもう一度光景を見渡す。皆完全に起きる気配が無い。しばらくはこのままだろう。しかしこのままにしておくのも良くない。チャカは1人1人背負って各々の部屋に運ぶことにした。


ゾロのいびきはまぁまぁうるさい。彼はいつも昼寝をするが、その間必ず耳に入るのだ。まぁその分船が安全であるということの証明になる。彼は気配を探るのに優れているので、誰かがその空間に入ってきたら必ず起きて反応するのだ。迷子癖含め不思議な男である。

しかし、誰も指摘しなかったので己も聞かなかったが、片目の傷が視界に入る。恐らく師匠であり宿敵でもある“鷹の目”によるものと思われるその隻眼を見て、チャカは内心ハラハラとしてしまった。ゾロは「一味」の中でも回復するのが早いのだ。ここまでの後遺症と傷跡は見たことがない。

全く、いつも無理ばかりするからそうなるのだ。ウィスキーピークでは単身「バロックワークス」の刺客を全員倒し、そして“Mr.1”との死闘でもあられもない姿になっていたことを思い出す。私も彼を守れるようにならなければ・・・チャカはそう決心し、彼をベッドの上に寝かせてきた。


ローは異様に軽い。身長は191センチと高い方(一般人視点)だが、体重が見合っていない。いくら所謂「細マッチョ」がモテるだの健康的だのと世間では持て囃されてはいるとしてもこれは不健康だ。何なら目についた隈もそのままだ。船医として缶詰状態が続いていた2年前から然程変わっていないのでは、という疑惑も生まれる。

その頃から「ちゃんと生活リズムを整えろ」と口酸っぱく言い続けてきた自覚はある。さぞ鬱陶しかろう。しかし2年後の今でも唱え続ける所存だ。医者の不養生などあってはならないのだから。

ただ、それでも見た目に変化なく五体満足で来てくれたのは嬉しかった。口の悪さも変わらずで微笑ましいとすら思ってしまった。きっと「革命軍」は彼を大切に育ててくれたのだろう。感謝。


甲板に戻る途中、モネの部屋を通る。既に彼女は運ばれていたのだろう。紳士であることを忘れない彼によって。彼女は特異な体質の持ち主であると共に、紅一点でもある。それでも彼等と共に戦場に立ち、寧ろ自ら奮い立たせようと鼓舞や先陣を切るなどと男勝りな一面も垣間見える。

しかし、それでも悩みが消えることはない。丁度今みたいな星天の夜に、ホットココアを淹れて彼女の相談を何度か受けていたことがある。そこで、彼女はその身を晒すことができていたのだろう。そこに他意はなく、それもまた彼女の真の姿である。そこに彼女の人間的魅力があるのかもしれない。

これからの航海でも、そんな芯の暖かい夜は来るのだろう。人の悩みは一朝一夕で解決するものではないのだから。だからこそ、自らを相手と選んで話してくれることが嬉しいのだ。これからも程良い距離感で、寄り添っていきたい。


ドレークは年は下だが自分にとっては先輩である。彼には慣れない船上生活のノウハウを色々と教えて貰ったことが何度もあるからだ。自分が王宮という箱庭に居続けたことを早々に自覚するに至った。そう思えばビビ様はとても活発で凜とした御方であった・・・

特に覚えているものと言えば、「夜に海を見てはいけない」というものだった。その日は丁度自分が夜番の担当だったこともあり、呆けつつ眺めていたところに声をかけられたのだ。曰く、「連れて行かれたらどうするんだ」とのことだった。堅物そうな人物と勝手に思い込んでいたものだから驚いた。

翌日その話をした時の彼の返答もまた印象に残っている。「科学を知っているからこそ、未知もまたその対象になるからな。一概に馬鹿にできるものではない」とのこと。意外ではあったたためにより感心した、そんな過去の思い出。知見の広い男だが、こうして酔って寝ているのを見るとまるで子供のようにも見える。


ふとキッチンを遠目で覗う。明かりは絶えず、音も途切れない。どうやら明日の朝食の下ごしらえをしているようだ。冷蔵庫の中に保存しておいた食材の様子を確かめているようだ。なんなら 夜食の分も用意してある。自分の故郷では見当たらない食物だ。サンジの作る料理は私達を飽きさせることはない。

ドレークが言うに、「海上でコックと航海士に逆らってはいけない」だそうだ。確かに一理ある。他の船では大抵発言権も強いようだが、当然だ。しかし、ドレークもそうだが、サンジもまるで「自分がいるから皆が健康でいるのだ」、と恩着せがましくする素振りは見せないし、本人も心の底からそんなことは考えていない。悪態で誤魔化しているのもあるのだろう。

彼は自らに課したこの仕事に誇りを持っている。そして私達を満足させることに喜びを見出している。素直ではないが皆も知っている。ただ、少し無理をしていないか、なんて思ってしまう時もあった。まるで彼の親みたいなことを考えてしまう。これでは海上レストランで働いていると噂の彼の実父殿に睨まれてしまうかもしれないが、それでも少し心配させるような子供らしさが彼にはある。


さて、我等の船長。世間ではやれ政治犯だの知略に富む悪魔だのと囁かれているが、そういう人間には是非ともアラバスタに来て欲しい。しかもこの寝顔。こんなにも安らかに寝ているこの姿を見て、誰があの「11人の超新星」の筆頭格と思うだろうか。こうしてみると本当にただの快哉とした少年(もうすぐ成人するが)に過ぎない。

彼の手は自分のそれと比べると小さい。しかし、この手で私達仲間を、そして道のりの中で会ってきた同胞を、そして己の夢を守ってきたのだ。これ程に雄大なてのひらはあっただろうか。まるで月並みな感想になるが、自分には到底辿り着かない境地に立っているのだろう。

しかし、彼も年相応なところを見せる。彼は生粋の寂しがり屋だ。現に、酒は嫌いだそうだがそれでも宴を楽しみ、そして皆と同じ場所で寝ている。彼もまた、必死に背筋を伸ばして頑張っているのだろう。せめて、これからは頼れるような男になりたいものだと願いながら、彼をベッドまで運ぶ。だがよだれをつけるのはやめて欲しい。


全員を運び終え、フゥとため息1つ。こうしてみると、あの日を思い出す。晴れ渡った地平線。祖国を背中に、海原に走り出したあの出発の日を。腕につけて×のマークが本当に輝いて見えた。


“めそめそすんな!そんなに別れたくなきゃ、力尽くで連れてくりゃよかったんだ”

“最低・・・”

“蛮族だな”

“マリモ”

“三刀流”

“ルフィ、それは罵倒にはならん”

“あー俺が悪かったよ・・・”

“フフ、ハハハ!”

“チャカ、どうした”

“いや、そういえば君達も海賊だったな、と思い出してね”

“しかし、アラバスタはもう何も奪われないだろう。何しろ、君達がいてくれたからな”

“奇妙なものだ、海賊によって傷ついた国が、海賊によって甦ったのだから”

“お前もまさか仲間になるなんてな・・・”

“これからよろしくな!チャカ”

“あぁ、よろしく頼むぞ、ルフィ”

“そういや、チャカラッポイてのはどういう・・・”


あの日から、この若人達の背中を追うばかりだったかもしれないが、それでも私にできることはあるのだろう。何せ、今は自分が人生を一番長く歩んでいる。だから何だと言えばそれまでだが、それでもその経験が彼等の力になれるのなら。


チャカ「サンジ、私も手伝おう」


今は、彼等の安息と成長を喜ぼう。今も働く彼を手伝った後に、用意してくれているおまけの夜食でも楽しみながら。









Report Page