こんな時季に夏日だって

こんな時季に夏日だって


「もう11月も半ばだっていうのにあっちぃなぁ……」

「だなぁ……。まさかこんな時期にまた半袖のお世話になるとは思わなんだ」


ワイシャツの胸元をパタパタと扇いで涼をとるトレーナーさん。

……薄着のトレーナーさんって、改めて見ると体型はっきり分かるよなぁ……。

時々あたしのトレーニングに付き合ってるせいか、無駄な脂肪は少なくて筋肉質。男性らしいがっしりした体型……。


「……エース? ぼーっとしてどうしたんだ?」

「あ……。すまん、なんでもない!」


――思わず見惚れてしまった、なんて恥ずかしくって口が裂けても言えねえな……。


「それよりトレーナーさん、ミーティング終わったらアイスでも買いに行かないか? こう暑くっちゃ、あたし溶けちまうぜ……」

「そうだなぁ……。たまには甘いものもいいか」

「よっしゃ、そうと決まればサクッと決めること決めちまおう!」





「う~ん、いざ買いに来たはいいけど、迷っちまうなぁ……」

「決められないなら、余った分をもらうから2つ選んでもいいぞ?」

「そうか? じゃあお言葉に甘えて……」


結局、選んだのはスタンダードなバニラと、季節限定らしいスイートポテト風味のカップアイス。

「お~。物珍しさで選んだけど、さつまいものアイスも結構いけるなぁ」

「へぇ。俺も一口もらっていいか?」

「おうよ。……ほい、どうぞ」


一口分をスプーンで掬って、トレーナーさんに差し出す。

……あれ? 自然にやっちまったけど、これ結構恥ずかしいぞ……?


「……ん。さつまいもの優しい甘さが効いてる感じだな~。……それじゃあ、俺もお返しに」

そう言うと、トレーナーさんも自分のアイスを一掬い。

……そうだよなぁ……。トレーナーさんならそうするよなぁ……。


「……? どうした、エース?」

不思議そうな顔であたしを見つめてくるトレーナーさん。


……ええい、こうなったら後には引けねえ。

覚悟を決めて……あむっ。


「どうだ? 王道もいいだろ?」

にこやかに問いかけてくるトレーナーさん。

……正直、こっ恥ずかしくって味なんて分かりゃしなかったけどな……。


トレーナーさんともっと長く過ごせば、こういう恥ずかしさというか照れくささは無くなったりするのかな。

いずれはアイスだけじゃなくて、もっと色んなものを分け合って……。


……そんな日が来るといいな、なんて思ってみたりして。

Report Page