そのふわふわは、好意の化身

そのふわふわは、好意の化身


慌ただしくウォーターセブンを出港して一日経った昼下がり、甲板ではルフィ、ウソップ、チョッパーが三人並んで昼寝をしていた

真新しい芝生は大変寝心地が良く、三人とも気持ちよさそうに眠っている

その近くではナミとロビンが本を読んでいる

変わらない中に新しさも加わった、麦わらの一味の日常がそこにあった


そんな光景に少しだけ首を傾げるのは、まだ加入してから一日しか経っていない船大工のフランキーだった

「なァ、ニコ・ロビン」

「どうしたの?」

「アイツら、あれでいいのか?」

「ええ。どうしたの?」

「いや、あんなよくわからんモンに群がられてよく熟睡できるなと思ってな…」

そう言ってさらに首を傾げる彼の視線の先には、緑色の塊を布団代わりに眠るルフィ達の姿があった


ふわふわとした緑色の毛を持つ、球体状の何か

よく見ると目のようなものもついていて少し目付きが悪い

手のひらサイズと思われるそれが、ルフィ達を包み込むように大量に乗っていた

「ありゃいったい何なんだ?」

「マリモポイントよ」

フランキーの疑問にロビンはサラリと答える

「マリモポイントってのは何だ?」

「マリモポイントは、ゾロからこちらへの好意なの。彼が誰かに対して好感を持った時、あの子達は生まれるのよ。あなたも既に貰っているでしょ」

そう言うとロビンは何かを手のひらに乗せて撫で始めた

よく見るとそれはマリモポイントだ

マリモ達はロビンの手の上で少し照れくさそうに目を細めながらも、気持ちよさそうに撫でられている

「あー…確かに貰ったな」

フランキーはそう言いながらウォーターセブンでの事を思い出した

エニエス・ロビーからウォーターセブンに帰ってすぐ、傷だらけの手で「やる」と言ってドサドサと渡されたのを覚えている

ただ、その時はこれが何なのかを尋ねる気力がなく、その後一味の新しい船を造るに至ってどんな設備が欲しいのかの希望を訊いた際に「マリモ達の部屋を作ってくれ!」と言われた時も「何の部屋だ?」と内心思いながら造っていた

その地味に頭の中に引っかかっていた疑問は、今こうして解決した


「しかし、誰かに好感を持つとあの緑が生まれるって、あの野郎は何者なんだ?」

頭に引っかかっていた疑問は解決したものの、新たにわいた疑問にフランキーは首をひねる

「それが、彼自身もどういう経緯で生まれるようになったのかわからないらしいの。とにかく、昔からそういう体質だったらしいわ」

ロビンがそう言った時、隣で会話を聞いていたナミが「そうなのよ」と返した

「本人曰く、物心ついた時から出るようになってたみたい。おまけにけっこう時と場所を選ばないから大変。ノックアップストリームで大変な時に私の上に降ってきたりしたわ。ウソップなんて、初めて貰った時は全身埋もれてたわね」

呆れと嬉しさが混じったナミの言葉にロビンが微笑む

そんな二人を横目にフランキーは『埋もれるってやべェな』と思っていた



この数日後、魔の海域にてフランキーは全身マリモまみれになるのだが、それはまた別の話

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