かたおもい
8歳差ルウタたまらんマン狩りの休憩中、ふとエースが口を開いた
「なぁウタ」
「なぁに?」
「なんでお前は兄貴に向かって飽きもせずに毎日結婚結婚言ってんだ?」
「たしかに気になった! 兄ちゃんは全く相手にしてくれてねぇのに… なんでそんなに続けられんだ…?」
2人の素朴な疑問に、ウタは自信満々といった表情で答えた
「ふっふっふ… よくぞ聞いてくれたねエース… ルフィはね、私の王子様なの!!」
「「王子様ァ?」」
「あれはわたしが初めてフーシャ村に来たとき… 山賊に拐われそうになったわたしの前にルフィが颯爽と現れた… あっというまに山賊をやっつけてわたしを助けてくれた… これはもう運命の王子様以外何者でもないわ!!」
「「・・・」」
「今は… ちょっとだけ素っ気なくて浮気性だけど… いつか必ず振り向かせてみせる! そのためにも毎日ルフィに求婚してるの!」
「なんか… 聞いて損した気分だ…」
「あははは! ウタと兄ちゃんの将来が楽しみだな!」
「んもー! なによそっちから聞いてきたのに!!」
―――
一方、PARTYS BARでは…
「えっきし!」
「あらルフィ、風邪?」
「いやぁ… 誰かおれのこと噂してんだろ」
「ふふふ、ルフィは人気者だものね」
―――
その日の夜…
「おいサボ… ちょっと来い…」ヒソヒソ
「ん…?」
「むふふ… パンケーキ…」ムニャムニャ…
―――
「なぁサボ 昼間のあれどう思う?」
「昼間って… ウタの求婚の話か?」
「そうだ ウタの方は兄貴に首ったけみたいだけど、問題は兄貴の方だ」
「兄ちゃんに? 何か問題があったか…?」
「兄貴にはマキノがいるんだ…!」
「あ…!」
「兄貴とマキノには何かただならぬ雰囲気を感じるんだ…! このままウタが求婚し続けてもウタじゃ勝てねぇよ…!」
「確かに… 兄ちゃんとマキノさんは“いいカンケイ”なのかもしれねぇな… それだとウタが可哀想だ…!」
「マキノはたまにしか山に来ねぇ…!妹の恋路を守るためだ! 兄貴に突撃するぞ!」
「「おぉー!!」」
―――
「えへへ… ルフィったら…」スヤスヤ
―――
後日…
「なぁ兄貴!!」「なぁ兄ちゃん!!」
「うぉ… どうしたエース、サボ?」
「兄貴はウタに毎日結婚結婚言われてうっとおしくねぇのか!?」
「兄ちゃんにはマキノさんがいるだろ!? ウタにはもっと強く言ってやったほうがいいんじゃないのか!?」
「ど、どうしたお前ら! ちょっと落ち着けよ!」
興奮したエースとサボがルフィに詰め寄ってくる
「兄貴とマキノは“イイカンケー”なんだろ! だったらウタのことはキッパリ断ってやってくれよ!」
「おれたち兄ちゃんとマキノさんのこと応援するからよ! ウタをこれ以上傷付けないでやってくれよ!」
「マキノとはそんな関係じゃねぇよ!! お前らほんとに落ち着けって!!」
「えっ… そうだったのか…」
「な〜んだ… おれはてっきり兄ちゃんとマキノさんは将来を誓い合ってる仲なのかと…」
「そんなわけねぇだろ… あいつとはただの幼馴染 それ以上もそれ以下もねぇよ」
「よかったぜ… なら兄貴」
「ん?」
「ウタのことはどう思ってんだ?」
「え"」
「そうだよ兄ちゃん! ウタと結婚してぇとか思ってんのか!?」
「やっぱ兄貴はウタと結婚するのか!?」
「だから落ち着けって!! ウタとも結婚しねぇよ!」
「「ちぇ〜…」」
「なんでそんなに残念そうなんだよ…」
「なら兄貴 なんで“止めろ”とか“ウザい”とか、ハッキリ止めてやんねぇんだ?」
「兄ちゃんも苦労してんじゃねぇのか?」
「ん〜… そうだなぁ…」
「「?」」
「ウタに毎日のように求婚されて嫌な気分にはならねぇし、あいつをうっとおしいなんて思ったことはないさ」
「ならどうして…」
「…… 今のあいつには、おれしか見えてないだけさ」
「…? どういうことだ兄貴…?」
「この海はな、お前らも想像つかないくらい広いんだ もっと色んな世界を知って、もっと色んな出会いがあれば、あいつの考えだって変わるさ」
「兄貴…」「兄ちゃん…」
「お前らも知ってるだろ? あいつの夢
あいつの歌がこの海の果てまで響いて…
新しい時代が来た時にはきっと……
あいつに相応しい男が表れるはずさ…」
「「………」」
「その時までおれは……
あいつを守ってやりてぇんだ……」
そう言って水平線を眺める兄の姿は、どこか悲しそうな… どこか辛そうな…
普段の頼りになる兄とは全くの別人のように、2人の弟の目には写って見えた…
―――
「へっくしゅん!」
「おいおいウタ、どうしたんだい?」
「うーん、風邪かなぁ?」
「勘弁しておくれよ、お前に何かあったらガープの野郎に叱られるのはあたしなんだよ」