がんばるあなたには
通りすがりのキョウルリスト「はぁ……今年のクリスマスもちゃんと過ごせなくてごめんなさい……」
「何言ってるの。気にしてないよそんなこと。それにランチは一緒に過ごせたんだし。」
「それはそうなんだけどわたしはもっと……じゃなくてきゅ、急に会えないかって連絡したのに迷惑じゃなかった?」
「全然。ちょうど空いてたんだ。そもそも僕の方が普段好きなタイミングで連絡してるんだから気にすることないって。」
「うーん……でも普段の連絡もなんだかんだ時間のあるときに来るからわたしも困ったことないの……」
そう……場所を調整する必要があるとはいえ特にこちらがタイミングを考えなくてもルリちゃんとは割と連絡がとれる。
初めの頃はともかく、ルリちゃんの正体に薄々気づいてからは流石にそのことに疑問を持った。
……当然、裏があったわけだけど。
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「あなたがキョウヘイさんですね?」
「えっ?あ、はい……」
「私はルッコさんの……ルリさんのマネージャーをしているもので、あなたと話がしたくてお呼びしたのです。」
「……やっぱり同一人物だったんですね、ほぼそうだとは思ってたんですけど」
どんなことを言われるのかとビクビクしていたけど、最初に伝えられたのは感謝の言葉だった。
落とし物を拾ったこと、その後もルリちゃんと話していること。
なんでも仕事のスキルアップに繋がったとかで……具体的には教えてくれなかったけど。
それと同時につい集中力が切れてしまうこともあったために連絡を時々制限していたことの謝罪もされた。
ルリちゃんの方からかけられなくなったこともそうだし、連絡が来ても大丈夫だというタイミング以外は預かっているライブキャスターの電源を切っていたとか。
「なるほど……こちらこそすみませんでした、やっぱりこれからは連絡するタイミングも気をつけます。」
「そのことなのですが……今回はそちらについての話が本題なのです。」
「へ?」
「先ほど説明したようにキョウヘイさんの存在はルッコさんにとって明確にプラスなのです。ですからそちらは維持してもらいたいと思いまして。」
「これからは特殊な方法であなたにルッコさんのスケジュールの空き時間を伝えますから、ぜひその時間を使って交流するようにしてください。」
「い、いいんですか?それ……」
「はい。勝手に調べさせていただきましたがあなたは人格上特に問題はなさそうですし、組織間での承認は済ませてあります。」
そ、組織間での承認……?それ僕だけの判断で断れないやつなのでは?
別に断る気もないけど。
「一応聞いておきたいんですけど……これって僕側の誰かの提案だったり」
「しません。こちら側……というより私の提案です。メリットがあるのはこちらですから。ルッコさんにもこのことは秘密なので、正体を知っていることも彼女には引き続き秘密でお願いします。」
「は、はぁ……」
「なぜそこまで、という顔ですね。」
「まあ、はい。」
「それほどまでにあなたという存在によるメリットが大きいということですよ。色々と。」
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『色々』の意味は未だによくわからない。芸能界での繋がりということなのか……?
それはさておき情報はありがたいので使わせてもらっている。それに合わせて僕も休みを取れるようになったので前よりも長い時間のデートができるようになった。
けど……僕がルリちゃんに好意を持っていることに気づいた上で情報をくれているのかどうか、そこがわからない。
どっちでもいいのかな。結局この恋は諦められそうにないし。