これからも…

これからも…


「あ、ルフィどうした?ぼーっとして」


「んぇ?あ、あぁ、あーその、あー、なんでもないぞ、ウタ!」


そんなことない、彼には悩み事があったのだ。


「いや、そんなことないだろ」


当たりである。そもそもこの歌姫ウタ、人の感情を読むことに長けているのだが、


「は!?いやいやなんでもないし!まじでなんでもないし!悩み事なんてないし!」ヒューヒュー


彼が嘘をつくのが絶望的に下手なのもあり、彼、もといルフィはウタに全く隠し事ができないのだ。


「相変わらず嘘が下手だねぇルフィ?」ギュー


いきなりウタに抱きつかれびっくりするルフィ、それもそのハズ、ウタはルフィにとっての初恋の相手なのだ。


「あっ!?ウタお前何して!?ちょ!?」


初恋相手に抱きつかれたら誰でも動揺するだろう。


「少しはすっきりしたかい?ルフィにだけの特別サービスだよ」ギュイー


が、ルフィが動揺する理由がもう1つあった。


「あ、あたってる!!まてまて!!む、ムゴゴ!」


そう、胸が当たってるいるのだ。ただでさえ大きな胸を初恋相手が当ててくる、人によっては拷問だろう。


「え?何が当たってるって?」ギュゥー


聞こえないのかとぼけているのか、ウタはその胸をルフィに押し付け、押し当ててくる。


「あ゛…アババババ…」


ルフィは必死で抵抗するが、ルフィは今上から乗られている状態、ウタが解放するまでどうすることもできないのだ。


「ふぃー、大丈夫かい?ルフィ、重くなかったか?」


ルフィにとっては永い永い地獄のような時間が終わった。ウタが退いたのだ。


「あ、あぁ、重くなかったぞ」


「じゃあボクは配信があるから!またね」


そういってウタは去っていく、まるでハリケーンのような存在だった。





「胸…あたってたよなぁ…」ドキドキ


ルフィはあの豊満な胸を我が物にできたら、ウタのことをめちゃくちゃにできたら、と考えていた。


「フゥー…ダメだこんなこと考えちゃ!ウタはそういうのじゃねェし…!」


そう思っていても、ウタの蕩けた顔を頭に浮かべる。ルフィがウタをこうしてやりたいという願望の姿だ。


「あぁぁぁ!!うがァ!!」バシ!


そんな自分に嫌気が差したのか、自分を顔を殴打する。これはヤケになっているのではない。

ルフィはもとより物に当たることができない性格で、自分を痛めつけることがしばしあった。


「ウタ………」


そうやって気を紛らわそうとしても、すぐウタのことを思い浮かべてしまう。男の性には抗えないのだ。


「はッ!?やべぇ…頭ン中、ウタでいっぱいだ…」ドキドキ


それは誇張表現などてはなく、実際に日常生活に支障がでるほどウタのことを想っていた。


「ダメだダメだダメだ!ウタは世界の歌姫なんだ。おれ1人が独り占めしていいヤツじゃねェ…」


同棲している時点でお察しだが、何故かルフィは自己評価が低いのだ。


「クソっ!やめろ!やめろおれの頭!」


そういってガンガンと自分の頭を叩く姿には、哀愁さえ漂っていた。


「そもそもおれよりウタに相応しい男がこの世界にはいるハズなんだ…おれは何を高望みして…」


親友や兄を思い浮かべながら震える声を

やっとの思いで出す。


「おれはウタの幸せを遠くから見れてればそれでいいんだ…それで……」


だが、ルフィは耐えられなかったようだ。


「ズビッ…あれ…グスッ…なんで…おれ…泣いて…」


ルフィはウタが出ていく日の事を考えて、いつしか涙を流していた。


「やっぱ…悲しいんだなぁ…ズズッ…はは…何勝手に…」


いつ来るかも分からないことを考え、勝手に泣く、最近だとよくあることだ。


「ウタァ…寂しいよ…いつか…お前がいなくなる日がくると思うと…」


誰に向けたかも分からないその言葉は、


「いなくならないでほしいなァ…無理かなァ…」


いつしか懇願の言葉にかわっていた。


「いつかの日を考えてもしょうがねぇ、寝よう…」


ルフィは自分の意思で寝たかに思えたが、実際は泣き疲れて寝ただけである。



「ん…んぁ…」


ルフィが起きると、横にウタが座っていた。


「ルフィ?やっぱ悩み事ボクに相談してみなよ」


ルフィはあまり人に相談ということをしない人間だ。


「なんでだよ…」


案の定渋るルフィ、その顔には大きく”嫌だ”という文字が書かれていた。


「ルフィ寝ながら泣いてたし、ルフィは抱え込んじゃうからな!ボクが相談にのってあげよう」


流石に拒み続けるのは悪いと思ったのか、ルフィは重たい口を開く。


「そ、そうか…あー、言うぞ?実はな…ウタ、お前の事なんだ…」


まさか自分の事かとは思っていなかったウタは驚きの表情を見せる。


「?、どういうことだい?ボクの事で悩み?」


「あぁ、おれは本当にウタの近くにいれていい人間なのかなって…ウタにはもっと相応しいヤツがいるんじゃないかって…」


「フッ」


そんなことかと言わんばかりに鼻で笑う。


「ハァ~~、ルフィがそこまで意気地無しだとは思ってなかったよ」


「だよな…ひひ…おれなんて…」


この男、どこまでも自己評価が低い。


「違うッ!ボクがルフィ以外の男とくっつくわけがないだろう?」


ルフィにとっては、出てくるはずが無かった言葉。


「え?」


「ボクに釣り合う男はルフィしかいないと言ってるんだ」


だが、ルフィが待ち続けていた言葉でもあったのだ。


「…」


「そこまで言葉にしないとダメかなぁ~?」


「言葉にしてくれ…」


ルフィは目を潤ませ、声は震えている。


「じゃあ、言うぞ?フー、好きだよ!ルフィ!」


その瞬間、ウタの体にルフィが飛び込んできた。


「ウタ…!ウタ…!」ギュゥ~


ウタはその自分より大きな体に優しく抱きつきかえす。


「あーはいはい、そういう所も可愛いんだから」ギュッ


「これからもよろしく頼むよ?ルフィ?」


「うん…!!ウタ!」







「ルフィ!お風呂入ろう!!」


「え゛ッ」


「何?嫌なの?」


「いや~そんなことはねェけどよ…」


「じゃあ入ろう!決まり!」


「そもそもルフィに拒否権なんて無いんだからね!」


「え」


「どうしてもっていうなら…」


「いやいや入る!入るぞウタ!」


「そうこなくっちゃ!」




「(とは言ったものの…どうしよう…目のやり場に困る…)」


「ルフィ、ボクの背中洗ってよ」


「お、おう」


「(つーかおれまだ未成年だぞ!マジィんじゃねぇか!?)」


「昔はよく一緒にお風呂入ったね、ルフィ」


「あんときゃまだガキだったからな」ゴシゴシ


「今もガキでしょ」


「(背中はまだマシだな…前方は無理だ…)」


「よし終わったぞ?流すぞー」ザー


「じゃあ次はボクがルフィの背中洗ってあげるよ!」


「え…いや…おれは…」


「ここでお返しをしないと王子様が廃るからね!遠慮しなくていいんだよ?ルフィ!」


「わ、わかったよ…」


「じゃあ洗うよー?」ゴシゴシ


「(やべェ…!ウタの胸が…!あたって…!)」


「フッ…フッ…いや~結構疲れるね!ハァ…ハァ…」


「(あ~やべェ…ウタの声…)」


「フゥ…おわったよ?ルフィ…ハァ…ハァ…」


「お、おう…ごめんな…?」


「じゃあ流すよー」ザバァー




「うぅー…そろそろ出ない?」


「…あ、あー、あと10分で、出よう」


「そうする?ボクはもうのぼせてきちゃったよ…」


「(やっぱ目のやり場に困るな…なんかいけないことをしてるみたいだ…)」


「あ゛ー暑いぃ…」


「ウタ…顔赤いぞ」


「しょ、しょうがないじゃん…暑いんだし…」


「もう出るか?」


「そうする…」




「あー暑かったー」バタンキュー


「ウタ可愛かったぞ(なんかごめんな!ウタ!)」


「可愛かったぁ~?でしょ~?」トローン


「ウタ眠いだろ」


「いやいやひょんなやけ…ごめんねむい」


「じゃあおれも部屋いって寝るから」


「えぇ~?一緒に寝ようよぉ~」


「えぇ?だめぇ~?」ウルウル


「それずるいぞ、ウタ」


「おうじさまはしゅだんをえらばないのだー」


「分かったよ…」


「ひゃいー、ルフィあったか~い」


「ルフィ~?すきだよ~!」


「…」カ~


「あったかーい♪」


「ちょ、ウタ、それはずるいぞ…///」


「えへへ♪」




「むぅぅ…ボクもう寝るぅ…」


「おやすみ、ウタ」


「うん…るふ…おやすぃ………スー…スー…」


「……」ナデナデ


「これまでも…これからも…ずっと、よろしくな、ウタ…」

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