こはねと戦士の条件
「今俺に意見したのか? こはね」
テスカさんは私のサーヴァントだ。怪物から私を助けてくれた人、銃を使う怖い人。
ネットには南米の怖い神様って書いてあって、でも話してみると気さくな神様だった。
きっと昔の、人前に立つのが怖くて、あんまり人と話せなかった頃の私だったら、ずっとそう思っていた。
今、テスカさんは私のことを殺そうとしていた。
なんで、と思った。
怖い、とも思った。
けど...このままだと、きっと私は殺されちゃう。
だから、怖くて震えたまま、それでもテスカさんを見つめ返す。
このまま殺されるのは駄目、まだ杏ちゃん達との想いを叶えていない。
あの伝説の夜を超える夢を叶えるために...何より、それを支えてくれたセカイの皆を取り戻すために。
「れ、令呪、を」
頑張って考えた、命に代わる捧げ物。
マスターとしてテスカさんに命令できる権利、令呪。
「"3画使って"...お願いします」
直感が、イベントを通してステージからお客さんの雰囲気を読む技術が、音楽を通してストリートの人達と関わってきた経験が、ここで出し惜しんだら駄目だって叫んでた。
この神様は怖くて、理不尽で、平等だから...捧げるなら、めいっぱいじゃなきゃ駄目だって。
そうして――テスカさんは笑った。
「上出来だよ、お嬢。1画だったら皮を剥いで殺していた。2画だったら心臓を抉り出していただろうな。
だが3画捧げられたなら認めるしかない、お前はマスターとしてのセーフティを無くした、"サーヴァントへの命綱"を手放した。取引成立だ。お前の意見を聞き入れよう」
お前はいい戦士だよ、そういってまたテスカさんは笑った。