ぐだ美遊で◯◯しないと出られない部屋

ぐだ美遊で◯◯しないと出られない部屋


藤丸立香のマイルーム前で、可愛らしい口論が繰り広げられていた。


「ごめんなさいマスターさん!! ルビーが変な実験で変な部屋作っちゃって…!」

『わたしを悪者みたいに言わないでくださいイリヤさん! こうなったそもそもの原因は、イリヤさんが実験機材の聖杯に触れちゃったせいなんですよぉ!?』


立香の眼前で、銀髪とリボン付き赤毛が揺れている。うーむかわいい、などと言っている場合ではない。今、立香の部屋は一種の異界と化していたのだから。


『スキャンしてみましたが、中身は所謂『セックスしないと出られない部屋』になっていました』

「イリヤの脳みそがピンクすぎて泣けてくるわ…。で? どうするのよリツカ。6人全員で入ってセックスすれば確実でしょうけど、それだとイリヤとルビーがただオイシイ思いするだけよ? わたしは二人を締め出しといた方が良いと思うけど」

『え、なんでルビーちゃんもお仕置きされる前提なんですか…!? それもプレイとかじゃないガチなやつ! おあずけは酷いですよぉ!』

「やらかしの一端担ってる割烹着の悪魔が何言ってるのよ!」

「うーん…」


ああだこうだという喧騒を尻目にどうするべきか、と思案する立香。

あまりぐだぐだやっていると他のメンバーに気づかれる危険性がある。しょうもない部屋でも異界は異界、セックス以外の解決法を模索してそれなりの大事になるだろう。それなら、相思相愛のイリヤ達とセックスして解除した方が早い。

しかし、人選が悩ましい。下手人のイリヤとルビーはおあずけ確定として、残るメンバーは美遊、クロ、サファイア。駄々をこねるであろうイリヤとルビーを抑えるため最低でも一人には残ってもらいたいが……などと考えていると、誰かが服の裾を引っ張る感覚があった。


「? 美遊?」


先程から一言も発していなかった美遊が、恥ずかしそうに俯いて裾を引っ張っている。


「どうしたの、美遊?」

「…その、わたしがパートナーになりたいです」

『『「「「!?」」」』』

「その、最初見た時は「マスターがそういうことを望んでるんだ」って思ってたんですけど、話を聞いてるとイリヤとルビーが悪いようだったので…。ルビーはともかく、イリヤの不始末は友達であるわたしがつけたいんです」

(ああ、だから最初見た時顔が真っ赤だったのか…(※サムネイル)。というかイリヤのことダシに使ってない? …まあいいか)


些細な疑問を投げ捨て、立香は決断した。


「オレと美遊で部屋を元に戻すよ。クロとサファイアはイリヤとルビーのことお願い」

「ミユの様子を見てこうなるだろうと思ってたわよ。後でご褒美、弾んでもらうからね?」

『私もクロ様と同意見です。…報酬はデートなどでいかがでしょうか』

「分かった。必ずね」

「まっ、待ってよリツカお兄ちゃん! わたし、ミユの代わりにわたしがパートナー役やるから! 反省してるから、ねっ!?」

『旦那様旦那様! 今回のわたしそこまでヤバい研究とかやっでないんですよ!? だからその、おあずけだけは…!』

「……。(にこっ)DA・ME♪」

『「そんなー!!!」』


イリヤとルビーの情けない声を背に、立香と美遊は部屋へと入っていった。


───


部屋に入るとガチャン、とロックがかかった。…もう、後戻りは出来ない。


「「……」」


二人して扉の方を見ると、親切というべきか案の定というべきか、何かの文言が書かれた張り紙がでかでかと貼り付けられていた。


────────────────────────

セックスしないと出られない部屋

全ての攻撃に対する耐性を得る&弱体無効状態を付与(永続・強化解除無効・部屋に入った者二人以上でセックスすると解除)


ドレスコード

全ての攻撃に対する耐性を得る&弱体無効状態を付与(永続・強化解除無効・部屋に入った者全てが指定された服に着替えて30分以上過ごすと解除)


媚薬服用必須

全ての攻撃に対する耐性を得る&弱体無効状態を付与(永続・強化解除無効・部屋に入った者が媚薬を服用すると解除)

────────────────────────


「ほんとにセックスしないと出られない部屋なのか…。それに変なバフもついてるし」

「ふざけたバフですね。…こんな部屋でも、イリヤが関わっちゃってるんだ…」


二人して呆れる。美遊の方は複雑な感情もセットだったようだ。


「…とりあえず着替えようか。嫌なアイコンが2つあるし、両方解除しておくに越したことはないから」

「ですね。…って、これ…」


───


「おお…」

用意されていたロイヤルブランドに着替えた立香の前には、良い所のお嬢様的なドレスを着た美遊がいた。


「…かわいい」

「…複雑ですね」

「え、どうして?」

「…このドレス、囚われの身になっていた時の物なんです。クロに痛覚共有の刻印がある以上、あの戦いを知っているのはわたしとサファイアだけの可能性が高いんですが…」

「…ごめん。着せておいてなんだけど、脱いだ方が…」

「いえ、このままで」


申し訳なさそうな立香を制止する美遊。その表情には「どうせなら」という色が乗っていた。


「わたし、捕らえてた人達にレイプされたとかはないんです。でも、儀式的な行程で痛い思いはしたので……だから、上書きしてください」


上書き。その響きに立香はくらりとした。「あんな痛いだけのセックスですらない行為、あなたとのセックスで上書きして」……そんな風に言われて奮起しない男はいない。

ベッドサイドに置かれていた媚薬のアンプル二本をひったくった立香は、両方の中身を口に含んでから美遊にキスをした。半分程を美遊に流し込み、その身体を抱きしめて時が来るのを待つ。

少しすると、立香の身体が燃えるように熱くなり、性欲を抑えられなくなってきた。美遊も同じようだ。

二人は、同時にベッドに倒れ込んだ。


───

「お兄ちゃん♥ お兄ちゃんッ♥ もっと、もっとシてっ♥♥ 元の世界のこと忘れてどうでも良くなるくらい、わたしを愛してッ♥♥♥」

「美遊はそれで良いのか!? そんなこと言われたら手加減できないぞ!?」

「うんっ♥ 良いよっ♥ わたしのっ、藤丸美遊の全てをお兄ちゃんにあげるっ♥ カラダも♥ ココロも♥ 朔月の神稚児遺伝子付き卵子も♥ お兄ちゃんとわたしの赤ちゃんも♥ 好き勝手願いを叶える権利も♥ 全部♥ 全部♥♥ 全部ッ♥♥♥」

「くぅ、おぉ…! 美遊…! 美遊ッ!! ナカに射精すぞ! 元の世界のお兄ちゃん忘れさせるぞッ!! 美遊ぅッ!!!」

「あァアアァァああッ♥♥♥♥♥」


───わたしの脳に素晴らしい多幸感が沁み込んでいる。

───わたしの子宮に立香お兄ちゃんの精子が植え付けられている。

───わたしの卵子が立香お兄ちゃんの精子で受精したがっている。

───わたしの子宮が立香お兄ちゃんとの受精卵を着床したがっている。

───わたしの全てが、立香お兄ちゃんだけを望んでいる。


けれどそれは仕方のないことだ。立香お兄ちゃんに子宮を捧げ、立香お兄ちゃんの赤ちゃんを出産する。それは妹としても妻としても至極当然のことなのだから。


(ああ。わたしの卵子、立香お兄ちゃんに全部使い切ってもらいたいなあ)


そんなことをぼんやり考えながら、わたしは立香お兄ちゃんに一晩中抱かれ続けたのだった。


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