ここだけ10年早く生まれたルフィ×RED その4
第三帝国けど、この世界の仲間たちにはどうやら刺激が強すぎたようだ♪
「本気で驚きだな・・・だが、やるじゃねーか」
「アウ!こいつはスーパーすげー話だぜ!!」
「ヨホホホ!!おめでとうございます!」
「わはははは!!大した胆力じゃのう!9歳で惚れた男に嫁ぐとは!」
とはいえ幾多の海を越えた麦わらの一味だ。
男性陣、特に精神年齢が高い仲間達。
ゾロ、フランキー、ブルック、ジンベエ親分からは、驚かれつつも称賛してくれた。
残る仲間たちは・・・ロビンを除いて大混乱だ。
チョッパーとウソップは現実を認めたくないのかお互いの顔を引っ張り合っているし、
ナミは衝撃の余り上の空だし、サンジは海に向かって絶叫している。
うん、カオスだ。
で、
「で、ルフィは何で顔を赤くしているのかな~?」
「べ、別にあ、赤くなんてなってねぇし!!?」
「恥ずかしいのかな~♪」
「恥ずかしくなんてねぇし!!」
などと強がっているけど、
麦わら帽子で顔を隠している時点でアウトである。
あのルフィが!
あのルフィが恥ずかしがっている!!
あの年上で大人で紳士でときどき子供っぽいルフィがである!
しかしも、しかもである。
「ルフィの方が小さいだなんて新鮮だな~♪」
「小さいだとぉっ・・・!!げ、本当だ、ぐぬぬぬぬ・・・」
僅かだかあたしの方が身長が高い。
出会った時から今に至るまでルフィの方が高く、
あたしは見上げてばかりだったから、本当に新鮮だ。
そして、だ。
「かわいい~♪」
「か、可愛いだとぉ!!?
ちょ、おまっ!?撫でるなよ頭を!!」
そして可愛い!!
この可愛いルフィの頭を思わず撫でてしまったのは仕方がない。
いや、むしろ、ルフィの頭を撫でるのは義務である(ドン!)
何せ”あたしのルフィ”は身長が今では2メートルはあるし、
体格も目の前のルフィよりも遥かに厳ついし、色んな意味で大きい。
・・・まぁ、その体格差を夜に”分からされる”のは結構好きだし、
大の大人が胸元で甘える姿や、あたしに一生懸命で無我夢中な姿も大好きだし。
「え~だって、
ルフィの方が歳下なんでしょ~」
加えて、このルフィは19歳、対してあたしは21歳。
ルフィの方が2歳年下である。
つまりあたしの方がお姉ちゃんになる!
「ふぅん~でさぁ。
なんで赤くなっているのか言えるよね~?
恥ずかしくないならさ~・・・お姉ちゃんに言ってみなよ♪」
「だ、誰がお姉ちゃんだ!!?」
背徳感・・・とまでは行かないけど、
この表現しがたい感覚・・・すごく、いい!!
「出た~照れ隠し!」
「負けてなんかっ・・・照れてなんかねぇ!!」
両手を胸の前に構え指を折る。
ルフィに気を引いてもらおうと昔からしていたポーズ。
”照れ隠し!”と言って挑発する。
ま、本当に照れているのはあたしの方だったんだけどね・・・。
「楽しいところ悪いけど、
そろそろ”何故違う世界のウタが来たのか?”聞きましょう」
盛り上がっている最中。
仲間の中で一番冷静なロビンが言った。
「あー、何故って?言われてもねぇ・・・?
ありのまま言えば、ウソップが釣り上げた変な映像電伝虫のせい?」
「お、俺のせい!!?」
悪いけど、本当にそうとしか言えない。
自分から意図して来たわけじゃないし。
「映像電伝虫?」
「そう、映像電伝虫。
見たことがない個体だったから、
スイッチを押してみたんだけど吸い込まれたんだ」
「・・・映像電伝虫に?」
「うん、映像電伝虫に」
ロビンが困惑している。
誰だって困惑するし、あたしだって言っておいて理解できないし。
あ、でも思い出せば。
「あー・・・身体が吸い込まれた。
と、言うよりも”意識のみ”引っ張られたに近い、かな?」
感覚的にはウタワールドに行くのに近い気がする。
だけど、ここはウタワールドでないのは間違いない。
「”意識のみ引き抜く映像電伝虫”ね・・・。
原因はそれだとしても・・・ごめんなさい、今は力になれないわ」
「うん、大丈夫だよロビン。
世界は違ってもロビンならきっと原因を突き止めるって信じているから」
「あら、ありがとう。
貴女がそこまで言うなんて、
”そっち”の私も随分と信頼されているのね」
微笑むロビン。
仲間たちもうなずいている。
「へへへ、それにあたしのルフィも無事みたいだし、何とかなるよ!」
「・・・っ!ふふ、それはよかったわね」
懐からルフィのビブルカードを見せる。
手のひらに乗せたそれは一定の方向に向けていた。
「ぷ、プリンセス・ウタを一目惚れさせたルフィか・・・想像できねーな」
「29歳のルフィって、どんな感じなんだろ!!」
「確かに・・・一度その顔を拝んでみてーな」
「ぐぬぬぬぬ、ウタちゃんを惚れさたクソゴムぅうううう」
ウソップ、チョッパー、ゾロ、サンジが騒ぐ。
あたしのルフィの興味深々のようだし、会ったら一杯自慢しよう、そうしよう。
「へぇ!”そっち”のルフィも来てるんだ!
だったら合流しないとね、えっと、この方角は・・・」
航海士のナミが手のひらに押せたビブルカードをのぞき込む。
「・・・うん、ちょうどよかった!
この方角のままならエレジアを向いているわ!!」
「エレジアっ!!っしゃー!!
プリンセス・ウタの初ライブも見れるじゃないか!!」
「うぉおおおお、ラッキー!!」
ナミの発言にウソップとチョッパーが大喜びする。
だけど、あたしは、それどころじゃなかった。
だって、あの島は――――。
「っ、トットムジカ!!」
だってトットムジカがいる!!
「・・・貴女、知っているの?トットムジカを?」
「なっ、あれ伝説ではないと!!?」
「知っているも何もロビン、ブルック!!
あたしの能力に引き寄せられたあの楽譜のせいで嫌な思いをしたし、
懸賞金も馬鹿みたな金額まで上がったりと、本当に散々な目にあったよ!!」
音楽家として何時かは行きたい!と思っていた音楽の島。
到着した時はゴートン国王の好意で島を挙げて歓迎された。
色んな島で演奏したけど、
エレジアで過ごした時間は得るものが多く楽しかった。
だけど、あのライブでまさか、あんな事になるなんて・・・。
「それで、貴女の世界のエレジアはどうなったの?」
「一応建物とか負傷者は出たけど、最後はなんとかなったよロビン」
ほっと、安心する雰囲気が流れる。
だけどそこに至るまでの過程は――――本当に大変だった。
「だけど、なんとかなったのは大船団の総力。
それと後から来たシャンクスがいたからこその話なんだよね、これ」
大船団の総力、シャンクスの単語で緩んだ空気が凍り付いた。
「・・・なあ、ウタ。大船団って、ロメ男とかいるんだよな?」
「うん、いるよルフィ。
大船団はみんなあたしのファンなんだ、
音楽の島、エレジアでライブするから呼びかけたんだ」
あの時は単にファンサービスのノリ。
エレジアで生ライブをするから来るよう呼びかけたけど、
まさか、それが大船団初の大規模戦闘になるなんて思わなかった。
「き、規模は?」
「70隻と6000人ぐらい」
「う、嘘だろ!??
ルフィと同じ程度にデカい船団なのに!!?
親父がいる赤髪海賊団がいてようやく勝てたのかよ!!」
ウソップの絶叫に事態の深刻さが仲間に共有される。
「そう、だから・・・なら納得ね」
「伝説に偽りなしですか、ヨホホホ。
このライブには――――どうやら裏がありそうですね」
「ロビン?ブルック?」
とりわけロビンとブルックが暗い顔で呟いた。
とても悪い予感、悪寒がする。
「ルフィさん、ウタさん。
ここから話すお話をどうか覚悟して聞いてください」
ブルックがあたしとルフィの視線に合わせてしゃがむ。
眼のない髑髏、だけど目がある場所から真剣な視線を感じる。
「エレジアは・・・12年前。
貴方方2人に縁があるとある海賊によって滅んだのです」
「嘘だ、ブルック、そんなはずがっ!!
『ルフィ!黙って聞きなさい!!』っ・・・!!」
動揺したルフィを一喝する。
「表面だけの”事実”に動揺するな!!
アンタも海賊なら・・・”真実”を知った上で自分で決めなさい!!」
「―――――っ!!!」
ルフィは驚きで目を見開いている。
仲間もさっきとは違う意味を込められた目線で見ている。
「――――っと、ごめんブルック。話を続けて」
「・・・ヨホホホ、分かりました。
ご想像の通りエレジアはかつて赤髪海賊団によって滅ぼされたのです」
「・・・そう」
シャンクスは、お父さんは・・・。
良くも悪くも大航海時代以前の、古き良き海賊の気質を受け継いでいる。
だから、暴虐な振る舞いなんて安易にするはずないとあたしは信じている。
それに、さ。
「エレジアは”トットムジカ”じゃなくて
”赤髪海賊団”が滅ぼした。そういう”事実”で知られているのね?」
「はい、そう12年前から知られています。
”この世界のウタが船から降りて歌手になった”12年前にです」
「それで、さっきの配信見たけど。
この世界の”あたし”は海賊嫌いの歌姫なんだよね?」
「配信自体はここ数年から始まりましたが・・・ええ、それはとても有名な話です」
「・・・なるほどね」
この世界の”あたし”が船から降りたのは12年前。
エレジアが滅んだのも12年前。
おまけにこのあたしが海賊なんて。
ああ、色々経験を積んだ今ならシャンクスの考えが想像できる!
大方、”あたし”に嫌われるように仕向けた上で罪を被ったのだろう。
にしても、この世界のシャンクスは何をやらかしたのよ?
”あたし”が海賊嫌いになるなんて、相当のことよ?
取り合えずシャンクスに出会ったら・・・。
色々問い詰めた上で、まずは一発ひっぱたこう。
いや、先にひっぱたいた方が良いか。
うん、そうしよう。