そうだ。非術師の女を見に行こう

そうだ。非術師の女を見に行こう


「あれ?東堂さん?どうされたんですか?」

「明日、高田ちゃんの個握がある」

「・・・で?」

京都校のとある1室。和やかに会話をしていた真依と錫音の元に突如訪れた東堂は、鬱陶しいと言わんばかりに顔を歪める真依を一切気にする事なく言葉を続ける。

「また京都でのチケットが取れなくてな。東京で開催されるらしい」

「案内しろって事?いやよ」

「即答・・・」

シッシと手を動かす真依に、錫音は微妙な顔で呟き東堂は全く気にすることなく続けた。

「もし万が一会場にたどり着けなければ、俺は何をしでかすかわからんぞ」

「ほぼ脅しですね」

「それ、あなたが問題を起こさない以外の利点私にあるかしら?」

「乙骨に伝言をするため東京校にも寄る予定だ。姉とも会話できるだろう」

「っ・・・!別に、私はあんな奴に用なんて・・・」

息を詰め視線を逸らし否定した真依の様子と東堂の言葉に、錫音は首を傾げ口を開く。

「真依さんってお姉さんがいるんですか?」

「・・・まあね。4級の出来損ないよ。呪力もほぼ無い、自力じゃ呪霊も見れない落ちこぼれ」

「それは・・・その、苦労・・・しましたよね。お2人共・・・真依さんのお姉さんならきっとステキな方だと思いますし、会ってみたいです!」

ステキという言葉にピクリと反応し眉を顰めた真依は、コホンと咳をして顔をもどす

「ま、向こうは人数参加に1年も参加するらしいし、敵情視察には良いわね。ただし、錫音も連れて行くから私達分の移動費出しなさいね」

その言葉に東堂は少し錫音を見た後コクリと頷く。

「良いだろう。交通費も問題はない。明日頼むぞ」

そう一方的に告げ去っていく東堂の背中を見届けた後、2人は顔を見合わせ自然と明日に備え解散した。


~~   ~~


「ここが東京校・・・あんま変わんないですね」

「まぁ姉妹校だもの。そんなものよ・・・て、ちょっと!」

キョロキョロと辺りを見回す2人。だがその2人を置いて東堂はどこかへと歩き始める。真依は東堂に着いて行こうするが、その場で止まる錫音に気づき振り返った。

「どうかした?」

「いえ。少し他の場所も見たくなったので・・・良いですか?」

「あー・・・大丈夫だと思うけど、迷子にならないようにね」

「はい」

そうして真依が離れ、東京校の1年らしき2人に話しかけるのを見届けた後、錫音はそれまで作っていた微笑を消し去りイヤらしい笑みを浮かべる。

「さってとぉ?見栄っ張りの女非術師を探しに行くとするかね」

「2人の態度的にもあっちにいんのは1年っぽいし、別んとこ探すか・・・つっても今日は任務用じゃなく普通のだから飛んで探すのもできねぇし・・・」

悩みながらもゆっくり地面を走らせる錫音。(なお、普通などと言っているが、乗っている電動車椅子の値段は100万する高級品である)高専内で襲撃を受けるハズもなく、気を抜くのも当然。それ故に、飛来したソレを避ける事ができなかった。

「んん・・・建物邪魔で遠くまで見れねぇんだよな・・・ん?何かスゲー音、がッ?!」

メシャリと金属の歪む音が聞こえると同時、ぐるりと視界が横回転する。

「カエル!クソッ式神か?!」

自身を弾き飛ばした飛来物を即座に認識した錫音はどうにか姿勢を直そうと車椅子を操作する————が、

(ッ!制御が効かねぇッ・・・!クソッ・・・コレだから非術師産のモンは!!)

最初の1撃でタイヤかモーターが壊れたのか、電動車椅子はそのまま姿勢を崩して行く。

「やべッ」

時に、錫音の身体能力はその性根と同じくカスである。下半身不随というハンデだけではなく、彼女の家の家人が無理な運動を一切させなかったからである。身体能力の評価は全て魔改造済み電動車椅子の操作能力の賜物であり、ステゴロ戦闘などしようものなら手も足も出せず殴られる。呪力で強化で丈夫さや腕力といった部分は補強できるが、元の反応速度や体の動かし方がわかっていなければ意味はない。

つまり————

(受け身、間に合わねッ)

呪力強化で怪我は負わずとも、服や靴はただでは済まない。

「ん————?」

だが、いつまで経っても来ない衝撃に、錫音は目を開く。視界に入った光景からわかるのは、誰かが体を支えたという事実。

「大丈夫か?ったく、アイツら何やってんだ」

「は?」

聞こえてきた音に、錫音は勢いよく顔を上げる。声、口調、そして地面に転がる竹刀。全てが己の妹のソレに酷似していたからだ。

「お、大丈夫そうだな。つっても、こっちはもう大破してるからな・・・備品に車椅子ってあったか?」

(鈴・・・じゃ、ねぇ・・・そりゃそうか。アイツまだ高専入ってねぇし・・・つーかコレがアイツの姉か。まあ似てるっちゃ似てるな・・・ん?てか大破って)

チラリと真希の視線の先。完全に歪みきり走行不可能になったガラクタを確認した錫音は絶句し、数舜後に叫ぶ。

「な、コレ!おま、おォオイ!!!誰だァ!!!カエルの飼い主ィ!!」

当然、東堂と伏黒の対決は中止された。


————————————————

その後、なんやかんやでウサギやカエルに癒され落ち着いた錫音は伏黒に駅まで送ってもらい、その帰路の途中の会話で過去伏黒と会っていた事なども思い出したのだった。




Report Page