この後普通に土方さんが捕まえた

この後普通に土方さんが捕まえた



また殺人事件が起こった。

治安がオソマと散々言われたこの地域は、今日も今日とて懲りずに事件を起こす。

「殺人事件の…犯人は逃走中?」

「ええ、松田さんが写真たくさんくれたんです」

デスクには散らかった現場検証の全体的に赤い写真たち。辺見と白石はこの事件を任され検証中だ。

「最近の師匠、現場に来るのすげー早くなったよな」

「そういえば、確かに僕らが来る前に検証終えてる事多いですね。なんででしょう」

実を言うと先に来た警官が普通に現場を荒らしていくのでなるべく一番はじめに来て現場保存を行っているのだが、本人たちが及び知るはずもなく。

「死因はおそらく失血死ですね。傷を見るに、腹部を刃物で刺されたんでしょう。それに背中にも無数の刺し傷…わああ大きい!凶器は肉切り包丁ですよきっと!」

「ふーん、死亡時刻は…夜の2時くらいだってよ、師匠がメモくれた。街灯がないとこで突然刺される…こえ〜」

興奮気味な辺見を軽く受け流して白石は一人勝手に怖がる。興奮冷めやらぬ辺見はワクワクした顔で、白石の腕をむんずと掴む。

「行きましょう白石さん!煌め…いえ現場検証に!」

「ええ〜?今からぁ〜?」


事件が起きた時刻から丸々昼夜逆転した時間帯。事件現場の広場の隅っこに片手にレジ袋を提げた男が二人突っ立っている。

「ここで、被害者は刺されて…ああいいですねえ…煌めいたんですかねえ」

「まあ時間もないし、後俺の精神が持たないから、さっさとやっちゃうよ」

白石がレジ袋からお手製の包丁型引っ込むナイフを取り出す。辺見はタタタッと少し遠くに走ってから手を広げる。

「さあ白石さん!僕も抗いますので思う存分煌めかせてください!」

「はいはい…じゃ、検証スタート、っと」

辺見がワクワクしながら歩き出す。白石も向かいから包丁を背中に隠して歩く。そして、すれ違った瞬間に辺見の脇腹あたりに包丁を思いっきり刺す。

「はああっ!いいですねえ白石さん!ああ〜もっと強くゆっくり!」

見た感じは深々と柄スレスレまで刺さっているが引っ込むナイフなので実際柄しか残っていない。

「それで、被害者は包丁を抜かれて傷を抑えてうずくまる…よろしく」

引っ込むナイフを戻して白石が次を促す。辺見も言う通りしゃがんで丸くなる。

「それで背中をめった刺しと」

ガションガションと白石が引っ込むナイフを振るたびにお手製感満載の音が鳴る。

「あああ!入っちゃう入っちゃう!すごいおっきいのが来てる!」

「あれ?被害者の背中の傷ってもっと小さかったよな?…まさか十徳ナイフとかで刺してた?」

何気なく言った白石の言葉に、いつの間にか白石の足首を掴んでいた辺見の動きが止まる。白石も怪訝な顔で手を止めた。

「…白石さん、今なんて…?」

「え、いや十徳ナイフで刺した感じの傷かもって…」

辺見がおもむろに飛び起きて白石の両肩を掴む。若干引き気味の白石に辺見はキラキラした目で詰め寄った。

「いいですねそれ!じゃあ最初っから現場検証しましょう!きっとお腹の傷はナイフを刺された後そのまま引き裂いて…はああ…すっごい…こんなのに動かれたら…」

「うん…じゃあ最初からやるか!」

「ええ!殺っちゃってください!」

考えることを放棄した笑顔で白石が言う。現場検証、リスタートだ。

「スゴいです!すぐに全部入っちゃ…ああ動かないで!まだ中に入って…!」

「よし、辺見ちゃん次は背中だぜ!」

「ああっ…いっぱいきてる…!小さいのにそんなにザクザクされたらあ…あああ!」

すぐそばで散歩をしていた男の子と男が怪しいものを見る目で通り過ぎる。

「谷垣ニシパ、あれ何やってんの?」

「あまり見るなチカパシ、さっさと行こう」

昼の2時過ぎ、網走署でも敏腕に入る警官二人は広場で楽しそうに殺し合いをしていた。



「…で、怪しんだ近隣の方に通報されてこの次第です」

「そうか。もう帰っていいぞ」

20分後、二人は網走署で土方の前に立たされていた。



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