すべてのはじまりの竜
多くの犠牲を払い、遂にドラゴ大王の絶対性を打ち破り、世界そのものの存在から世界の権限を行使できる龍…そこにあり斃し得る事ができる存在にまで引き摺り堕とす事に成功したカルデア一行達。
しかしそれでも尚、世界そのものであったドラゴ大王の力は圧倒的であり、ジリジリと追い詰められていく。
だが藤丸立花は諦めなかった。奴をここまで追い詰めた…それまでに犠牲になった者達のためにも、ここに来る前までに奴に葬られていった者達…友になり得ただろう者達の為にも。故に誰よりも早く立ち上がり前に出る。
(自分に力が無くとも…それでも!)
その時であった———
突如火の鳥が…いや鳥の姿をした炎が藤丸の前に現れ一枚の札になったのだ。
(さぁ、その札を手に取るが良い)
脳裏に響くは禁断の星、ドルマゲドンの声。
しかし響くのは彼以外の声だけではなかった。
あの時Volzeos-Balamordを倒した時に解放された五大龍達である。
(遂に今!この時が来た!)
(ここまでに散っていった者達の想い…無念…それは紡がれ今!一枚の"切り札"になった!)
(そしてその札に思いを念じ、"かの名前"を呼べ!)
(我ら根源たる龍とは違う……)
(我ら超獣達の…"すべてのはじまり"の竜の名を!)
迷いなくその札を手に取る藤丸。
———ドクン
その札から伝わる鼓動が胸を熱くする。
(———この竜の名前を…自分は知っている!)
それに呼応して瞳からは涙が溢れてくる。
(———そして自分は待っていたんだ…この竜の……君の事を!)
意を決してその札を天に掲げ藤丸は叫ぶ。
【来い!(来て!)——————!】
するとその札は再び炎の鳥の姿になって天に昇って行く。
それと同時に藤丸の叫びを掻き消すかのように放たれた龍世界からの一撃…
しかしそれは藤丸に届く事無く、放たれたそれは突如現れた焔に防がれ、焼き尽くされた。
「先輩———え?」
そして炎の鳥が昇った先から一体の竜の姿が現れる。
「まさかあれは……嘘だろ……?」
「モルトさん!?」
「そうか…我らの声に応えて……来てくれたのだな……」
「ドキンダムさんまで!?」
何事かとマシュが辺りを見回すと、その光景に居合わせた龍世界を除く超獣達はまるで魂を揺さぶられたかの様に皆涙を流していた。
「私達の世界とは違う竜…でも分かるんだ……"彼"が来てくれたって!」
「メリュジーヌさん……」
友の無念を力に変えて
多くの強敵(とも)と拳を交え分かり合ってきた
その身を装甲で纏いし赤き竜
その名は【ボルシャック・ドラゴン】
今、この世界に
"すべてのはじまり"の竜が舞い降りる