ぐだ×徴弐 ピロートーク

ぐだ×徴弐 ピロートーク



「……弐先生、俺……」

「良いよ別に、私も同罪だし。」


密かなお約束になっていた、側先生との情事。弐先生を起こさぬように、側先生と蜜月を楽しむ筈、だったのだが。

今日に限って2人はいつもと逆のベッドで寝てて。

弐先生は拒むどころか受け入れて。

俺もそれに乗っかってしまって。

気づいたら最後までしてしまった。


「いやでも……」

「良いったら良いの。それに、何かお礼、したかったし。」

「お礼?」

「そ。姉さんと付き合ってる事。」


その言葉を聞いて、俺は少し身構えてしまった。弐先生は、姉である側先生に言いよる男性には生徒だろうが教師だろうが牽制するくらい当たりが強い人だ。俺と側先生の秘密の関係も、バレないようにはしていたが、肉親である弐先生が理解っててもおかしくは無かった。

でも直接言及されたのは、今が初めてで、それで身体がこわばって。

それが解けたのは、そんな俺を見た弐先生の、呆れたような、ちょっと嬉しそうな微笑みだった。


「姉さん、旦那さんが居たの知ってる?」

「えっと、……聞いては無いですけど、何となく、居たんだろうなってのは……」

「そっか……、今はもう、居ないんだ。」

「………」


何かあったんですか?

そう聞きたくなるのを堪える。果たして踏み込んで良いのか。

そんな考えを見透かすかのように。


「……死んだんだ。それも、他殺。」

「………え?」


耳を疑う。突然の情報で、頭が冷えるように感じられる。


「警察は事故として片付けたけど、事故にしては余りにも不自然過ぎた。姉さんはもちろん私も納得いかなくて、何度も頼み込んだんだけど、無理だった。証拠不十分で、捜査も打ち切られた。」


心底冷えた目つきで、何処を見るでもなく、弐先生は語り続ける。俺も、それに全神経を集中させていた。


「姉さんは、それから……」


……悔しそうに、唇を噛んで。


「……死んだようだった。私が居なかったら……なんて、考えたくはないけど、それくらい沈み込んでた。」


そう言い切って、弐先生は此方を向いた。


「でも、君の話をするようになったんだ。」

「俺、ですか?」

「うん。やれよく質問に来るだの、やれよく手伝ってくれるだの、やれそんなところが愛らしいだの……。

最初は、姉さんに近づく不埒者がいつの間にか現れたと思ったんだけど。

……いつの間にか、戻ってたんだ。旦那さんが死ぬ前の、幸せに笑う姉さんに。」

「………知らなかったです。そんな事。」

「そりゃそうだよ。姉さんも結構溜め込むタイプだし。

だから、さ。君にお礼をしたかったんだ。

姉さんのこと、いつもありがとうって。」

「礼を言われるようなことじゃ無いですよ。……下心とか、結構ありましたし。」

「下心だけじゃ無い、でしょ?そうじゃなきゃ私が排除してるし、何よりお姉ちゃんがあんな笑顔にならないし。」


そう言って、優しく微笑んでいる弐先生。でも俺には、言いたいことがあった。


「でも、身体でお返しはどうかと思います。」

「なっ!?だって、その、今すぐ出来るお礼なんて、これくらいしか思いつかなくて……」

「側先生いつも言ってますよ。『弐ちゃんは頑張り屋で、いつも凝ったお礼をしてくれるの♡』って。」

「お、お姉ちゃん……////」

「だから、時間かかっても良いですから、真っ当なお返しにしてください。弐先生可愛くて、こっちも加減効かなくなりますし。」

「か、可愛い!?……可愛いの?私が?」

「はい。側先生もよく言ってるじゃないですか。それに、ほら。」


弐先生の手を取り、自分のそれに触れさせる。


「……また、硬くなっちゃいました。」

「………そ、そう………」


暫く流れる沈黙。

そこからまた水音が鳴るまで、そう時間はかからないだろう。


やがて、それを誤魔化してくれるかのように、ぼつりぽつりと、雨音が鳴り始めた。



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