その後の話
14翌日の放課後、帰宅途中
「…………なんか、すごいあっさり解決したね。」
「おう!おれの仲間はすげェだろ!」
解決に至った理由は、ルフィの同級生が、ルフィと〇〇たちの会話を録音していたからだ。
そして事件発生。
その録音を出せば全てが解決できたはずなのだが、ルフィの仲間からの提案でここで一網打尽にしようとした…ということだ。
それが原因でここまで提出が遅れたという。
全ての準備が整い、朝一で学校側に提出、その状態で放課後、話し合いがスタート。
証拠があると言い、顔すら映っていない写真を提供した〇〇側に対して、準備を重ねて、言い逃れができないレベルの証拠を提出したルフィたち。
どちらが信用に足るのかは一目瞭然だった。
〇〇くん側は捏造だと騒いでいたらしいが、たまたま来ていた校長の知り合いの世界一の科学者がいうには…
これだけの捏造が行えるのなら、是非ともうちに来て欲しいものだ
と言う一言で黙らされたらしい。
そこから用意した証拠から、どんどん余罪が出てきた。今回同様、女子更衣室の盗撮に女子トイレの盗撮、スカートの中の盗撮などなど。
結果、主犯の〇〇くんは退学、他の人たちは一番軽くて1ヶ月以上の停学という罰を与えられた。こんな馬鹿なことをしたにはほとんどが3年生だ。一時の過ちでこれから先の人生を棒に振ることが確定した。
その後の彼ら彼女らがどうなったのかは知る由もない。
「それにしても…本当に、〇〇くんたちだったとはなぁ…」
「……そんなに信頼されてたのか?そいつら…」
「うん…勉強もスポーツも両方できてたし、先生からの頼み事も嫌な顔せずにこなすし、顔もいいし、本当に信頼されてたと思うよ。ファンクラブができるくらいだし……あ、私もあるよ。」
「おう、知ってる。」
「そっか。……そういえば、〇〇くんに告白されたんだった。忘れてた。
「は!?いつだよ!?」
「去年の秋ぐらいかな。好きな人いるから断ったけど…そっからあんまり話すことなくなったなぁ…その前はしつこいぐらい話しかけてきてたのに…」
そうこう話しているうちに家に着く。ルフィの支えがなくなる。
「ここまでありがと。別にこんなに過保護にならなくても良かったんだよ?」
「………おれがやっちまったこととはいえ……すげェ痛そうにしてるウタを見たくないんだ…」
「あの時は痛いって泣いてもやめてくれなかったのに?」
「………………ごめん」
「わー!冗談!もう気にしてないから!そんな顔しないで!」
「……………おう!」
「ほっ……良かった。じゃあ入ろっか。あ、ごめん。水あげておいてくれない?」
「わかった!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「………………………………ウタに好きな奴がいるのか………」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ルフィは家に入り、手を洗い、ウタの部屋に向かう。
「ウタ、入るぞ。」
そこにはベッドに腰かけ、項垂れているウタがいた。
「…ウタ?どうかしたのか?」
ウタに近づく。隣に腰掛ける。そしてーーーー
「………」バッ
「うわ!?」
ドサッ…ギシ…
「これで逃げられないよ…ルフィ…」
「ど…どうした…?ウタ…?」
「ごめんね…急に押し倒しちゃって。こうでもしないと…なんか逃げられそうだなって…」
「…逃げねぇよ……話したいことあるならちゃんと聞く…」
「うん…ありがとう…」
そう囁かれ、体の上から退かれる。
再び、ベッドに並び腰掛ける。
「………ちゃんと謝ってなかったなって思って……」
「え?何にだ?」
「ルフィを疑ったこと。ルフィを誘ったこと。」
「……でもあれは演技だったんだろ?なら別に…」
「演技だったとしても、ルフィを疑うべきじゃなかった。私だけはルフィの味方でいてあげなくちゃいけなかったのに……!……なのに……!」
「………正直に言うと…すげェきつかった。ウタもおれを信じてくれねェんだって…泣きそうになった…」
「!!…ごめん!ごめんね…」
「けどよ!」
「……?」
「ごめんっつーなら…!おれの方だろ…!」
「おれがお前に何したのかわかってんのか!嫌がるお前を無理やりだぞ!初めてだったんだろ!すげェ痛がってんのに!泣いてたのに!それを無視して、おれは…!…お前の……」
「…………あれに関しては私が悪いよ……ルフィが思ってたよりも……その……私に興奮してたのに気づけなかった私が……」
「ウタは悪くねェ!」
「私が悪いって言ってんでしょ!」
「だって…!ウタは好きな奴がいるんだろ……!……そいつにあげたかっただろ!」
「はぁ!?……いや…その…好きなやつって……」
「なのに無理やりおれが奪って、お前に一生残る傷をーーー」
「ちょっと待って!」
暴走するルフィを一喝する。
「あんた…あんなことしておいてまだ気づかないの…?」
「………何がだよ…」
「私の好きな奴」
「………おれじゃないのはたしか「あんたに決まってんでしょ!!」………は!?」
呆れる。あれだけのことをされておいて、しておいて、私の想いに気づかなかったらしい。
「まぁ、私もルフィにお姉ちゃんとして接してたから、あの日の前ぐらいまでわからないのも無理がないよ。でもさ、あんなことルフィ以外のやつにはしないよ。」
「………………」
「結果的にはああいうことをされちゃったわけだけど、私の言葉選びが悪かったというか…高校生の性欲を舐めてたというか…」
「………………」
「そ、それよりも!………あんたは私のこと、どう思ってるの?正直に答えて。答えないと出てくから。」
「…………こんなこと言う資格なんかないけど…」
「資格なんて私があげるよ。」
「……ウタが好きだ……」
「……どういうところが?」
「……歌を歌ってる時のかっこいいウタが好きだ。美味いものを食べて嬉しそうにしてるウタが好きだ。悪いことを見過ごせない強いウタが好きだ。………おれと一緒にいる時に見せてくれる、優しい笑顔を浮かべるウタが……大好きだ……」
「………嬉しいな…そこまで思っててくれるなんて…」
横に座るルフィを見つめる。ルフィも私を見つめてくる。
「ルフィ…ギュッてしてくれない?私もするからさ…それでこの話はおしまいにしよう…?」
「…ああ…」
今度はちゃんと向かい合い抱きしめ合う。力強く、それでも優しくルフィは抱きしめてくれる。ルフィを体全体で感じる。
「ん……じゃあ…これでさっきの話はおしまいね…」
「ああ…ありがとう…ウタ…」
抱擁が解かれるその瞬間…ウタはルフィに押し倒された。
「は…?何やってんだ…ウタ…」
正確にはウタがルフィの腕を引っ張り、ベッドに倒れ込んだ。
「どっちが悪いのかって言う話はおしまい…ねぇ…ルフィ…あの時の感情とか何を思ってたのかは無視してさ…聞いてみたいんだよね…」
顔をルフィの耳元に近づける。
「私の身体…そんなに気持ちよかった…?」
「!!?なに…言って…」
「正直に答えてね…答え次第ですること変わるから…」
ルフィが葛藤してる。
「……その………すげェ…きもちよかった…です…」
「……ふふ♡そっかぁ…すげェ気持ちよかったかぁ…」
「何なんだよ!急にこんなこと聞いて!」
「んーとね…気持ち良くなかったんなら…諦めようって思ったんだけど…」
ルフィの首の後ろに手を伸ばし、抱き寄せる。
「あの日のこと…やり直し…しない…?」
「は……?」
「正直に言うとね……あの日のルフィが頭から離れないの…私を襲うルフィ…私の上で腰を叩きつけるルフィ………私の中に欲を吐き出す時のルフィが……」
「………!………」
吐きそうになっているルフィがいる。けれども続ける。
「だからさ…今度はいっぱい愛してくれない…?」
「……おれは…」
「これはルフィじゃないとできないよ…?私を傷つけたルフィにしか……」
「…おれ、は…」
「……ルフィの愛で…痛みと苦しみの記憶を幸せな記憶に塗りかえて…?」
「……わかった……痛かったり、辛かったりしたら…言ってくれ。」
「あーーーーーーーー」
そして私たちはついに、心の底から繋がり合うことができた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そこからの日々は大きく変わった。
ルフィと恋人になれたということがなぜかすぐに学校中に広まった。
そこからはルフィは私のファンクラブの人と、私はルフィの隠れファンの人と一触即発の雰囲気になっているが、全く気にすることなく過ごしている。
シャンクスからは
「そうか!ようやく恋人になれたか!おめでとう!ウタ!ルフィ!……おれはまだ爺さんにはなりたくないぞ!?」
と純粋な祝福と変な心配をされた。
ルフィの祖父であるガープさんからは祝いの言葉の後に
「ひ孫の顔が楽しみじゃわい!」
と言われた。
「みんな気が早いよね…まだ学生なのに…最低でもルフィが卒業してからじゃないと…」
私の隣で眠るルフィを見て、そう呟く。
「んんぅ……うたー……」
「夢にまで私が出てるんだ…ふふっ…」
ルフィの髪を撫でてあげる。気持ちよさそうにしている。
あんな出来事から始まった関係だけど、思いのほかうまくいっている。この先もそうだとは限らないが、それでも…何があろうと、ルフィと一緒に乗り越えていくと心に誓う。
「ねぇルフィ、幸せにし……ううん…一緒に幸せになろうね…」