からかい
言い訳をするならば、ルシファーにとってそれはからかいであった。
地獄ではよくあるからかい方だったし、鬱期が明けたばかりのルシファーの思考力は少し落ちていた。
エクスターミネーション後に地獄で生き返ったアダムを、ルシファーはチャーリーに頼まれてイヤイヤ引き取っていた。
面倒ごとが起きぬように城に閉じ込めてはいるが、それでもルシファーはちゃんとアダムの面倒を見ていた。
だからクソガキのようにしょっちゅうこちらを馬鹿にしてくる相手に、鬱憤を晴らしてやろうと、ちょっとだけ脅かしてやろうと思っただけなのだ。
「おい!クソ天使!暇なんだよ!城から出せ!」
そう叫びながらルシファーの部屋に侵入してくるアダムに、ルシファーは愉快そうに笑う。
その顔に嫌な予感がしたのかアダムは後ずさるが、それより早くルシファーがアダムの腕を掴んだ。
「ほぉ?暇なのか?ならば面白いことをしよう!」
そう言ってアダムをベッドまで引きずり、押し倒す。
「...な!?おい!なんのつもりだ!くそ!どけ!!」
ルシファーの下でアダムは暴れるが、未だ万全ではない上に純粋にルシファーの方が強い。
ルシファーはちょっとからかおうと思ったのだ。
さっきも言ったが地獄ではよくあるからかい方で、「ほらほら、このままだと襲っちゃうよ?」と言う最悪なやつだった。
だが天国にはないからかい方だろう、これでちょっとはこいつも大人しくなってくれればいい。
そう思ってアダムを押さえつけ服を剥ぐ。
アダムは酷く暴れ、クソだの死ねだの叫んでいたが、次第に大人しくなっていった。
お、もう効果が出たかと、下を向くとアダムは顔を背けながら唇を強く噛み締めていた。
青ざめた横顔でアダムは強く目を瞑っている。
「...まで、お、まえまで、“そう”なのかよ」
弱々しく呟くアダムに、ルシファーは何か嫌な汗が伝った。
「“そう”ってなんだ...?」
ルシファーは聞き返したところで、アダムの体が酷く冷え震えていることに気づいた。
「...っ!お前も!他の天使どもと変わらないんだなって言ったんだ!わた、私を犯すんだろう!?あのクソ天使どもがやったみたいにか!?尻にものでも突っ込むか!?獣とでも交わわせるか!?私を縄で縛って、触手だの玩具だの使う気か!?くそ、クソクソクソクソ!!!お前も結局あいつらと...!!!」
そう泣き叫ぶアダムをルシファーは咄嗟に抱きしめた。
からかいのつもりだった、ちょっと大人しくなってくれればそれでよかった。
傷を抉るつもりはなかったし、まさかこんな傷があるとは考えてもいなかった。
泣き続けるアダムの声は悲痛と恐怖で震えていて、ルシファーはどうすればいいのかわからないままただ抱きしめ続けた。