しらゆきと赤
「はぁい、どなたですか? 」
スレッタが扉を開けると、そこには黒いローブを被った老婆がいました。
「櫛はいかが? 君のその赤い髪をとくのによい櫛だよ」
「わあ……綺麗。おいくらですか? 」
「あまりにも君の髪が素敵だから、これはやっぱり、プレゼントしてあげるよ。おまけに君の髪をといてあげる」
「い、いいんですか……?」
「もちろん」
スレッタが椅子に腰掛けます。鏡に映る、彼女のきらきらした瞳にはくもりがなくて、老婆は歯を噛み締めました。
ふわふわとスレッタの髪を指でとき、耳に触れ、頭を撫でてあげました。うっとりとスレッタが笑顔を浮かべていましたが、途端にしゅんと顔を俯かせました。
「……どうしたの」
「おかあ様に……やってもらいたかったな、って……ごめんなさい、おばあ様。あなたの雰囲気が私のおかあ様に似てて、つい」
「髪をといてもあげない母なんてひどいね」
「ち、違うんです。昔は、髪を結ってもらっていたんですけど、私がそれを突っぱねちゃって」
「どうして? 」
「……おかあ様が、好きだから。恥ずかしくて。へ、変なのは分かってます。でも、好き、だから……」
赤い髪に負けないほど、頬が赤くなっています。
老婆は、毒の櫛を取り出そうとして、取り落としてしまいました。
「いけない。櫛が欠けてしまった。これでは君を傷つけてしまうから、これはあげられない」
「えっ、で、でも」
じゃあね。そう言って老婆は小人たちの家からスタスタと去ってしまいました。
その夜はスレッタの、おかあ様おかあ様と泣く声で小人たちは途中で起こされることもありませんでした。
屋敷に戻ったエランは櫛を燃やしました。彼女からの愛の言葉なんてものに動揺した自分に驚いたのです。スレッタの心にはまだエランがいることに安心した自分が情けなくて仕方ありませんでした。
鏡に尋ねると、美しいのはスレッタだと返ってきて、そうだろうなと、彼女の赤い頬を思い出しました。小さな鏡の破片に映るスレッタの細い腰が目につきました。
「はぁい、どなたですか? あっ、この前のおばあ様! ごきげんよう」
「こんにちは」
「櫛を持ってきてくれたんですか? 」
「ううん、今日は腰紐を持ってきたよ」
老婆が籠からしゅるりと黒いリボンを取り出しました。
「君のその細い腰に似合うと思って」
老婆はスレッタの腰にリボンを巻き付け、絞め殺そうとしました。
すると、スレッタが慌てて声をかけます。
「お、おばあ様ちょっと待って。この腰紐に似合う服を持ってるんです。それに合わせたくて……」
ぱたぱたと走って棚から赤いワンピースを取り出しました。いそいそとその場で着替えると、また老婆の元に戻ってきました。
「……もっと他に似合う服があるんじゃない」
「うーん、あるかもしれませんけど、これが1番お気に入りだから……」
「…………どうして」
老婆は苦々しげに目を横にやります。
スレッタはワンピースの裾をつまんで愛おしそうに見ていました。
「だって、おかあ様がこの服を着た私を見た時、綺麗だって褒めてくれたんです! ふふっ、子どもには綺麗なんて、あんまり言いませんよね? 大人の女の人扱いしてくれたんです!……おかあ様に言われるんなら、可愛いって言われても本当は嬉しいけど……」
もじもじと両手を合わせるスレッタの腰を、老婆は腕で引き寄せました。
「うぅっ……おばあ、様。苦しい……」
「……とっても、綺麗」
「えっ?」
そう呟いたあと、老婆はリボンを床に残して、また家から出て行ってしまいました。
その日も、小人たちは珍しくスレッタに夜中に起こされることはありませんでした。壁には黒いリボンを結んだ赤いワンピースがかかっています。
エランは小さな破片に尋ねます。
「スレッタです」
彼女は変わらず、いえ、前よりも美しくなっているようにさえ感じました。
エランからぽたぽたと落ちる涙はこの世で1番美しいと鏡は思いましたが、口にはしませんでした。
今度こそ殺す。
まだるっこいことはせず、あのかぶりつきたくなるような唇にちょくせつ毒を入れてやるのです。
鍋でごぼごぼと毒を煮る自分の姿が破片に映って、なんて醜いのだろうとエランは愕然としましたが、それもこれもスレッタのせいなので、彼女を殺せばよいのだと、エランは急いで毒を作りました。
「あっ、おばあ様! また来てくれたんですね!」
「こんにちは」
「この前は素敵な腰紐をありがとうございました。お金を払っていなかったので、また来てくれてよかったです。おいくらですか?」
「気にしないで。君との楽しい時間が対価だったとでも思っておいて」
老婆が籠から毒々しく赤い林檎を取り出しました。その見事な輝きに、スレッタはぱちりと目を開けます。
「……今日はこの林檎を君にあげる」
「いいんですか? こんなに真っ赤で綺麗な林檎、初めて見ました!」
「さぁ、どうぞ」
老婆がスレッタの唇に林檎を寄せます。
するとスレッタは、林檎を手に取って、にっこりと笑みを浮かべたので老婆は少しぎょっとしてしまいました。
「これで、アップルパイを作ってもいいですか? 」
「……あぁ、いいんじゃない」
「時間がかかりますけど、おばあ様、待っててください」
老婆はエプロンをつけるスレッタの後ろ姿を眺めました。小さな椅子に座って、スレッタの跳ねる髪や、細い腰、何かを小さく歌う唇を、じっと見つめていました。
初めて彼女に会った時は、あんなに小さかったのに。たどたどしく包丁を扱っていた彼女はどこにもいません。けれど、鉄板に触れて「あつっ」と指を引っ込める姿に、老婆は慌てて立ち上がります。
「大丈夫?」
「あっ、おばあ様。見てくれていたんですね。大丈夫です」
今度は何枚も布を重ねて、そっと鉄板を取り出しました。そこには美味しそうなアップルパイがあります。
スレッタはそれをサクサクと切り分けて、白いお皿に載せました。そして、老婆の前にことりと置きました。
小さなナイフとフォークをそばに用意して、スレッタは満面の笑みを浮かべます。
「おばあ様っ、どうぞ召し上がれ」
「……いいよ。僕の分は。君が食べて」
「そんな訳にはいきません!これはおばあ様がくださった林檎ですし、今までの……お礼なんです。あなたとの時間は、私にとっても楽しくて……なんだか、おかあ様といた時のことを思い出して……だから、感謝を伝えたいです。あっ、いけない! 味見をしていませんでしたね。もし不味かったら、お礼にならないところでした」
スレッタがそう言って切り分けていないパイを少し切り取り、フォークを刺して口に入れようとした時、老婆はその手を掴みました。
「待って。待って……全部、僕が食べるよ」
「えっ? でも、不味かったら……」
「不味くても、美味しくても、君の作ったものなら、いいんだ。嬉しいよ」
「おばあ様……?」
スレッタの手を握ったまま、老婆が椅子に腰掛けました。
「……このフォークも、ナイフも……僕には小さくて使いにくいから、君が……食べさせてくれる?」
「はい!」
スレッタが器用にナイフで一口分切り取り、フォークに刺しました。
それを老婆の口元に近づけます。
「どうぞ、おばあ様」
「…………ありがとう、スレッタ」
もぐもぐと頬を動かす老婆に、はたと、名前を教えてことがあったっけ?と首を傾げていると、突然老婆がうめきだしました。首を抑え、胸を掻きむしり、どさりと椅子から倒れて、動かなくなりました。
「えっ……?」
スレッタは呆然と突っ立っていましたが、慌てて老婆をゆさゆさと揺すりました。もうぴくりとも動きません。なのに、涙が一筋だけしわしわの頬を流れていくのを見ていると、みるみるうちに、その頬が雪のように白く、青白くなってゆきます。薄い唇はほんの少しだけ開いて、長いまつ毛は伏せられています。
「えっ……?えっ……おかあ、さま?エラン、さん。エランさん!おかあ様!起きて!起きてください! ねぇ、起きてください! なんで、なんでっ……どうしてっ……」
彼女の泣き声が家じゅうに響き渡りました。そして、森にも響き渡りました。
いつかの比ではないほどの泣き声に、木を切りに行っていた小人たちは慌てて家に戻りました。
そこには、横たわる美しい青年を胸に抱えたスレッタの姿がありました。
おかあ様、おかあ様、と頬を寄せてぎゅっと抱き締めています。
「スレッタ、どうしたんだ。その人が、君を捨てたおかあ様とやらなのかい?」
「おかあ様が……おかあ様が、死んじゃった……わ、わ、私のせいで……ああぁぁ……」
子どもではなく、愛する人を失ったような女の悲痛な泣き叫び声に、小人たちの胸まで締めつけられました。
「スレッタ……君を捨てた人でも、そんなに大事だったんだね。なら、しっかり弔ってあげるんだ」
「とむらう……?」
「そう。綺麗な棺に、お花をたくさん入れてあげて、お別れをするんだ」
スレッタは目を見開いたまま、動かなくなりました。
小人たちが棺をみんなで持って、森の奥へと運びます。嫌だ嫌だと泣き叫ぶスレッタを引きずりながらのことなので、なんとも大変な作業です。
やっとこさ埋める場所にたどり着き、小人が棺の蓋を開けました。
「スレッタ、お別れの言葉をかけてあげな」
死んだなんて思えないほど雪のように美しいエランの頬と長い指が組まれているのをスレッタは虚ろな瞳で見つめます。握りしめていた赤いワンピースはしわくちゃで、黒い腰紐がぷらんと下がっています。
黙ったままのスレッタでしたが、ふらふらと棺に近寄り、なんと中に足を入れてエランに覆い被さるように顔のそばに手をつきました。
「……一緒に、埋めてくださいね」
小人たちが、何を言いだすのかと目を瞬いていると、スレッタはゆっくりエランの唇に自分のそれを寄せました。そして重なったまま動こうとしません。
あんまりにも動こうとしないので、本当に蓋を閉めてやろうかと思った時、けほ、と小さな声が下から聞こえてきました。小人たちがびっくりしていると、それはスレッタも同じようで、飛び上がっています。
「エラン……さん?」
「ぅ……、」
もう一度、けほ、と音が聞こえたあと、スレッタは真下にいた男のまぶたが、ゆっくりと持ち上がっていくのを見つめました。そして肘をのろのろとつき、上体を起こすと腰に乗っかったままのスレッタと視線が交わります。
小人たちは男の美しさにほう、と息をついていると、スレッタが「おかあ様!」と言ってエランの唇にもう一度スレッタのを押し付けました。二人で棺に倒れ、ゴンという鈍い音と、小さくうめき声が聞こえました。
またしばらく二人が動かなくなったので、小人が慌てて声をかけます。
「スレッタ! 今度は息ができなくなって死ぬぞ!」
スレッタがまたもや飛び上がると、エランがげほげほと咳をしていました。
「結婚式には呼んどくれよ」
「けけけ、結婚式……!? 」
すっかり元気になったスレッタはエランの腕に自分の腕を絡めていました。
照れながらエランを見上げると、エランは小人の方を向いていたので、スレッタは唇を尖らせました。
「スレッタの面倒を見てくれて、感謝する」
「いいさ! むしろスレッタが居なくなると今は困るくらい、よく働いてくれた。遊びにでも来てくれ」
「うん。二人で来るよ」
エランがスレッタを見て微笑んでくれたので、スレッタはぱあっと瞳を輝かせてこくこくと何度も頷きました。
「皆さん、本当にありがとうございました。また、会いに来ます」
「おう。今度は勝手に家の扉を開けるんじゃないぞ」
「うっ……、はい、ごめんなさい……」
小人たちの笑い声を背に、スレッタとエランは家を後にしました。
夜になって、エランがベッドに入ると、日中もずっとそばにいたスレッタが潜り込んで来ます。
「おかあ様」
頬や鼻や口に唇を落として、エランの胸にもたれかかりました。
「おかあ様、好き。大好きです。愛しています。私のこと、もう捨てたりしないでくださいね……」
エランはスレッタの頭を撫でました。スレッタがネグリジェを脱ごうとするのでエランはそっと肩を押しました。
指が触れ合っただけで真っ赤になる少女はどこへいったのでしょう。
「いいの? 僕、君を殺そうとしたんだけど」
スレッタが、そういえばそうだったと動きを止めます。
日中もずっとスレッタの抱擁や口付けをなされるがまま受け入れていたので、勝手に両想いだと思っていました。
「ご、ごめんなさい……!ベタベタと、嫌でしたよね……わ、私のこと、嫌い、ですか……?あ……嫌いって言って、私をおうちから出したのに……」
「違うよ。家から追い出して君を殺そうとする男のことを、どうして君は好きなの? 」
「でも……殺しませんでした。おかあ様こそ、どうして自分でアップルパイ、食べたんですか……?」
「君の美しさに一生叶うことは無いのだと思って。君の美しさに殺されるのは、こんな僕にはお似合いで、なかなか良い最期だと思った」
「う、美しい……? 私が……? おかあ様は、この世で1番美しいです」
心底意味が分からない、という顔をしてスレッタがエランをじっと見つめます。1番美しい女に、そう言ってもらえて、エランは顔をほころばせました。
「この顔は昔、魔法でいじったものだから。こんなのはハリボテだよ。それに何より、僕は内側が、心が汚いし醜い。だから、君は触れない方がいい」
「わ、わかんないです……お化粧みたいなものですか……? ハリボテでもなんでも、綺麗なものは綺麗、です」
ありがとう、とエランが礼を言おうとした時、スレッタがかっとまろい眉をつり上げます。いまいち上がれていませんが。
「汚い……って、もしかして、お父さんのせい、ですよね」
「……あぁ。やっぱり分かってた? 」
そうだよ、と言おうとして、スレッタがエランに馬乗りになって寝巻きのボタンを取ってくるのでまた言えませんでした。
「ほっ、他の人のこと! 考えないでください……っ」
「他の人って。君の実の父親なのに」
エランはぷっ、と吹き出します。けらけらと笑っていると、スレッタが頬を染めてぼーっと、見つめていました。ただの男のような笑い方だったので。
それから一生懸命ボタンを外そうと格闘していると、エランの大きな手がスレッタの手を包みます。
「本当に、分かっているのかな」
エランがスレッタの首筋にキスをしました。スレッタはそこを手で抑えて、ばっと距離を取ろうとしましたが、腰を引き寄せられて、後頭部もつかまれてしまいました。途端に前のようなスレッタに戻ったので、エランは内心舌なめずりをして、口を開けてからスレッタの唇に噛み付きました。すぐそこの海のような瞳が涙で揺れています。
「ん、ぁ……っ」
じい、と瞳を見つめながら舌でスレッタの歯列や上顎をなぞると、スレッタがびくびくと震えるので、エランはますます夢中になりました。
「ふっ、ぅんん……っ」
「息止めちゃだめ。鼻でするんだよ」
「む、むずかし、です……わかんない……」
「なんでも出来ると思ってたけど、そうでも無かったね」
頬や首まで真っ赤にして、逃げようとするスレッタの腰をしっかり引き寄せていましたが、両腕をまとめて、ベッドに押し倒しました。さっきとは反対の体勢に、スレッタが目をきょろきょろとさせます。
「ど、どうするんですか……?」
「さあ。君の想像していたことなんじゃないの」
エランはくすりと笑って、スレッタの耳にふうと息を吹きかけます。スレッタは大きく肩を跳ねさせて震えながら見上げてくるので、余計にエランは楽しくなりました。
「お、おかあ様」
「うん?」
「わ、私のこと……す、好き……?」
「好きだよ。この世で1番。愛してるし、憎い」
スレッタが喜びのままに首に抱きつこうとしたところでショーツを抜き取ると、透明な糸がひいて、エランは喉の奥で笑いました。
「さわってもいないのに」
エランが指を割れ目にあてがうと、スレッタはぎゅっと太ももをしめます。
「や、やだ、おかあさま。恥ずかしい……」
「そう」
指で蜜をすくってぬるぬると蕾を擦ってあげると、スレッタはかたく目を瞑ります。
「ここ、自分でさわったことはあるの?」
「あ、ん、あっ、ない……っ」
「本当に?」
「…………あり、ます」
「君ってけっこう、悪い子だね。そんなふうに育てた覚え、ないんだけど」
「おかあ様のせい、ですっ、おかあ様が……おかあ様をね……」
まさか僕を思いながら慰めていたというのだろうか。
エランはぎゅっと蕾をつまむと、スレッタは甲高い声を上げました。閉じようとする唇を舌でこじ開けて、絡め合わせます。
「ん、んん……っ、あ、あ……」
唾液の音よりも、下からの水音の方がぐちゅぐちゅと大きく聞こえてきて、なかに指を入れたかと勘違いしそうになりました。
はあはあと舌を放り出すスレッタの表情はだらしがなくて、いつもの、しゃんとしようとする面影は微塵もありません。
指をなかに差し込むのは容易でした。
どうやら、なかにも自分で入れたことがありそうです。
「本当に悪い子だね。君の指はどこまで届いた? ほら、僕のはここまで届くからね」
スレッタは気付かれたことに赤面します。ですがエランがお腹をくすぐってあげると、媚びるように指を締め付けました。2本目もすんなりと入り、親指で蕾を押し込むと、スレッタはびりびりと背筋が震えました。
「気持ちいいんだね? もっと触ってあげる」
「あぁ……っ、お、おか、しゃま……っ」
「ん? なぁに」
ふるふると横に首を振っています。
ネグリジェをぺろんとめくると、スレッタの胸があらわになりました。
ぴんと尖ったところに吸い付いて、あむあむと大きく口に含んでみると、エランはなんだか幸せな気持ちになりました。
「君の方が、おかあ様みたいだね」
「ぇ……、んっ」
「おかあ様になりたい? 」
「なる……っ、なりましゅ、」
それを聞いて、エランは三本の指をずるりとなかから抜きました。ふとシーツを見てみると、水溜まりが出来ていてエランは笑いました。
「あ……あ……ごめんなさい……私、こんな」
「いいんだよ。いっぱい出せて偉いね」
エランがスレッタのお尻を撫でながら言い聞かせます。スレッタはこくんと嬉しそうに頷きました。
エランが前をくつろげて、スレッタのなかに突き刺すと、スレッタは「きゃああ」と悲鳴をあげました。
「痛かった?」
「い、いえ……でも、くるし」
はふはふと息を整えるスレッタの頭を撫でます。くるくると指に髪を巻き付けていると、スレッタがエランの指に頬を寄せました。
「髪……好き、です? 前も、私の、そうやって……」
「うん、好き」
「う、嬉しい、ですっ……おかあ様、っきゃん!」
「『おかあ様』とはね、普通、こんなことをするわけが無いんだよ。まあ、おかあ様にこんなのないし」
「あ、んっ、ん、ん、んっ、」
たぷたぷと腰を打ち付けると、スレッタは身をよじろうとしたので、腰をつかんで逃がさないようにしました。
「あ、あ、あ、だめ、おかあさまっ、」
「もういきそうなの?」
「ぅん、うん、あっ、ああっ」
「良い子だから、我慢しようね」
「えっ、あ、できにゃ、でき、ぅ、あ……っ」
ぎゅっとスレッタのつま先が丸まりました。
腰を掴んでいた手を離して、エランはスレッタの手を取りました。優しく握ってあげながら、腰を揺り動かします。
「だめ、お、おかあさま……っ! あっ、あーっ、やだぁ、」
「嫌じゃないでしょう? 素直になろうね」
「やだ、やだぁ、あ、や、あ、あ」
「ほら、またいっちゃう」
エランの優しく言い聞かせるような声の通りになってしまうスレッタは頭を横に振ります。赤い髪がぐしゃぐしゃと絡まるのを見て、エランが指でといてあげました。スレッタは念願が叶っていることに気付いていません。
「おか、しゃま……」
「きもちいいね、スレッタ」
こくこくと今度は縦に頭を振るのを見て、ちゅ、と口付けてあげました。
「あん、あっあっあっあっ」
「はぁ……、スレッタ、僕も、いきそう……」
「だひて、ください、おかあ様に、してっ」
「そうだったね……、ん、ん」
少し乱暴に腰を振って、エランは白濁をなかに注ぎました。スレッタは恍惚とした表情で、ぴしゃぴしゃと奥にかかる感覚に息をつきます。
エランはついにスレッタを汚してやった達成感に満ちていました。
やっぱり自分の心は腐っているなと思いながらも、開き直って腰を振りました。まだまだ足りないのです。
「んぁっ、あ、あ、あ、あ」
「もっと奥にかけてあげる」
「うんっ、エラン、さん……」
「その名前、覚えてたの」
「おかあ様のことは、ぜんぶ知りたい、から、っあ!ぁん」
脚を肩に乗せてぐぐぐ、と身体を倒しました。すると今まで届かなかったところまで入り込んで、スレッタはぎゅっとエランに抱きついて、爪を立てました。
「はうぅ、これ、おく……っ」
「そうだね」
「ん、ん、ん、ん」
エランはスレッタの唇を塞いで熱をガツガツと叩きつけました。
「んふ、ぅ、んんん〜、ん〜」
「っあぁ、くそ、……っ」
さっきまで、こんなことをしているというのに少しおかあ様ぶっていたのですが、結局はただの雄みたいにスレッタのなかを貪るしかありませんでした。
「あぁ、きもち、きもちぃ……、おかあさまぁ」
「そうだね……、」
「もっと、してっ、おなか、ごしごししてくださ、あ……っ」
「あぁ、もう、」
「ひ、ぁ……っ」
スレッタが一際大きく跳ねたのをエランは見ていました。
ごつごつとそこを突くとスレッタは、爪をぎりぎりとエランの寝巻きを着た背に立てます。
「ぅぅぅうう〜〜、ん〜〜〜」
「大丈夫だよ、スレッタ」
「だ、じょぶじゃ、な……っ」
なかが痙攣しているのを感じて、エランはもう一度吐精しました。スレッタは目を見開いてぼろぼろと涙を流しています。
「あ、あ……、おなか……あったかい……っ」
スレッタが嬉しそうに言うので、エランもとっても嬉しく思いました。
「もう一回しようか」
「あ、ぇ……はい……エラン、さん」
「まだ、僕のことおかあ様って呼んでていいよ」
「ふぁっ、あ、はい……おかあ様ぁ」
スレッタがおかあ様になれる日はそう遠くありません。