しあわせなゆめ
幸せ?死合わせ?気が付けば知らない部屋にいた。
可愛らしいぬいぐるみや人形が置かれ、家具もファンシーなもの。いかにも幼い女の子が好きそうな部屋。小さなテーブルには、コップとフォークとナイフが置かれているけれど、皿の上には何も載っていない。
「…結界に知らずうちに巻き込まれたかな」
非現実的な状況に置かれても存外冷静に頭は回る。いつも通り、傘を投げ上げて結界を展開しようとしたー…それなのに。
「なんで」
結界は発動しない。塗り替えられないのではなくて、そもそも発動しない。今までこんなことはなかった。どういうこと?
改めて周りを見渡した途端、ひゅっと息が止まる気がした。
「お姉さん、一緒にあそびましょ」
可愛らしい服を着た、女の子。それは幼い頃の私そのものだった。
その子は私の腕を引っ張って遊びに誘おうとする。だけど、どう見てもおかしい。だってテーブルに乗っているのは…毒草が沢山入ったお茶、スタンガン、ナイフ。これでどうやって遊べというのだろう。
動かない私を見た子は、ぴたりと動きを止めて笑わなくなる。
「わかってるのにね。今更愛されるなんて思ってるの?」
「何を言ってるの…」
「幼い頃の幸せはただの仮初。まともに愛情なんて受けていない…友達にも、本当に愛されてる?」
「……それは」
違う…なんていいきれない。わからない。だって家族はいないんだから。ただ、学校や街で見たものを真似しているだけで…ちゃんと他人を愛せているのか、さえわからないまま。
黙りこくってしまえば、光のない青い瞳に見つめられる。友達や仲間とは違う、冷たくて濁った…自分を呪うような、恨むような目。怖い、とそう思った時にはもう遅かった。
ざしゅ、と斬りつけられてどくどくと血の気がひいていく感覚がする。立っていられなくなって其の場に座り込めば視線が突き刺さる
「…あの時、返り討ちになんてしなければ。」
「死にたくなかったんだよ」
「死にたくなかった?その結果がこれじゃん。ずっと籠の中で歌うだけ。そんな人生、送りたくなかった」
頭がぼんやりとして上手く思考が回らない。
けど、幼くて泣きそうな声にどこか聞き覚えを感じて、放っておけなくて……ついなかないで、と声をかけようと見上げて…そこでやっと気づいた。くすくす、と耳障りな笑い声が聞こえる。
「やっと気づいたの?」
黒々とした鳥籠の中。はらはらと黒い羽が舞い落ちていく。ここは、私のー…
「ーーーー?」
漸く理解した、いやしてしまった。結界が展開できなかったのは、既に開かれているから。だとしたら、目の前の子は
ただ、見つめてくる姿に向かって手を伸ばすも届かない。もう体に力が入らないし、視界だってもうかなりぼやけていく。「わたし」はぽつりと静かに、吐き捨てるように言った。
「諦めた方が楽なのに」
「……にげたくないんだよ」
最後の足掻きで紡いだ言葉は、聞こえたのかな