その後の歌姫 1
1朝…エレジアの港
「では…ウタ…元気でな…」
「うん…ゴードンも体には気をつけてね…」
「ああ、もちろんだとも…ルフィくん、そして他の方も!ウタを受け入れてくれて…ありがとう…!」
「そんな感謝しなくていいって!楽にいこう!」
「ゴードン…本当に今までありがとう!私!頑張るから!応援しててね!」
そして、ウタとゴードンは…もう1人の家族として、最後に抱擁し、麦わらの一味は航海を再開するのであった。
「しかし…今更だが、良かったのかい?ウタちゃん?育ての親なんだろ…ゴードンさんは。あの島に1人っきりにしても…」
「うん、大丈夫だと思うよ!ゴードンはね、色んなところから音楽の指導に来てくれないかって誘われてたの!私がいたから全部断ってたみたいだけど、今後は引き受けていくって話してたから!」
「ヨホホホ…流石は音楽の島の王、といったところでしょうか…。一度あの方の音楽もこの耳で聴いてみたいですね…。私…耳、ないんですけど!ヨホホホ!」
「ゴードンの音楽はすごいんだよ!私も負けてないけどね!あとずっとソウルキングの音楽を生で聴いてみたかったの!今度一緒に歌ってくれない!?」
「おや、それは光栄ですね!今度一緒に歌いましょうか。ところで…ウタさん…」
「ん?何?」
「パンツ…見せてもらってもよろしいでしょうか?」
「ハァ!?」
「早速セクハラすんな!」
「ヨホホホホホホ!」
びっくりした…紳士だと思ったのにあんな人…人?…だったんだ…
「ハァ…ウタ…ごめんね…あれ…ああいうやつだから気をつけてね…」
「あははは…大丈夫だよ…ナミ!絶対に見せないから!それにこの下、ちゃんとーー」
「わァ!ちょっと待ちなさい!見せようとしない!」
止められちゃった…それにしても色んな人がいるなぁ…
「うし!じゃあ、ウタに……この船の新入りに挨拶してもらうか!」
「急だね!?」
「ん?そうか?」
ハァ…ま…こういうやつだよね…ルフィは……♡
「それじゃあ…みんな!改めましてウタだよ!得意なことは歌を歌うこと!好きなものは歌と……歌だよ!迷惑をかけるかもしれないけど、どうかよろしくお願いします!」
危ない危ない♡口を滑らすところだった♡
「おう!よろしくな!」
ルフィが真っ先に答える。もう♡昨日あんだけ愛してくれたのに♡
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「さてと…船長?さっそく歓迎の宴でもするか?」
そう言いつつも足はキッチンに向かっていた。
宴好きの船長だ。しかも12年ぶりに幼馴染と再会できたんだ。盛大に祝ってやらないとな。
……………あの配信を知ってる身としては、少し複雑な気分だが……
その時、ルフィの口から耳を疑うような言葉が出てきた。
「いや!今日はしねェ!」
……………………ハァ!?
「いやいやいや!待て!ルフィ!せっかくプリンセス……ああいや違う!ウタが仲間に……これも違う!仲間が増えたんだぞ!?それなのになんもしねェっていうのか!?」
全員がざわつく……………?………あの野郎だけやけに冷静だな……
「だから!今日は!しねェって言ったんだけど!」
「なんでだよ!ルフィ!らしくないぞ!」
「ウタ…お前…どっか痛いんじゃないか?」
「え…?」
「歩くとき、足引きずってるように見えてよォ…」
「あ…えと……それは………!!昨日の夜、少し配信しようと思ったときに足を捻っちゃってね…」
「これが理由だ!やるなら元気な状態でやりてェ!」
取ってつけたような理由だな…………
……………らしくねェな…ほんとにこいつはルフィなのか……?
「ええ〜!それ早く言ってくれよ!ウタ!捻挫を舐めたら酷いことになるんだぞ!」
そこからは色々ドタバタ騒ぎになって、結局歓迎の宴は別の機会に…ということになった。
そしてその騒ぎの中、誰にも見えないように昏い笑みを浮かべるルフィに……ただ1人を除いて気づくことはなかった。