ぐしゃり、自尊心
寝てる時に、起きるのが怖いとか思ったこと、レオンはないんだろうな。俺は今にも潰れそうで苦しくて、レオンに抱きしめてもらってなんとか、なんとか息ができてるくらいだから。
「アマゾーン……ねないと……おこられるぞー……」
ぎゅって抱きしめてくれる腕が、またしばらく離れてしまうのをわかっているから、せめて自分の記憶に少しでも長く閉じ込めていたくてこんなことをしてるなんて、レオンは知らなくていい。俺はレオンが思ってる以上にどうしようもないくらいに埋まらない空虚をずっと抱えてる。レオンに会えなかったら幸せな気持ちにもなれなかったけど、きっとこんな辛い思いもしなかった。好きでいればいるだけ、小さな亀裂から少しづつ入っていたものが滴るみたいに俺から言いようのない何かが溢れていく。幸せになるのが怖いのかもしれない。幸せになっていいのか、今でも迷ってる。こんなこと言ったら怒るんだろうな、きっとってわかっているのに頭の中では思考を止められない。
「……ほんとは、俺だって」
でも、俺はレオンの隣にいるのが怖い。釣り合わないって言われるのが怖い。大したことないって、言われたくない。昔あったはずの全能感にも近いはずの感情が周りの皆が勝って、俺が負ける度にどんどんぐしゃぐしゃに潰れていって、自分がそこら辺に転がっている石なんかと変わりないんじゃないかって考えてしまう。それでも走ることを諦められない自分の往生際の悪さと刻みつけられた本能にぐらぐらする。
震える声を押し殺して遠征の招待を断ることを伝えた時、何度も何度もレオンの顔を思い出した。裏切ったみたいで辛かったけど、俺の小さくなってしまった自尊心を何とか守るためにこうするしかなかったんだって必死に正当化して、その後はどうしたか覚えてない。思い出して泣きそうになるくらいなんだから思い出さなきゃいいのにって自分でも思ってしまうけど、思い出してしまうのはきっとこの寒さのせいだ。
「レオン、」
縋ってるなんてわかりきってる。寂しいから一緒に寝ようって言葉に甘えて、ずっとこの立ち位置を維持してることにいっぱいいっぱいだ。
「……おやすみ」
なんとか取り繕って振り絞った声があまりにも情けなくて、顔を隠すみたいに抱きついて無理矢理意識をシャットダウンするみたいに目を閉じた。
imagesong:きゅうくらりん/いよわ