『〇〇しないと出られない部屋』本番
イージーピージー──そして、この部屋を脱出しようと2人は始める。
「おい、ユーゴー。
お前そんな汗掻いてんなら服脱いどけ。………それに、汚れるかもしんねえからな。
んで、さっさとベッドに寝っ転がれ。こんな部屋から早いとこ出るぞ。
後、いいな?
この場所から出たらここで起きた事は無かった事にする。
い、い、な??」
ハッシュヴァルトの額には、汗が滲んでいた。
媚薬の効果なのか身体が火照っているためだ。
加えて今からセックスをする。
万が一、この部屋から出た後に汚れたままでは目も当てられない。
その為にバズビーは服を脱ぐように催促した。
そして、これでもかと言う程この部屋の出来事を忘れるように、と念押しをしておく。
この醜態は、今後の人生で忘れたい汚点になると思っているからだ。
「わかっている」
そう言い、ハッシュヴァルトは上から下の服を脱いでいく。
真っ白のキャンパスに、古代ギリシア彫刻を思わせる洗練された肉体美が浮かび上がる。
彼の眉目秀麗な顔も相まって、至高の芸術品のようであった。
同じようにバズビーも服を脱いでいくが、彼は下だけ脱いだ。
ここでハッシュヴァルトの身体を見て、固まる。
「……なぁ、やっぱ交代しねえ?」
「何故だ?」
彼の身体の強かな美に驚いたのではない。
バズビーは怖気付いた。
ハッシュヴァルトの物を見た途端に、こんな物入る訳がないと思ってしまった。
「ふーー……いや、やっぱなんでもねえ。
さっさと寝ろよ」
「??」
だが、彼はもう後ろを準備してしまった。
その上、自分から受け身に回ると言い出した手前そう軽々と引き返すのもきまりが悪い。
それとは別に、彼は安心もしている。
こんな男相手に勃つのかどうかの心配もあった。それも媚薬のおかげなのか、いらない心配となったが。
何でもなかったように、行為に移行していく。
ハッシュヴァルトはベッドにそのまま仰向けになる。
長髪の彼は、熱に浮かされた様子だった。相手の姿をあまり見てはいけないとわかっていても、どうしても目が逸らせないのだ。
バズビーの太ももに沿うように垂れる雫に、吸い寄せられるように見てしまっていた。
その間に、バズビーはハッシュヴァルトの上に跨るように膝で立っていた。
上からバズビーが彼を見下ろしている。
「いいか……?これは早く部屋から出るために、仕方なくやるだけだからな。
それ以上でもなんでもねえからな。
だから、少しでもこの部屋に変化が起きて、出られるようならやめる。あの『LOCK』って部分に何かあったら教えろよ」
再三、ハッシュヴァルトに釘を刺すように言う。
彼は、相手の性器に手を添え、固定し、腰を下ろしていく。
バズビーの後孔から溢れ出る蜜が、ハッシュヴァルトの物へと糸を引き、垂れ落ちる。
感覚が鋭くなっていたハッシュヴァルトは、水滴に触れるだけでもピクリと反応してしまった。
手に汗が滲み、拳を固く握りしめる。
心臓の音がうるさい。
自分の物が、相手の蕾に吸い込まれる様をじっ、とただ見つめていた。
一方、バズビーはこれが本当に入るのかどうか思っていた。
それでも挿れなければいけないと、ただ屹立に身体を近づけていった。
「…ッ、ぁ……」
ちゅぷっ、と蕾に屹立が触れる。
じわりじわりと吸い込まれるように入っていく。
経験した事がない感覚。
バズビーは声を我慢しようとしても、身体が開かれていく感覚から声が漏れてしまっていた。
先端が少し入ると、彼は確認をした。
「ッ、ユーゴー……なんか…変化あった、か?」
真下を見ていた目線を相手の顔に移動させ、部屋の様子を尋ねる。
「………いや、何も、変わらない」
相変わらず、この部屋にはなんの変化もないらしい。
それを聞くと、最後までやるしかないのかと諦め、バズビーは視線を下の事に向けた。
腰を下ろしていく動きを再開する。
──ハッシュヴァルトは、部屋の様子を見ている余裕はほとんどなかった。かろうじて『LOCK』の部分を目の端で捉えたが、何も変化はないはず。……確証はないが。
ただ、先端が相手の体内に入っていく感触だけしか、彼は感じ取れない。
脚先を温かい湯に沈めていくような気持ちよさ、絡みつく快感に、吐息が出てしまう。
視線を隠さなければと思うが、同時に蕾が吸い付いていく光景、その一点を脳裏に焼き付けるが如く凝視する。
よく解されたそこはぴったりと貼り付いて、ミチミチと切り開いていく音が聞こえた気がした。
ハッシュヴァルトの体温は上昇していく。それに比例して、頭の判断力も低下していっていた。
その途中、バズビーが言葉を発した。
「あーー、クソッ!
今だけチンコ小さくしろよッ!!
お前のでけえんだよ!馬鹿!!」
一等太いカリの辺りで苦戦していた。
涙目になりながら、ハッシュヴァルトに抗議する。
先程、唾液とカウパー液で十分に解したはずなのに難しい。それほどにハッシュヴァルトの物は大きかった。
この言葉によりハッシュヴァルトが正気に戻る。
「そんな事、出来る訳がないだろう……。
…………すまない」
馬鹿馬鹿しく、現実的では無い事に冷静になった。それと、自分のせいで相手に迷惑が被っている事に申し訳なさやら居た堪れなさが出てくる。
自分は悪態をついたものの、素直に謝罪された事にまた調子を狂わせたバズビー。
こんな事を言ったところでどうにもならないのは彼もわかっていた。
気を取り直し、引き続き身体を沈みこませていく。
慣れない行為に変な所に力が入って、バズビーの首筋に汗が流れる。
それでは入らないままだとわかっている。
息を吸って、吐いて、余計な力みをなくし身体を下げる。
切り開かれる未知の感覚に身体が怖気付きそうになるが、進めていく。
「………フーッ、フーッ…ッあ、ぁ………ん、ん……は、はぁ…はぁ………」
何とかその屹立の引っ掛かりを通り、異物を中に入れる。
バズビーは相手の腹に手をついて慎重に身体を下ろす。
普段、出すだけの用途の場所に入れる。経験したことの無く、例えようがない感覚に思わず目をつぶってしまう。
彼の物は太く、長く、いつまで腰を下げていけばいいのか途方に暮れそうになる。
その間にも、部屋のロックが解除されたのかハッシュヴァルトに確認する。
「ッぁ、ユーゴー……ッハァ、開いた、か?……」
脱出できるのなら今からでもこれをやめられる。
そう願い、縋り付くようにバズビーは問いかける。
「…………いや、何も変化は無い」
それでも現実は非情だ。
やはり、何も変わらない。
どんどん中に入ってきて、考えられないような場所にまで届きそうだった。
──トンッ
やっと止まった。
バズビーはハッシュヴァルトの物を全て咥えることが出来た。
それはバズビーの臍の部分まで届いているかのようだ。
訳の分からない感覚にビクッと反射的に震えてしまう。
「…………はぁ、っはぁ…あそこ変わったか?」
『LOCK』の部分はバズビーの背中の方。
だからこそ、それを逐一ハッシュヴァルトに確認しなければいけなかった。
だが、部屋は沈黙を貫いていた。
「……ダメなようだ」
それを聞くと煩わしいといった様子で、バズビーは両腕で服をたくし上げ一気に脱ぎ捨てた。
これから更に暑くなり、邪魔になると思ったからだろう。
「じゃあ、ヤるぞ……」
そう言い、ゆっくりと下げていた腰を引き上げていく。
本人からしたら恐怖心が少しばかりあるのかもしれない。恐る恐るといった様子で、腰を動かしていった。
その度に、穴の縁がへばりついていく。
動く度に、窄まりから蜜が漏れ出てくる。
バズビーは苦しげな様子で身体を動かしていった。
その様子は艶めかしい、その一言に尽きる。
バズビーの額に滲む汗、火照った頬、口の中からチラチラと覗かせる紅い果実、汗が滴る首筋、ピンッと立ち熟した胸の飾り、引き締まったくびれ。
全てが、──いやらしい。
この情景を見て、ただでさえ燻っていた熱が弾けそうになる。
その上、下腹部へ蓄積されていく熱い情動。
熱いはずなのに、温かくて気持ちがいい。
性器への刺激は焦れったく、本能のままに動かしたくなる。
これはしなくてもいい、これはしてはいけない。
極上のひと皿が目の前にあるのに手を出せない。
貪り喰いたいのに、理性が邪魔をする。
目の前にある物、見えない所まで全て、すべて暴きたいのに。
それでも、手を出したが最期。
戻れなくなると実感していた。
これも全部、チョコレートのせいなのだ。
だから、擦り切れそうになる理性で手は付けなかった。
その代わり、突然ハッシュヴァルトは上体を起こした。
「ッ……!
ァ、なに突然……う、ぁ、寝てろっつってんだろ……!」
「……フー…………。
記しが見えなくなった。だから、起き上がっただけだ。
それに……お前のペースではいつまで経っても終わらない。
この部屋から早く出たいんだろう」
火傷をしそうな程、熱い吐息。
──途端、腰を下から突き上げた。
────パンッ!
「〜〜〜ッ!
ま、ァ…待て……!そしたら、おれが…ァ、後ろ、向くッ、からッ……!」
パンッ、パンッ、バチュッ、バチュッ
皮膚と皮膚がぶつかり、蕾を抉り、水分をかき混ぜる音が響く。
激しすぎる動きにバズビーはハッシュヴァルトの首に腕を回して捕まった。縋っていたと言うべきだろうか。
「向きを変える時間も、惜しいだろう……。
加えて、君に、ッ見る余裕はない。
………このままでいい……」
相手の腰を両手で抑え、情動のままに動かす。
この快感がどうすれば増していくかは、本能が知っている。
それに、こうして相手の身体を見えないようにしてしまえば、その頬、唇、舌、首筋、胸の突起を見なくていい。
口を、手を出せなくなる。
そうすれば、抽挿だけに集中できるのだ。
彼は快楽の階段をタンタンとつき上がっていく。
バズビーは、いきなりの衝撃にただ耐えるしかなかった。
痛みは次第に初めての悦びへと変わっていった。
知らない感覚、つき上がる快楽。
快感の恐怖。
知らない快感が怖いのに、進むことを止められない。その先へを求めてしまう。
その様は、射精と放尿を勘違いしてしまうような初心な青少年のようだった。
絶え間たく注がれる情欲を受け止めていた。
段々と、腰の動きは早くなっていく。
お互いに息が上がっていく。
もはや部屋から脱出する目的より、目の前の快楽だけしか見えていなかった。
赤髪の男は、未知の悦びを受け止め続け、理性はなくなりそうになる。
金髪の荒ぶる獣は、ひたすらに目の前の享楽を貪っていた。
仕方がなかった。
その中は、湯の中にいるような温かさ。
絡みつくようにうねる気持ちよさ。
痺れるほどに極上の美味。
甘く蕩ける情動の包容。
十分に解された中は柔らかく、だが締め付けてくる。
こんな感覚の波が押し寄せるのもチョコレートのせいだった。
「ぅ、ヤ、ァ……ダメッ……ッイ…ク!!」
「…………ック……!」
ハッシュヴァルトは目の前の項に噛み付いていた。
最奥にドピュッと白濁が注がれる。
──それと同時に、『LOCK』と赤く表示されていたそこは『UNLOCK』と緑色にブザー音を鳴らしながら変わった。
やっと終わった。
この部屋から出られる。
2人は息を整えるように、しばらくその姿勢のままいた。
ハッシュヴァルトは、その熱を出し切るため奥に挿れたまま。その間にも白濁は止まらない。
バズビーは、未知の快感を受け流していた。それでも身体の痙攣は止まらない。
後ろは終わったあともギュッギュッと搾り取るように締め続けていた。
出したばかりで敏感になっているハッシュヴァルトのそこに、その刺激が襲ってくる。
出し切った熱が戻ってきてしまいそうになって、彼は焦った。
部屋を出る条件を達成出来たのに続ける事は、相手に無駄な負担を敷いてしまうと。
「……はぁ、はぁ……。
バ…………バズビー、早くどいてくれ……」
「…………っ、わかっ…てる」
バズビーも頭の中ではそれをわかっていた。
しかし、身体は中々言う事を聞いてくれなかったのだ。
快楽の嵐をやり過ごすには、それなりの時間を要した。
それでも、無理矢理鞭を打つように上からなんとかどいた。
その時、こぷっと音がした。
栓が抜けて唾液とカウパー液とふんだんな白濁が溢れる。
その様は扇情的で、冷めたはずの下腹部に熱が灯ってしまうかと思った。
これも、チョコレートのせいだ。
息を整え、頭はすっきりと冴えたバズビーはハッシュヴァルトに忘れないように言った。
「……はぁ、はぁ……はぁー…………。
やっと出られる。おいユーゴー、この事は無かった事にしようぜ。
とんだ黒歴史だ。何やってんだ俺らは……」
「………………あぁ……」
冷静になった頭で、先程の行為を思い出してしまっていた。額を手で覆う。
お互い少し乗り気になっていた様子に頭が痛くなる。
同時に、扉の上部の『〇〇しないと出れない部屋』を睨んでいた。
「ほんっと、この文字ムカつくぜ。
誰だよ、俺たちをこんな所にぶち込んだやつは。帰ったら必ず見つけ出してぶっコロしてやる……」
それは最もだろう。強引にヤらされたのだ。
バズビーならば何がなんでも目的を達成しようとするだろう。怖い、怖い。
そして、『〇〇しないと出れない部屋』の部分を見ていると何やらギギギ、と鈍い音を立て文字が反転しようとしていた。
すると、出てきたのは
『そちらにあるチョコレートに媚薬入りの物はございませんでした。こちらの不手際により入れ忘れたようです。申し訳ありません。
ですが、セックスを行った事と部屋のチョコをすべて食べた事の条件は満たしているので、ロックは解除されます。
お2人とも、おめでとうございます』
バズビーはその変わった文面をじとっと下らなそうに見ていた。
チョコレートがなんであろうとそこまで大差はないのだ。
この部屋に居たくないと、さっさと服を着るように動いていた。
一方、ハッシュヴァルトの方はその文字を見てから上の空を見ていた。
一向にベッドから動く気のないハッシュヴァルトに声を掛ける。
「髪の毛ぐちゃぐちゃだし、早くシャワー浴びてえ。
おい、おーい、ユーゴー。
早く服着ろよ。こんなとこ早く出るぞ」
声をかけても何の反応もない。なぜか。
ハッシュヴァルトは放心していた。ショックのあまり独り言が漏れ出てしまっていた。
「私は……興奮作用のある薬を用いていないにも関わらず、あんなに…………」
ぶつぶつと言っていたが、近くにいたバズビーにその内容は筒抜けだった。
「もうそこはどうでもいいだろ……。
しないと出られなかったから結果オーライだろ。
しょーがねえ事だったんだ。早くここ出るぞ」
そんな事至極どうでもいい。そのまま服を着ていく。
そんな視界の端で、ハッシュヴァルトも服を着ている様子が見えた。
何かがおかしい。一見見間違えかと思ったが明らかに見間違えではなかったので、ハッシュヴァルトに教えた。
「おい、それズボン前後反対じゃね……?」
ハッシュヴァルトは下を前後反対で着ようとしていた。
まず間違える事が少ないそれにバズビーは途中で気づいた。
そのまま体液で汚れた身体を服に包んでいくと、またまたハッシュヴァルトの服がおかしかった事に気づく。
「おい!ボタンかけ間違えるぞ」
上から2番目のボタンから下のボタンまで全てズレてしまっていた。
少し不格好に見える。
いつもの彼からは想像もつかない姿だ。こんな事まずしないだろう。
そんな様子をバズビーはただ呆れた様子で見守っていた。
だが、そのままボタンを直している内に、何がどうなっているのかボタンに髪の毛が引っかかってしまっていた。逆に器用と言える。
これにも、バズビーは口を挟まずにはいられなかった。
「おーい!!
なんで、髪がボタンに引っかかってるんだよ!!
しっかりしろ、ユーゴー!
はーー……お前何してんだよ。星十字騎士団の団長様だろ?
いつもの様子はどこいった?眉ひとつ動かさないくせに、チョコ1つでどこに動揺する要素があったよ……。
あーもう、貸せ」
相手の見ていられない様子に仕方なくといったように近づいていき、ボタンに引っかかった髪を解いてやった。
器用にするする、と優しく解いていく。
あっという間にハッシュヴァルトの格好は戻っていく。
その様子をただ黙って、されるがままに見ていたハッシュヴァルトも上の空の意識が戻ってくる。
「……すまない、バズ」
厳格な様子の欠けらも無い彼にしゃんとしろ、と言うように背中を叩いた。
「謝罪の言葉はいらねえよ。
それより、この部屋の事は忘れろよ?いいな?」
「…………わかっている」
バズビーの今1番気にしている点はチョコレートなどではない。
この部屋から出たあと、唯一この醜態を知っているハッシュヴァルトに口止めをする事だった。
だが、その相手は歯切れの悪いように返事をした。
それを聞きやっと出られると、少し脱力した表情になったバズビーがいた。
そのまま2人は扉の方へと進んで行く。
扉は開き、謎の部屋からは無事、解放された。
この後すぐ、他の団員がいる前でバズビーの身体の心配をしてしまい、おかしな関係を噂されてしまう。
部屋の出来事を持ち出してしまったハッシュヴァルトにバズビーはすぐさまキレるだろう。
今後の2人の関係が変わっていくのも、また別のお話…………
ここまでお読みいただきありがとうございました!