これも何かの縁
ヒュ- ドォ-ン!
「いよぉーし!おれ達の勝ちだー!」
「「勝ちだーー!!」」
ワ-イワ-イ!
新世界を航海中の麦わらの一味はワノ国で百獣のカイドウとビッグマムを降した末に手に入れた、四皇の座を狙い襲いかかってきた海賊達を返り討ちにし勝利の余韻に浸っていた。
「ったく威勢が良いのは最初の内で肩慣らしで斬ったらほとんど逃げていったじゃねえか...」
「まぁゾロの攻撃にビビらずに最後まで残った奴らはスゥーパァー根性はあったけどな」
「んナミすぅわ〜ん♡宝の回収全部終わりました〜♡」
「ありがとうサンジ君、さぁみんな宝の仕分けを始めるわよ!」
オ-!
〜〜〜
「いやー金銀財宝にドレスに嗜好品と目移りしちゃいますねー。私目が無いですけどね、ヨホホホホホホホ!」
「あら、この陶器曰く付きの文明の遺品ね。ああいう人達が持っているには勿体無い代物ね」
「おーい!見ろよルフィ、チョッパー!宝石が散りばめられた鎧だぞー!」シャキ-ン!
「「すっげえ〜!!」」キラキラ-ン!!
「アンタ達!遊んでないで手を動かしなさい!ウソップは早くそれを脱ぎなさい!」
「「「ごめんなさい...」」」
「やーい怒られてやんの〜!...さてと私も何か見つけないとなー」
そう言いながら戦利品を物色し始めたウタだったがふと聞き慣れない"音"を聞き手を止める。
...ギャ-!オギャ-!
「声?...この宝箱!」ギィィ...「え!?」
「どうしたんだウタ?ん?うえぇ!?」
ウタとチョッパーの驚いた声を聞き皆が宝箱を覗きこむと全員が驚きの表情を見せていく、その宝箱の中には。
「ウ-...アウ-...」
つぶらな青い瞳にブロンドヘアが目立つ幼い赤ん坊が入っていたのだ。
「あ、赤ちゃん!?どこから入ってきたの!?」
「恐らくさっきの海賊が何処から連れ去ったんじゃろうな...誘拐した赤子を宝箱に放り込んでおくのは珍しくないからのう...」
一味全員が赤ん坊に対して色々なことを言っているがそんなことは分からない赤ん坊は徐々にぐずりだしていく。
「ウゥ-...フェ...ウェ-ン!」
「あぁ!また泣きだした!?えーとこういう時は...そうだ!」
何かを思いついたウタは赤ん坊に顔を近づけ優しい声色で落ち着かせようとした。
「あーかちゃんー、しーずかーにねー♪」
「...アゥ-...キャッ!キャッ!」
「はあ〜良かった泣き止んでくれて」
「おいウタ何だ今の歌?随分下手っぴな奴だなー」
「下手は良いすぎだろこのクソゴム!...まぁでもウタちゃんの即興にしては随分適当な感じはしてたが」
「えぇ、ですがとても温かい子守唄だと私は思いますよ、誰かから教わったのですか?」
「いやぁ教えて貰ったって言うか頭に残ってたっていう...か...」
そう言い終わるとウタはふと思っていた、この光景をどこかで見たことがあると。
...そうだ、この光景は。
ウタの脳裏に浮かんできた思い出。
暗い箱に入れられ不安になっていた時に光が差し込んで。
最初に目に付いたのは今よりも顔が幼いモンスターと...
自分を見て驚いた表情をしている麦わら帽子が似合う"父親"の姿だった。
「...これって運命なのかな」
「ウタ?」
ウタはそのまま赤ん坊を優しく抱き寄せあやしてご機嫌を取っていく。
「よーしよし良い子だねー」
「...おい、そいつの服に名前が縫ってあるぞ。そいつの名前か?」
「あ、ほんとだ。────か良い名前だね。」
赤ん坊の名前を見つめたウタは何かを決心しルフィ達の顔を見渡して発言した。
「ねえみんな、提案があるんだけど」
〜〜〜
それから数日後。
ルフィ達は物資の補給の為どこかフーシャ村を思い起こす村に立ち寄る。
その村の村長曰く赤ん坊を連れ去った海賊団はこの近海を中心に暴れ回っていたという。
その海賊団を倒した事に加えルフィ達の人柄に触れた結果麦わらの一味は村人に受け入れてもらった。
そうして村を滞在していくウタは村に住んでいる一組の夫婦に赤ん坊を託す事に決めた。
夫婦は流行り病で自分達の子供を亡くしていた過去がありウタの申し出を快く引き受けた。
〜〜〜
村から出航後のサニー号の甲板
「なぁウタ本当に良かったのか?───と別れて。お前が一番可愛いがってただろ」
「何よルフィ私の『託せる人がいるまであの子のお世話をする』っていう提案アンタも納得したじゃない」
「そりゃ分かってるけどさ...」
「...まぁ寂しくないって言えば嘘だけどね」
だけど自分はシャンクスと同じ事が出来るのかと聞かれればそれは難しいとウタは自分で納得する。
あの頃自分を育てた頃のシャンクス達は今程の大海賊とは呼ばれてはいなかった。
だが今の自分達は今や四皇という海賊の頂点に近い立ち位置に加え、この世界にとって都合の悪い要素を色々と抱え込んだ大海賊である。
そんな自分達の地位を奪い取ろうとする海賊達や自分達を排除しようとする政府や海軍の襲撃にあの子を守れるのか?
...あの子には物心がつく前に戦いの日常に身を置くより平穏な日常を送らせようとウタはそう決心した。
そう考えにふけていたいたその時、突如として下卑た笑い声がウタの耳に入ってくる。
「ゲーヒャヒャヒャヒャァ!四皇麦わらのルフィ!てめぇのようなガキよりこのケワーイ様がその座に君臨してやるぜぇ!」
「あの海賊旗...村長のおじいさんが言ってた───を連れ去った奴と一緒にこの辺りを荒らしている海賊ね」
「...って言うことはアイツをやっつければあの子の安全は安心しやすくなる訳か、...ねぇルフィ私に一番槍をやらせてもらえない?」
「おう!ドデカイのやってやれ!」
「了解船長(キャプテン)!ウタモルフォーゼ!」
キイィ-ン!
「!やろう共!耳栓を付けろぉ!あの娘は赤髪のガキだ、捕まえれば奴を牽制する事が出来るぞぉ!」
「...へぇ私をシャンクスの人質に利用する気なんだ。けど...
力強く空の舟歌(エネルジコ・エアーバルカローラ)!!」
ギイイィィ-ン!!!!
「うわあぁぁ!!」「耳がぁー!!」「吹っ飛ばされるー!?」
「アンタ達に私を捕まえる事が出来たらだけどね!さてとこの船の一番脆い所は...ここね!」
「インレイ・紅炎!武装色硬化!
壮大に歌劇(グランディオーソ・オペラ)!!!」
ズガアァ-ン!!
「う、うわぁぁー!?火薬庫があぁぁーー!?」
「空気の読めない悪い海賊は私が歌にしてあげる!覚悟しなさい!」
さようなら、笑顔が素敵な───。
私達は貴女の親代わりにはなれないけど、貴女が大きくなった頃には今よりも過ごしやすい新時代を作ってみせます。
それまでどうか元気で。
力強く空の舟歌(エネルジコ・エアーバルカローラ):鎧を展開中にソニックブームを発生する程の音速飛行を繰り出し、相手を吹き飛ばしたり耳に付けた耳栓を破壊させる威力を放つ。
壮大に歌劇(グランディオーソ・オペラ):目標に向かって力一杯槍を投擲する。投げた槍はそのまま拾いに向かう場合もあれば柄の所に五線譜を括りつけて引き戻す場合もある。インレイ◯◯や武装色硬化で威力を増す。