お通し
「……本当に、見せてほしいっていうのかい?」
目の前にいる男。
このキヴォトスにおいて、今や知らないものも、信頼を置かないまともな生徒もいないであろう先生。
その男は静かに、しかし、厳かに頷いた。
夜中、常識ではありえないような時間にシャーレに呼び出され。
もしかして、と、期待しなかったわけではない。
だが、それでも、彼の願い。いや、懇願が常識的なものではないというのは、誰が見ても明らかであった。
“お願いだ”
しかし、それでも、彼は、力強い目でこちらを見つめながら、強く言葉に出して、私へと頼み込む。
私には、彼に対して、恩がある。いつか、返さねばならないと思う程度には、大きな恩が。
そして、好意もまた。あるのだ。
それこそ、こんな時間の呼び出しに応じて、期待してしまう程度の恩が。
だが、その恩を、こんな形での返済を求められるとは思わなかった。
明かりも付いていないシャーレの中で、求められる。
“セイアのスカートの中を、見せてほしい”
こんな、変態的な望みを求められるなど、私の直感がよくなった。という評価は、取り下げたほうがいいのかもしれない。
「つ、付き合ってられるか!!」
流石に、こんなものに、付き合ってはいられない。
仮に、そんなのを周りに知られてしまえば恥さらしだし、何より。
何より、私がそういうことを期待して気合の入った下着を着ていたことがバレてしまう!!
そんな恥ずかしい目に合うならば死んでしまったほうがましだ!!
だが、そんな立ち去ろうとする私の手首は、先生の、意外とたくましい手のひらによってがっしりとつかまれてしまう。
“お願いだ、セイア!”
「~~~~~///い、一回きりだ!!に、二度はないからな!!」
これを惚れた弱みだというならば、笑ってほしい。
私は、先生の必死の懇願を断り切れなかった。
「し、下着が、みたいんだろう?い、今脱ぐから、まっていてくれ……」
そういって、トイレへと去ろうとする私を、待って。と、彼は止める。
「な、なんだい?わ、私のし、下着が見たいんじゃないのかい?」
“ううん、私は、セイアのスカートの中が見たいんだ”
「……ま、まさかっ!?」
一瞬、思考が停止した。
そう、下着が見たいのではない、こともあろうか、この男は、私が履いた状態の下着を見たいといっているのだ。
それも、恐らく、スカートを、たくし上げる形で。
最悪だ!!と、今日何度思っただろう。
だが、今ここで退くわけにはいかない。
既に、私は勘違いであるとはいえ了承してしまった。
それを反故にするのは、自分の言葉の信頼性を失うことになる。
“セイア”
「わ、わかった……。わ、わかった」
私は、今から自分のする恥ずかしい行為に、顔が熱されるのを感じながら、ゆっくりと、スカートのすそを持ち上げる。
“セイアの脚、綺麗だね”
「う、や、やめてくれ……今、そういうのは」
こんな変態的な行いを求める男相手に、なぜか私はきゅんとしてしまう。
ちょろいのか。巷でいうチョロインというやつなのだろうか。
いっそ、一気に持ち上げてしまえば堪えられるのかもしれないが、恥辱を堪えるからだが、それを許さない。
震える腕がスカートをまるで重量物であるかのように、ゆっくりとしか上げさせてくれない。
これでは、まるで、先生を焦らして誘っているような痴女じゃないか。
やだ、やだ。そう思われたくはないと、考えると、私の眼じりに涙が浮かんでくる。
“ほら、セイア……”
「~~~~~~~!!」
その言葉に、私は、グイっと、なんとか重たく感じたスカートを持ち上げた。
晒されるのは、私の恥ずかしい期待の表れ。
レースがうっすらとあしらわれた下着は、しかし、その布地は私の肌まで見えてしまうほどに透けてしまうほどに薄いモノ。
そして、それは……これまでの恥辱でうっすらと濡れてしまった私の汁を、吸ってはくれない。
ぽたり、ぽたりと、淫らな私がこぼれおちて、シャーレの床を、汚していく。
それを、先生は、じっくりと、舐めるように見るのだ。
「やめて、くれ、そんなに、見つめるのは……」
なんとか、私は声を絞り出す。
だが、この姿を見て不快だといいはるのは、無理だ。
トロトロに蕩けた私の中は、未だに床を汚すのをやめない。
そして、私の尻尾は、ぱたぱたと喜びを表すように揺れている。
先生相手にごまかすなんて、土台無理な話であった。
「せん、せい……」
“ん?”
「優しく、してくれ……」
“あぁ……。そうだね。優しく、寝かしつけてあげるよ”
「はぇ……」
“下着をみせてくれて、ありがとう。それじゃあ、仮眠室のベッドに行こうか”
「ま、まさか!?わ、私にこんな恥ずかしいことをさせておいて!!な、なにもしないというのかい!?」
“当たり前じゃないか”
「ふ、ふ……!!!」
ふざけるなぁ!!!その言葉を、私は必死に飲み込んで
「……これが、惚れた弱みというやつか」
“?”
「いや、なんでもないさ……なら、……せめて」
君の腕の中で眠らせてくれ。
それだけいって、私は、先生の腕の中に倒れこむことにした