そういえば
なんやかんやでサバフェス終了後のハワトリアで屋台やってるビーマとラーメンの試作品を食べてほしいと頼まれた水着バーヌマティーと途中参戦してくるラクシュマナの話
ビーマ
「ふと気になったんだがよ」
水着バーヌマティー
「何? くだらない話で私のラーメンを食べる口を止めるなら今すぐ復讐王妃に戻るわよ」
ビーマ
「……お前にとってはくだらないかもしれないが、俺にとっては大事な話、ではある」
水着バーヌマティー
「へぇ、そう。……それ、私の夫に関係する話?」
ビーマ
「おう、関係する」
水着バーヌマティー
「ならばいいでしょう。それで? どんな話なの?」
ビーマ
「カルデアには色々あって、ドゥリーヨダナの派生サーヴァントが山程いるだろ?」
水着バーヌマティー
「ええ、そうね。なんなら関係者の派生サーヴァントもいる始末だし。かくいう私もその一人だけれど」
ビーマ
「ああ。魔性ドゥフシャラーもそういった類のサーヴァントだ。……だが、サーヴァントとして召喚されなくても、ドゥリーヨダナの関係者の派生した存在はいるにはいる。例えばカルナとアシュヴァッターマンだ。あの二人といえば、まずドゥリーヨダナのために闇堕ちした二人がいるよな」
水着バーヌマティー
「そうね、あの二人はカルデアにもいるし」
ビーマ
「カルデアにいないパターンだと、ドゥリーヨダナが肉塊のまま捨てられてスヨーダナになったから英雄になれず、御者の子ヴァスシェーナとして生きて死んだカルナと、ドローナ師の息子ではあるが目立った活躍はせず武芸に秀でたただのバラモンとして生きたアシュヴァッターマンがいるよな」
水着バーヌマティー
「他にも、アーユスの兄のカルナと弟のアシュヴァッターマンもいるわよね。兄のカルナはどういうわけかカルデアにも来て、向こうでアーユスの世話を焼いているけれど」
ビーマ
「あとは、偽王ドゥリーヨダナの下で魂がすり減った二人もいるよな」
水着バーヌマティー
「つまり、何が言いたいの? 早くラーメンを食べたいのだけど」
ビーマ
「……バーヌマティー。お前にもそんな風に、派生した存在がいるのではないか、と思ってな」
水着バーヌマティー
「…………成程。何度もインドに発生した特異点に赴き、自分の知らないカルナやアシュヴァッターマン、そして自分ではない自分と何度も会ってきたあなただからこそ思いついた疑問、ということね」
ビーマ
「そういうこった。ま、実際に会ったわけじゃねえし、込み入ったことは言えないんだが──」
水着バーヌマティー
「お前、私と普通に会話をしておきながら、私の霊基をなんだと思っている?」
ビーマ
「どういう意味だ?」
水着バーヌマティー
「フフフ、この霊基は私がかつての特異点で殺したクリシュナや神々の力を存分に使えるのよ? それにクリシュナといえば忌々しいほどになんでも出来るチート化身です。私が一歩及ばずヴィシュヌを殺せていなくても、だいたい何とかなります」
ビーマ
「……まさか!」
水着バーヌマティー
「フフ、ちょっと待っていなさい。今、クリシュナなどの権能を用いて、カルデアに存在するドゥリーヨダナの派生した者たちがいた世界で私はどうなったのか、“見て”きます」
ビーマ
「待て! そんなことをしたらお前の霊基は──」
水着バーヌマティー
「私が今日お前のラーメンを何杯食べたと思ってる?」
ビーマ
「…………悪ぃ、30から数えるのをやめた」
水着バーヌマティー
「87よ、87! それだけ私の胃袋には魔力リソースの素が入っているんだから、これくらい大したことないわ」
ビーマ
「あー…………無理、するなよ」
水着バーヌマティー
「無理なんてするものか。あなたはさっさと次の試作品を作っていなさい。そして全て! たとえ失敗したとしても全て! 私に捧げること。いいですね? あなたは今やただの料理人。ハワトリアに来ても王妃としての任を負う私に、ラーメンを食べてくれと頼み込んだ哀れな迷い牛。自分が言ったことくらい全うしなさい。では、サクッとやってきます。……フゥ。スーリヤ神よ! 汝の光の下で何が起きたか、尽く我に伝えたまえ!!」
ビーマ
「…………バーヌマティー、ああしていると王妃というよりスーリヤの巫女だな……」
〜30分後〜
水着バーヌマティー
「………………」
ビーマ
「お疲れさん。……あまり良いものじゃなかったんだろ? ほら、試作品88作目だ。疲れただろう、大盛りにしておいた」
水着バーヌマティー
「フン、ビーマは料理しか取り柄が無いと夫が言っていたけれど、まさしくその通りね。口当たりはあっさりしているけれど、実は放っておくと脂が膜を張るほどに濃厚な豚骨スープ。ワシワシとした食感ですが太すぎず、決して胃袋を圧迫しないけれど物足りなさを感じさせない麺。程よい大きさに切りそろえられた細いキクラゲ。シャキシャキとした歯ごたえの青ネギ。分厚すぎず薄すぎず、脂はぷるぷるで肉は噛んだ途端ホロホロと崩れるほど柔らかく、しかしぐずぐずしていない焼豚。好きなだけ取れるセルフサービスの紅生姜。正直何がいいのかわからないけれど無いと寂しいしあると嬉しい刻み海苔。一日で豚骨ラーメンの真髄に辿り着くとはね。これ正式なメニューに出来る?」
ビーマ
「食べてないのに見ただけでそこまで分かるのかよ、本当にラーメンが好きなんだな……。まあ、店で出すために開発したんだし、決まれば出来るが」
水着バーヌマティー
「フフ、ならばいいでしょう。食べてから話すわね。いただきます」
水着バーヌマティー
「今日の中で一番のラーメンでした。食堂でも提供できるかエミヤ達と相談しなさい。……さて、いわゆる平行世界の私の話を始めましょうか」
ビーマ
「…………何を話されてもいい覚悟は出来た。どうだったんだ」
水着バーヌマティー
「まずスヨーダナの世界の話ね。そもそもスヨーダナは人ではなく、カリに限りなく近いモノ。妻を必要としなかったのよ。クシャトリヤの男じゃないし、そもそも人間じゃないからね」
ビーマ
(苦々しい顔)
水着バーヌマティー
「だから、その世界のバーヌマティーはスヨーダナの妻になることはなかった。色々あってあのジャラーサンダのドブカス野郎の妻になってたわ」
ビーマ
「ジャラーサンダだと!?」
水着バーヌマティー
「ええ。クリシュナの祖国、ヤーダヴァ族の故郷マトゥラーの破壊者。ユディシュティラが世界皇帝となる祭祀を行う際に、我が夫ドゥリーヨダナですら渋々それを認めようとしたのに唯一反対した男。クリシュナの陰謀であなたと決闘することになり、あなたが悪戦苦闘の末にクリシュナの助言のおかげでやっとの思いで真っ二つに引き裂いて殺したマガダ王、ジャラーサンダ」
ビーマ
「ジャラーサンダ……」
水着バーヌマティー
「フフ、ビーマセーナともあろう男が戦いを思い出して震える無様な姿を見るのは存外楽しいわね。フフフ、怖いならカルナに来てもらいましょうか? カルナはジャラーサンダが怖気付いて逃げ出した唯一の男よ?」
ビーマ
「いや、いい。……他の世界では、どうだったんだ?」
水着バーヌマティー
「そうね……、オルタの夫の世界では、汎人類史の私と同じだったわよ。何しろ夫がオルタになるまで、汎人類史と変わらなかったんだから。汎人類史と同じく、私は炎の中まで夫の傍にいたわ」
ビーマ
「…………」
※父パーンドゥの葬儀の際に自らも炎に飛び込んだマードリー(ナクラとサハデーヴァの母)のことを思い出して苦虫を噛み潰したような顔をしている
水着バーヌマティー
「偽王の世界では、私は心が磨り減った夫をひたすらに支えていたわ。……でも、復讐王妃の私とまではいかなくとも、あなたたちにブチギレていたわね。そうそう、偽王妃の私はユディシュティラに並々ならぬ殺意を抱いていたわよ。神々と同じくらいの殺意をね」
ビーマ
「そう、だろうな……。偽王の世界の兄貴は、平行世界の俺たちやドゥリーヨダナ達を見て、狂っちまったから」
水着バーヌマティー
「私としては、夫を廃人寸前にした恨みの方が圧倒的に大きいのだけどね。……じゃあ、ヴァスシェーナの世界ではどうなったと思う?」
ビーマ
「どうって……ドゥリーヨダナが死んでる以上、お前は……」
水着バーヌマティー
「イエス。こちらもなんだかんだでジャラーサンダの妻になってました」
ビーマ
「やっぱりか。……ん? 待てよ」
水着バーヌマティー
「どうしたの?」
ビーマ
「もしもお前が最初からジャラーサンダを指名していたら、逸話として残るはずだ。でも俺はそんな話聞いたこともない。……つまり、どちらの世界でもお前はジャラーサンダに略奪されたことにならないか?」
水着バーヌマティー
「鋭いわね。……スヨーダナの世界では名も無き男だったけど、ヴァスシェーナの世界だと、最初に私が選んだのはドゥフシャーサナだったのよ」
ビーマ
(頭抱え)
水着バーヌマティー
「ヴァスシェーナの世界でも、カルナはアンガの王になることはないから当然といえば当然ね。……どうしてドゥフシャーサナを選んだのかは全く分からないのだけど、多分こうじゃないかなというのはあるわ。最後の最後で、せめてもの抵抗をしたのだろう、と」
ビーマ
「抵抗?」
水着バーヌマティー
「そう。私は生まれた時からクシャトリヤの女として育てられたのだけど、何故か分からないけれどそれが心の底から嫌でね。自分を殺した結果、何も分からなくなった。でも家族の言いなりになるのは嫌だという思いはずっとあったのよね。だからこの私……つまり汎人類史の私は有象無象の王を選び、ヴァスシェーナの世界の私はドゥフシャーサナを選んだ、ということよ。何しろ、ドゥリーヨダナ無きドゥフシャーサナはただの王子に過ぎないもの。私の父に求められた強き王ではなかったのよ」
ビーマ
「成程な。……ドゥリーヨダナは決して良い奴なんかじゃないし、むしろ最低最悪のろくでなしだが、王としての手腕は絶望的に悪いわけではなかったしな。むしろあいつは自分の保身のために、外面は取り繕うタイプだ。それに、俺たちのようにクリパ師やドローナ師に学んだ男だ。決してバカじゃない。頭の回る悪辣なトンチキ王子だった。……だから、お前にとって“クルの王子ドゥリーヨダナ”は、父親の言う条件を満たした“強き王”だった。だからお前は最初、ドゥリーヨダナを選ばなかった。……合ってるか?」
水着バーヌマティー
「聞き捨てならない言葉もあったけれど、概ね大正解。カリンガの存続のため、強き王の妻となれと育てられたのだけど、嫌だったから抵抗した」
ビーマ
「しかしお前は紆余曲折ありジャラーサンダの妻になった、というのがスヨーダナやヴァスシェーナの世界、ということか……」
水着バーヌマティー
「そうね。ジャラーサンダは世界皇帝もかくや、という男だったし、あなたにとっては悪しき男という点でドゥリーヨダナと同類かもしれないわ。でもアイツ、観測した限りだと強いは強いけど、諸王を暴力に頼んで支配するドブカス野郎なのよ!?」
ビーマ
「それについては同意する。俺たちもクリシュナにその話を聞いたからな。諸王をシヴァに捧げようとするなんて、おぞましいことをよく思いつく……」
水着バーヌマティー
「本当にそうよね。はぁ〜あ、財を与えたり、弟たちや子供たちを諸国の王子、王女と婚姻させたりして味方を増やした我が夫に比べてとんだクソ野郎!」
ビーマ
(う〜む……否定したら話が拗れるだろうし、黙っとくか!)
水着バーヌマティー
「というわけで、ジャラーサンダの妻にさせられた私はあのド畜生を拒絶して絶食して死んでたわ! まあ、この私が意気揚々とインドラ神ブッ殺す!! って思っているのとは違って、こんなクソみたいな人生死んだ方がいいわ、って思ってのことだったのだけど。そうそう、あなたとアルジュナとアイツ(クリシュナ)、ジャラーサンダをぶっ殺しに行ったでしょう? スヨーダナの世界のあなたと、ヴァスシェーナの世界でのあなたはジャラーサンダを真っ二つに引き裂いて殺した後、国を出るときにガリガリに痩せ細って王宮の廊下で人知れず倒れて死んでる私を目撃してたわよ」
ビーマ
「その情報は要らなかったんだが!?」
水着バーヌマティー
「そしてマジカル☆ヨダナの世界の私は追加戦士になっていたわ」
ビーマ
「ああ、プ◯キュアがだんだん増えてく的な……」
水着バーヌマティー
「ええ、そうよ。み〜んなヨダナちゃんのしもべになぁれ☆マジカル♡バーヌマティーになってたのよね」
ビーマ
「よし、次」
水着バーヌマティー
「さすがのスルースキルね。さて、最後はアーユスの世界かしら」
ビーマ
「そんなもんだろうな」
水着バーヌマティー
「アーユスの世界では、なんと大変! 危うくカルナの妻になるところでした〜〜」
ビーマ
「…………そんなに驚いた調子で話すことか?」
水着バーヌマティー
「え?」
ビーマ
「普通、生娘に触れた男に結婚の権利があるものだろう。クリシュナの先祖、バラモンの娘デーヴァヤーニーとヤヤーティ王の結婚も、ヤヤーティ王がシャルミシュター王女に井戸に落とされたデーヴァヤーニーの手をとって助けたことから始まったことだろう」
水着バーヌマティー
「ああ、ヤヤーティとデーヴァヤーニーの子孫がクリシュナのヤーダヴァ族で、ヤヤーティとシャルミシュターの子孫があなたや我が夫ドゥリーヨダナ達クル族っていう話ね」
ビーマ
「それにビーシュマ殿が腹違いの弟である俺達の祖父のために、カーシ国の王女三人を攫ってきた話もあるだろう」
水着バーヌマティー
「既に恋人がいた長女はビーシュマの許しを得て恋人のもとへ行ったけれど、他の男のものになった女を妻にするのは屈辱だと拒絶された。ならばビーシュマと結婚しようとしても、未婚の誓いを立てたビーシュマにも拒絶された……。誰とも結婚できなくなってしまった彼女は、自分の人生を壊したビーシュマを殺すべく苦行に励み、来世で願いが果たされるとシヴァに告げられたその場で己が身を燃やした。そしてドルパダの子、あなたたちの妻ドラウパディーの兄弟シカンディンに転生し、クルクシェートラの戦争では戦争の10日目アルジュナの戦車に乗り彼とともにビーシュマを倒し、最期はアシュヴァッターマンの夜襲で殺された。そんな悲劇の王女アンバーの話ね」
ビーマ
「ああ。……お前はカルナに文字通り運ばれてきたのだろう。……なら、俺達の時代の普通の王族なら、お前はカルナの妻になるものだと考えるだろうよ。きっと、アーユスの世界の俺も兄貴も、そうなんじゃないか? だがさっきの口ぶりからするに、お前はアーユスの世界では、アーユスという名のドゥリーヨダナの妻になったんだろう。どうやって、その世界のお前はアーユスの妻になった? ビーシュマ殿は未婚の誓いを立てていたが、カルナは違うだろう」
水着バーヌマティー
「簡単な話よ。兄たるカルナはざっくり言うとビーシュマと同じことをしただけ。弟のために、弟の妻にする女を攫ったということ」
ビーマ
「…………ああ、そういうことかよ……。確かに、あの兄カルナなら、アーユスが求めたものはなんでも与えそうだ。どんな手段を使ってでも」
水着バーヌマティー
「私達の生きた時代は、男は妻を得て息子を作ってこそ一人前、女は夫に息子を与えてこそ一人前、という社会だった。だからアーユスも、百王子の長兄として迎えられた以上、妻を娶るべくあれこれ考えていたわ。そうしてあの世界のバーヌマティーを見つけたアーユスは、絶対に手に入れたいと思った……。けれど、アーユスは一人では不安だったのと、大好きな兄の判断を仰ぎたかったのとで兄カルナに相談したのよ。そしたら兄カルナは一晩中悩んだ挙句、朝からあの世界のユディシュティラに相談していたわ。そして、クシャトリヤたるもの略奪婚をしても構わないとお墨付きをもらって、兄カルナとアーユスの兄弟は仲良くカリンガ国へ向かって、無事に私を略奪したわ」
ビーマ
「しかしその際に兄カルナがお前に触れてしまった、と」
水着バーヌマティー
「違うわね、横抱きして運んでいたわ」
ビーマ
(頭抱え)
水着バーヌマティー
「そんなだから兄カルナがあの世界のバーヌマティーをアーユスの左膝に座らせた時は、周りは目を茹で卵にしていたわよ」
※男性の左膝は妻が、右膝は娘が座る場所
ビーマ
「そりゃそうだろ」
水着バーヌマティー
「でも兄カルナは『オレは、アーユスの身の程知らずな願いを叶えるべく、彼女を連れてきたのだ(弟は彼女を妻にしたいと言っていたので、私は弟のために彼女を連れてきました)』と平然と言ってのけて、アーユスは左膝に座らせたあの世界のバーヌマティーを口説いて無事に陥落させていたわ」
ビーマ
「……成程、そうか。お前は、ドゥリーヨダナがいなければ救われなかったんだな。カルナのように」
水着バーヌマティー
「ええ、そうよ。私はカルナと同じ。ドゥリーヨダナがいなければ、世間に求められる役割と自分の心との乖離に苦しみ、傍から見れば幸せでも、本人からしたら虚ろな人生を送っていたでしょう。そして私は、クルの王子ドゥリーヨダナと、彼に救われたドゥリーヨダナに忠実な戦士カルナ……この二人が揃わなければ、救われなかった。……やっぱり、カルナは私の無二の友、ドゥリーヨダナは我が唯一にして最愛の夫ということは、いくつか世界を見てきても変わらなかったわ!」
ビーマ
「本人を前に言っちゃ悪いが、お前も“正しくない存在”だった、ってことか」
水着バーヌマティー
「この霊基の私だからこそ認めましょう、その通りだと! 何しろ、父や兄弟に従うのなんざ嫌だねフーン! の精神で自分を殺したんだもの」
ラクシュマナ
「なるほど、つまり私や姉さんは汎人類史やアーユスの世界じゃないと生まれてこないってことか。あ、ビーマ! チャーハンおかわり!」
ビーマ、水着バーヌマティー
「「ラクシュマナ!?!?」」
ビーマ
「聞いてたんなら相槌くらい打てよ。……よし、ちゃんと800QP受け取ったぞ。ほら、シーフードチャーハンだ」
ラクシュマナ
「やった! 見て母さん、僕の狩った海魔とヤドカリがこんなに入ってるよ、一口食べる?」
水着バーヌマティー
「生まれて初めてビーマセーナに心の底から同情したわ。……ラクシュマナ、いつもこうなの?」
ビーマ
「そりゃどうも。いつもこうだぜ、ヴィカルナもだが。まあ、カリの肉みたいなゲテモノじゃなけりゃいいんだがな……。海魔もマスターに言わせてみれば日本のイカやタコみたいなものらしいし、ヤドカリはカニみたいなもんだしな。タラバガニだってヤドカリの仲間だろ?」
水着バーヌマティー
「初耳学。一口食べてみようかしら。……へぇ、悪くないわね。海魔もヤドカリも意外と美味しいし、ネギもいい感じにシャリシャリしてるわ。それに、なるとが入っているチャーハンに悪いチャーハンは無い。卵もメインの海魔やヤドカリを邪魔しない塩梅でいいじゃない」
ラクシュマナ
「やった! 母さんのお墨付き〜!! 後で親父にも教えよっと! ……それでさ、母さん。ビーマ。…………さっきの話、絶対、姉さんにだけは伝わらないようにしてくれない?」
ビーマ
「元々言う気は無えけどよ、どうしてわざわざラクシュマナーに言わないことを強調したんだ?」
ラクシュマナ
「姉さんは私ほどチャランポランじゃないからだよ。私は別に、ふーん親父と母さんは運命のベストカップルなんだ〜、で終わったけど……姉さんってなんかこう、親父や母さんへの気持ちがドロドロネチョネチョしてるからさ。教えたら、絶対めんどくさい事になると思って」
水着バーヌマティー
「そうね。あの子は昔から、家族への愛が湿度高かったから……。ドゥリーヨダナの家族への愛がせんべいだとしたら、ラクシュマナーはぜんざいレベルよ」
ビーマ
「なんで日本の菓子でたとえたんだよ、わかりやすいが」
ラクシュマナ
「あ、そうだ母さん。母さんが親父と結婚しなかった世界だと、母さんの子供はどうなったの?」
水着バーヌマティー
「子供を産む前に餓死を選んでいたのに聞く?」
ラクシュマナ
「メンゴ!」
ビーマ
「今のをメンゴ! で済ませるとか正気か?」
ラクシュマナ
「だって、別世界の私や母さんがどうなっていようと、私の母さんは今目の前にいる母さんだし、私は私だよ? なんで曇るんだろう、みんな」
ビーマ
「お前だってラクシュマナーが虐殺復讐悪魔になった時は曇っていただろ? そういうことだ」
ラクシュマナ
「さすが強くて正しくて格好良いパーンダヴァのビーマセーナ様は違いますわー。そうやって正論パンチするのやめて」
水着バーヌマティー
「あ、ラーメンはもうないの?」
ビーマ
「つけ麺ならあるぞ」
水着バーヌマティー、ラクシュマナ
「「えっ、食べたい……」」
ビーマ
「……そうかよ、少し待ってろ」
ビーマ
(今までの特異点で、俺の知ってるドゥリーヨダナのいる世界が一番マシだってことは十分知ってるつもりだったが……改めて、思い知らされた。……そして、あのトンチキ王子はやっぱり、正しく在れない者達の救世主のような存在だった、ってことだな。正義を守るために力を振るった俺とは相容れないわけだ。だが……ここはカルデアで、サーヴァントは死者の夢だ。ちょっとくらい夢を見たって、父上は咎めはしないだろう……。
それに、本人が聞いたらすぐさま復讐王妃の霊基に戻っちまうだろうが…………バーヌマティーと俺には、近しいものがあるしな。ドゥリーヨダナを神々の駒、機構として扱われることへの嫌悪感、これは俺とあいつのたった一つの共通点だ。この手で奴の太腿を砕き、この足で奴の頭を踏み潰したからわかる。
ドゥリーヨダナは、悪い人間だ。……カリなんかじゃない。どうしようもなく最低で最悪な、人間だ──)
ラクシュマナ
「どうしたの、ビーマ。サ◯ゼでコーラとファ◯タオレンジとジンジャーエールと烏龍茶混ぜたらバカ不味かった時のドゥフシャーサナ叔父さんみたいな顔して」
ビーマ
「なんでもねえよ。死ぬほど腹は立つが、ドゥリーヨダナがドゥリーヨダナでよかった、って思っちまっただけだ」
ビーマ
「オイ待て! ドゥフシャーサナの奴何してたんだよ!?」
水着バーヌマティー
「知らないわよ」
ラクシュマナ
「そっち系の悪食じゃないし、私も分からないよ」
ビーマ
「…………はぁ(しんみりした気持ちを返してくれ……)」