ざこ
時間かけすぎた。とっちらかってるし着地もダメダメな失敗作テストシーズンも終わり、久々ののんびりした一日。
頭は悪いどころか学年でも最上位の自負があるけど、こういうときだけ絡んでくるキズナなんかがうっとおしい。普段から勉強しておけば、ぼくなんかに頼まなくて良くなるのに。
「えーぴーさんっ」
「なーに?コンちゃん」
この子は皆さんご存知無敗三冠牡馬コントレイル。ディープさんの仔だけあって、学業も非常に優秀。
どふっ
・・・なんだ?コンちゃんがぼくの・・・腰辺りに乗っかってきたぞ?しかも尻がこっち向いてるし、いま仰向けで・・・なんというか・・・かなりまずい!
「・・・なぁに?コンちゃん?」
「べっつにぃ?なんでもないですよ、えーぴさん♡」
マジでどうしたんだコンちゃん?夢かこれは?夢なのか?もしそうだとしたらぼくキショすぎるだろ。・・・ダメだ。熱も匂いも本物だ。わけがわからない。コンちゃんはこんなに慎みがない子じゃない。語尾に♡がつくコンちゃんはもはやコンちゃんではない。
「エピさん♡エピさんっ♡」
うわああやばいやばい跳ね出した!酒くさっ!
「酔ってんの?!コンちゃん!!」
「酔ってらいですよぉ~!」
確定!酔ってるなこれ!そういえば親戚の集いがあったんだっけ?そこで飲んじゃったのか?!
「ほーら♡ほーら♡」
「落ち着きなって!」
なんとか引き離せた。このまま起き上がろう。
「・・・普段はエピさんの方から来るのにっ・・・こういうときだけっ・・・うわぁぁ!」
今度は泣き出した!今度からほんの少しでも飲む可能性のある場所にはついていこう・・・
「ほーらコンちゃんいい子いい子!いい子だから寝ましょうね!」
もう仕方ない。僕のベッドに寝ててもらうしかない。
普段ならコンちゃんを抱きしめられるなんてすごいうれしいんだけどこうまで酒臭いとありがたみより辛さが勝っちゃうなあ・・・
どさっ
よし!倒れこんだらうまく寝かしつけれる形になった!あとは寝てくれるまで待つだけ・・・ん?
「コンちゃん?どうしたの?呼吸が荒いよ?」
「べ・・・ベッドに・・・僕を・・・寝かせて・・・襲う気なんでしょ!僕のこと!」
「ちょ!何言い出してんの!?誰かに聞かれたらただでさえ嫌われ者の僕が「・・・なあ、エピ。」
・・・終わった。
「あはははは。なあに?ズナちゃん。」
「いや・・・お前・・・そういう趣味だったのな・・・」
「あっはっは。言いふらす?いいよもう。」
「・・・そんなことやんねえよ。」
お?
「じゃあな・・・」
なんだ?キズナの奴が嘘なんかつくとも思えない。けどどういう風の吹き回しだ?ぼくが何かやらかしたとき一番ノリノリで言いふらしたりするのはあいつだ。・・・もしかしてコンちゃんに気をつかったのか?それならありえる。キズナはコンちゃんと仲が良かった。
「エピさぁん・・・」
あんまり考えてもしょうがない。ぼくはこの世界で一番かわいい酔っ払いの相手をしなきゃいけない。
「ぼくは君をどんなことがあっても傷つけないよ。襲うなんてしないさ。ただ今日は・・・いっしょに寝よっか。」
「・・・むかつく。普段あんななのにこういう時だけかっこつけて。」
「いたたたた。けらないでよコンちゃん。」
蹴られてるっていうよりはじゃれついてるみたいな感じかな。これならきっと大丈夫。拒絶されてるわけじゃない。
「・・・おやすみなさい、エピさん。・・・寝る前だから言いますけど、僕はあなたになら何されたって・・・」
「・・・めったなこと言うもんじゃないよ。おやすみ。」
・・・寝れるかなこれ!
「・・・なんだ?これは・・・」
エピの奴がコントと抱き合ってた。それ以上でもそれ以下でもねえ。なのに・・・なんでオレはこんなに苦しんでる?
腕、足、背中、腹、頭。少しづつ記憶のエピの姿が鮮明になっていく。
「・・・ハ。」
呼吸なのか、嘲笑なのかもわからぬほど、薄く弱く息を吐きだす。自分の想いに思考が追いつく。そうかオレは、そうだったのか
「エピファネイア・・・」
今日は寝付けない。一晩中走り回ったって、きっと無理だろう。