お玉とありがとう
「エースは死んだ」
ルフィの兄貴に聞いたときは信じられない気持ちでいっぱいだったでやんす。ルフィの兄貴に酷いこと言ったのに、美味しいお汁粉も食糧宝船で腹一杯食べさせてくれたでやんす。そして本当に当たり前にカイドウを倒してくれた。楽しい宴もした。夢みたいな気持ちだったでやんす。
「……も」
「お玉ちゃん」
お玉を背中に乗せドクロのマークを見送る。
背中を握る力が皮膚に食い込んでる痛さはご主人様の心の痛さだ。声も感情も震わせ泣くのを一生懸命堪えてるの知っている。
「も゛っ゛と゛い゛て゛ほ゛し゛か゛っ゛た゛!
行゛か゛な゛い゛で゛!!!行゛か゛な゛い゛で゛!!!行゛か゛な゛い゛で゛!!!!
も゛っ゛と゛も゛っ゛と゛そ゛ば゛に゛い゛て゛け゛ろ゛オオオォォォォォォ!!!!!!!」
ご主人様がずっと抑えていた、言えなかった言葉を黙って受け止める。私の特権だ。これから私がこの子のお母さんになるのだから。
わんわん泣き叫んでいる幼子に心が痛いがもう正規のルートで出航してしまう。ご主人様が後悔しないように。
「ご主人様、行ってしまいますよ」
言いたいこと、あるんでしょう?お玉の心を優しく撫で愛で包む。
グズグズ鼻を啜り涙を堪える。思いを音に乗せるため思いきり空気を肺に送る。
「あ゛り゛が゛と゛う゛ーーーーっっ!!!」
その一言にありったけの想いを込める。
ありがとう、美味しいお汁粉くれて。
ありがとう、美味しいご飯をお腹いっぱい食べさせてくれて。
ありがとう、綺麗な水を飲めるようにしてくれて。
ありがとう、安全なところに住めるようにしてくれて。
ありがとう、カイドウを倒してくれて。
ありがとう、解放してくれて。
ありがとう、当たり前に食べれる国にしてくれて。
ありがとう、みんなを笑顔にしてくれて。
ありがとう、笑いあえる国にしてくれて。
ありがとう、自由にしてくれて。
ありがとう、ありがとう、ありがとう!
想いが溢れるのに言葉がでない。
涙で前が見えない。
まだまだ言い足りない。
ありがとうって言い足りない!!
胸がキューッと締め付けて痛い。
「あれ?方向変えましたね」
あれ?
真っ直ぐ進んでいってしまいましたね?
あれれ?
落ちて行くんでしょうか?
なんでなんでと不思議がってると3つのドクロがふっと視界から消え絶叫だけが響き残る。
いつのまにか顔を見あわせ笑いあっていた。