そして君は死ぬ

そして君は死ぬ

いとめぐり



※『もしも本来の闇堕ち時空とは違って生き延びてしまったら。』と言うifです。

※この場合、『一般人』として生き続けます。




















「...今日も曇天ですか。」

カーテンを開いて、いつみても変わらない雲が織りなす空に、また独り溜息を吐く。澱んだ空気と晴れない胸中。変わらず逃げ続ける日々は何を思うのか。

そんなことを思いながら、朝から重たい珈琲を片手に空を見上げる。もう何日も見てない朝日が恋しくて、けれど来たら来たで恐ろしく見えてしまうのだから、来ないでと願う自分もいた。

澄んで美しい明かりにもなれず、されど灯火のように仄かに佇むことも出来ず。何処へ行けど何処へ去れど、僕は変わらず臆病なままだ。

「...なにをするんでしたっけ、今日」

思考する傍ら、壁に掛けた小さなカレンダーを見る。長くなった前髪の隙間から見える文字は小さく、印も何も示されていない。今日は何もせず、ただ独り家にいるだけか。

手近に雇ってもらった職場の安月給で食い繋ぎ、何とか生を謳歌する日々。謳歌と言える程のものでもないけれど、無駄に息を吐いて生きたがっている自分にとっては誇張でもこのくらい言わないと拙いだろう。

それとは裏腹に残る希死念慮を珈琲で流し込み、熱さで溶かす。体に染み渡る熱さが冷たい体を温めて、心を酷く虚しくさせる。隣に誰もいない、怨霊でさえもいない日々がこんなにも虚しく感じるなんて。誰かと話せていた日々...例えそれが、自分を騙していたような存在であれど、どれだけ幸福だったのか。

「...大人しく本でも読みましょうか。」

閑散としている小さな本棚に目を遣り、1冊手に取る。黒ずんで読めなくなったタイトルから外れ、詩集と表紙に書かれた文字を指でなぞる。何度も読んだ、もう何度も。


...本当は、飽き飽きしているんだろう。

何の為に生きて、何の為に死んでいくのかも分からないから。

虚しく酷く、愚かに。無垢にも何にも成れず不安定なまま漂う自分が嫌なんだろう。愚鈍である自分に嫌気が刺すだろう。



独りなままが、嫌なんだろう。



そんな本音を隠して、今日も生きている。

何も考えず、止めた思考のまま。

誰とも知れず、独りで。

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