ご褒美
地球軌道上…艦内時間深夜…
武装勢力鎮圧を終えたラビアタは、ミレニアム艦内の展望室で無重力空間にその体を揺らしながら、窓越しに青い星を見ていた。
ここは彼女のお気に入りの場所だ。この広大な宇宙(そら)と青く輝く地球を見ていると、どんな嫌なことを思い出してもこの美しい光景に見惚れて忘れられる気がした…
「お疲れ様ラビアタさん。」
「准将…!」
後ろから愛しい人の、ラクスとの共有パートナーであるキラの声が聞こえ、ラビアタは軽く驚きながら振り向いた。
「堅苦しい言い方はいいですよラビアタさん。僕たち今は非番待機時間ですし。」
戦闘が終わり、結構な時間が経っていたので、既に眠っていたと思っていたからだ。
「大事な書類作成忘れててさ、慌てて作ってたらこんな時間になっちゃってて…あはは。」
「もう、仕方ありませんねご主人様は。あれほど作成した書類スケジュールは確認するようにと言ってますのに…フフッ。」
子供のように照れながら頭をかくキラに、ラビアタは母性を感じながら微笑んだ。
「さっきの戦闘の指揮、報告書と映像記録見たけどすごいですねラビアタさん。」
キラは話題を変えるように、先程の先頭について賞賛した。
武装勢力の艦隊から発射された大量のミサイル。MS部隊が迎撃するも、撃ち漏らした数発がミレニアムに迫った時、ミレニアムが稲妻に包まれた。
バイオロイド部隊を指揮するラビアタが、甲板に配備させたAC-6ユサール隊に命じ、ミサイル着弾予定側の甲板から大量の稲妻を雷爆させたのだ。
機能不全となったミサイルはその場で爆散、あるいは明後日の方向に飛んでいった。
「いえそんな…、艦のセンサーを壊してしまってハイライン大尉に叱られましたが。」
「あはは!」
ラビアタ本人は、そんなすごいことをしたつもりはない。マイティーストライクフリーダムの放電を真似しただけだ。
それでも、彼に褒められるのは嬉しかった。
「何かやって欲しいことはありませんか?艦を守ったお礼がしたいですし。」
キラにそう言われるが、特に思いつくことができず、
「そうですねぇ…特に今の所は。ご主人様にお任せします。」
と答えた。
「そうですか…、あっ!そういえばこの前言ってましたね『お姫様抱っこ』されてみたいと?」
「えっ…⁉︎確かに…」
ラビアタはラクスと共にキラに『ご奉仕』した後のピロートークでそんなことを言ったのを思い出した。
とはいえ、金属骨格とこの巨体で体重が180kgある自分を持ち上げられる人間など、たとえコーディネイターであれど存在しないだろう。
「よいしょ…と!」
「きゃっ⁉︎」
キラは、ラビアタの大きな身体を抱き寄せると両手でその身体を持ち上げるように抱き、『お姫様抱っこ』をしてみせた。
「重力下じゃこんなことできないから…どうかな?」
彼の微笑みを至近距離から受けて、ラビアタは顔を紅潮させてしまう。
「は、恥ずかしいですぅご主人様ぁ…////」
ラビアタは、そんなはにかんだ顔を見られまいとキラの肩に腕を回しながらその胸に顔を埋める。
彼の鼓動は、いつもより心拍数が多かった。
「そろそろ僕たちの部屋に戻ろうか?」
彼のその言葉に、これから何が行われるか理解して、ラビアタの心に期待と興奮が芽生える。そして、抱かれたまま部屋に向かう途中で、彼女はキラの耳元で囁いた。
「ご主人様…せっかくの無重力ですから…今夜は私が『上でご奉仕』致します。たっぷり愛してください♡」
後日、プラントに帰還後、浴室で湯船に浸かりながらのラクスへの事後報告という名のガールズトークで、リードしたと思ったら最終的に逆転敗北したことを頬を紅く染め手で顔を隠しながら報告するラビアタの姿があったという。