その色を問う
「あれ、石田くんこっちやったっけ」
平子撫子が下校していると、石田雨竜と方向が一緒になった。たしかこの道は彼の自宅とは別方向のはずだ、今まで帰り道が一緒になったことがないのだから。
「少しね」
「……ふーん」
まあいいか、と思いそのまま何か喋ろうかと思案しながら歩いていると、後方に霊圧を感じた。この霊圧は——。
「家までついてくる気かい? 黒崎一護」
「あ、黒崎くんや」
そう、黒崎一護。彼も撫子のクラスメイトだ。
「ちぇっ。バレてたのか。いつから気付いてた?」
「井上さんと教室のドアの所から僕を盗み見てた時から」
「ほーーすげーすげーたいしたもんだ」
「君の霊力はバカみたいに垂れ流しだからね。猿でもわかるよ」
「何だとォ?」
——なんか始まってしもた。
若干戸惑いつつ、静観する。これはとっとと帰っていいのだろうか。
「君はどうもそういう、霊力の高い人間を察知する能力は欠けてるみたいだね。その証拠に今日まで僕の存在に気付かなかった」
「悪かったな! 俺は人のカオとか憶えんの苦手なんだよ! だからオメーのことも……」
「そうじゃない。僕は気付いてたよ。この学校に入学した時から、君の霊力の異常な高さに。その君が、5月の半ばに死神の力を身につけたことにも」
そうだ。
——そういやそうやった。黒崎くん、死神やったわ……ルキアちゃんも死神やし、オカンたちからは「名前を教えるな」って言われとるし、でもクラスメイトやからそれもムリやし……アタシはどうしたらええんや……。
「そして朽木ルキアの正体も」
ぶわり、広がった霊絡に視線が吸われる。
石田が一護の霊絡を掴んだ。
「知ってたかい? 死神の〝霊絡〟は色が紅いってことも。……そしてそれは——平子さん、君にも言えることだ」
「!」
石田は撫子に向き直る。
「君が何かの能力を使う時……君の霊絡は白から紅へ変わった。君は……一体何者なんだ?」
「……」
沈黙の後、撫子は石田に近づき口を開いた。
「なんやァ石田クン、アタシの身体に興味津々なん? や〜ん石田クンのスケベ♡」
至近距離で揶揄うような声音で言われた石田は顔を赤くする。
「なっ!? ちがっ、僕は、」
「二人ともほなな〜! あっはっは!」
そのまま撫子はその場から走って離脱した。これで誤魔化せただろうか。
「……いつ見られたんやろ」
オカンたちにバレたら怒られるなァ。そう思いつつ、撫子は帰り道を急いだ。
「……で、なんだっけかスケベ」
「違う! 僕はそういうつもりで彼女に訊いたんじゃない!」
「実際はどうなんだよ、興味津々なのかスケベの石田」
「だから違う! ああもう! ……僕は滅却師、虚を滅却する力を持つもの……」
(締まらねえな……)