きっと全部寒さのせいだ。
「さむい、」
「……使い捨てのカイロならあるが、使うか?」
そういうんじゃねえよ、わかんねえのかよ馬鹿。ダウンコートで無駄に体積が膨れてるエフに抱きついて、言外にアピールする。鈍感だからどうせわかってくれないだろうけど。
「シャフ、それなら」
しゅる、と巻いてたマフラーを外して俺の首に巻き直してくる。
「……こうしたら、寒くなくなるか?」
「お前にしては……まあ、気が利くじゃん……」
心配そうに見てくるのが照れくさくて直視できない。マフラーに顔を埋めるとエフの匂いがする。逆効果だ、と気づく前にはもう離れられないくらいの力で抱きしめられていた。
「その……なんだ……早く帰ろう、実家からクッキーが送られてきたんだ」
「食いもんかよ」
「シュネルが紅茶を用意してくれるそうだ」
「……仕方ないな」
あっという間に体が離れて、代わりに手を握られる。こんなの初めてじゃないのに、心臓がばくばく五月蝿かった。