お猿のましろと戦うお供、ハラハラ大激戦

お猿のましろと戦うお供、ハラハラ大激戦

モテパニ作者

ましろ(まし拓)「緊急事態だよ!」

ゆい「どうしたの?ましろちゃん」

ここね「用件はみんなが集まってからって言ってたけど」

ソラ「ヒーローの出番ですか!?」

ある日のこと、ゆい達はましろ(まし拓)に急に呼び出される。

急だったためか集まったのはデリシャスパーティ組とひろがるスカイ組とゆりとダークドリームのみだが。

ましろ(まし拓)「うん。実は、拓が攫われちゃったんだよー!」

みんな『な、なんだってー!』

その一言は緊急事態とは言われつつもどこか緊張感が無かった皆の意識を引き締めるのに充分だった。

ゆり「なにがあったというの!?」

ましろ(まし拓)「うん、あれは…」

ましろ(まし拓)はその時の事を話す。

〜〜〜


ましろ(お猿)『ウッキー!』

拓海『なんだあの虹ヶ丘は…』

ましろ(まし拓)『あの子はこの前エルちゃんを励ますためにわたしやソラちゃん達で桃太郎を元にしたお芝居した時わたしがお猿さんの役をやった事で生まれたお猿のわたしだよ』

拓海『ああ、前に言ってたな。でもそれけっこう前じゃなかったか?』

ましろ(まし拓)『生まれたのはその時だけど最近なぜか存在が大きくなって今日出てきたの。なんだか拓に会いたそうにしてたから連れてきたんだけど』

ましろ(お猿)『ウキー!』

ましろ(まし拓)『え!?違うよ!拓はあなたのお婿さんじゃない!いくら前にましろ太郎SSで猿役をやったからって!』

拓海『(猿役…?)』

ましろ(お猿)『キキキ!』

ましろ(まし拓)『ダメなら力づくなんて乱暴な、そんな事わたしがさせな…あれは』


イイネイヌ『ヌッフ!』

ましろ(まし拓)『あれは前におばあちゃんが教えてくれたイイネイヌ!なんでこんなところに、ん?何かしようとしてる?』

イイネイヌ『ヌンダフル!』

『イイネイヌさんがまし拓にいいねしました』

ましろ(まし拓)『えー?わたしと拓ってそんなにお似合い〜?照れちゃうね拓♪って、イイネイヌに気を取られてるうちにお猿のわたしに攫われてる〜!』

〜〜〜

ましろ(まし拓)「という事があって」

ここね「どこから突っ込めば…」

ましろ(常識人)「ていうかわたしが増えたなんて今初めて聞いたよ!?」

らん「ましろんまた蚊帳の外だったんだ…」

あまね「改めて不思議な現象だな。そんな場合では無いが、さあやがいればもっと食いついたかもしれんな」

ソラ「しかしおかしいです。増えたましろさんが少し性格が違うとはいえ無理矢理拓海さんを攫うなんてましろさんらしくありません」

あげは「それはあたしも思った。そのイイネイヌ?がお猿のましろんになにか悪い事吹き込んだりしたのかな?」

ツバサ「そういえばイイネイヌはどうなったんですか?」

ましろ(まし拓)「お猿のわたしと同じ方向に跳んでいったよ。追いかけたかったけどミラージュペンがないわたしじゃあ追いつけなかったよ…」

ゆり「ちなみにましろのミラージュペンは?」

ましろ(常識人)「ここにあるよ」

そう言ってましろはミラージュペンを見せる。

ツバサ「それならお猿なましろさんはプリキュアになれないから最悪荒事になっても相手はイイネイヌだけって事ですか」

ゆり「そうとも限らないわ。仮に拓海くんが油断していたとしてもましろの素の身体能力で攫うなんて不可能よ。話を聞く限り拓海くんを抱えてかなり俊敏に動けるようだし、用心はしなければならないわ。それに他の仲間がいる可能性も否定できない。さっきの話的に桃太郎で繋がってるなら最低でも雉かそれに類する仲間はいそうね」

らん「わぁ…ゆりさんすごい本気」

ゆい「でもそうだよ!拓海を取り返しに行かなきゃ!まずはどこにいるか調べなきゃ!」

ましろ(まし拓)「それは大丈夫。お猿のわたしもわたしだから居場所はもうわかってるよ」

ましろ(常識人)「わたしが言うのもなんだけど、相変わらず意味わかんない仕組みだよねこれ」

ダークドリーム「ともかく場所がわかったとしても拓海がどうなってるかはわからない。他のメンバーが集まる時間が惜しいわ。今すぐ出発しましょう」

ましろ(まし拓)「そうだね。ねえわたし、ミラージュペンを貸して。拓を取り戻すのにわたしも力になりたい」

ましろ(常識人)「わかった、がんばってね」

そうして総勢10名のプリキュアが拓海救出に動き出した。

〜〜〜


キチキギス「チチチチチ」

ウイング「ムーンライトが予想した通り、雉らしき仲間がいますね」

時間短縮のためプリキュアに変身してから現地へと向かったプリズム達。

そこには猿のましろ、イイネイヌ、そしてその仲間キチキギスがいた。

プリズム「まずはわたしに話させて。お猿のわたし、拓を素直に返す気はある?」

ましろ(お猿)「ウキ」

プリズム「…そう、譲る気は無いんだね」

フィナーレ「(真面目にやってるのだろうが、側から見ているとコントのような図だな)」

プリズム「いちおう聞いておくけど他の二人は?」

イイネイヌ「ヌンッフ!」

キチキギス「キチャ!」

プリズム「………なんて言ってるかわからないや」

ダークドリーム「プリズム、真面目にやってるのかもしれないけど気の抜けるようなやりとりはやめなさい」

猿の姿をしたましろに真剣に話しかけるだけでシュールだというのに、流れで話の通じない二人に話しかけるのはもはや完全にコントだった。

そんな会話で空気が僅かに緩んでいると…

ムーンライト『プリキュア・シルバーフォルテウェイブ!』

『!?』

そんな空気を破るようにムーンライトが不意を撃つ。

イイネイヌ「ヌンッ!」

それを3人の前方にいたイイネイヌが受け止めようとする。

イイネイヌ「ヌ〜〜!」

しかし流石はムーンライトの必殺技。イイネイヌは徐々に押されていく。

イイネイヌ「ヌヲ!」

そしてイイネイヌの足は地を離れ後方へと飛ばされていった。

ムーンライト「こんな事をするんだもの、答えはNOに決まってる。なら相手のペースに乗ってあげる義理はないわ」

非常に合理的かつ冷静な判断。

プリキュアの中で最も長い戦闘経験を誇り明晰な頭脳も持つ彼女らしい。

それに加えて今日の彼女は静かに怒りを抱いていた。

ヤムヤム「はにゃ〜すっご。もう一人倒しちゃったかにゃ?」

ムーンライト「…いいえ、あの犬は私の攻撃が決まる前に自分から後ろへ跳んでいたわ、私の技の威力を軽減するためにね。おそらくまだ戦闘可能状態ね、あの犬は私が相手をする。みんなは残りの二体をお願い」

スカイ「そんな!一人で行くんですか!?」

ムーンライト「吹っ飛んだあいつを追えるのは飛行が可能な私かウイングだけ。ならみんなとの共闘経験が浅い私より豊富なウイングが残るべきよ。それに私なら一人でも大丈夫。…お父さんをお願い」

そう言ってムーンライトはマントを身につけてイイネイヌが飛んでいった方向へ飛んでいく。

その後ろ姿はとても頼もしいものだった。

〜〜〜

イイネイヌ「ヌッフ」

吹っ飛んだ先のイイネイヌが立ち上がる。

ムーンライトの言った通り、ダメージを軽減したようだ。

ほどなくしてムーンライトが近くに降りる。

イイネイヌ「ヌンダフル!」

『イイネイヌさんがムーンライトの技にいいねしました』

ムーンライト「あら、褒めてくれるの?ありがとう自慢の技なの。けれどあいにくとここからはそんな余裕見せてあげないわよ?」

イイネイヌは悟る、目の前の相手は強敵であると。

己の全霊を出すのにふさわしい相手だと。

イイネイヌは懐から何かを取り出しそれを頬張る。

ムーンライト「(あれは、団子かなにかかしら?)」

団子のような物を食べて少しイイネイヌの体に変化が起こる。

イイネイヌ「ヌゥ〜〜〜ン!!」

すると次の瞬間イイネイヌは巨大な姿へと変わる。

ムーンライト「それがあなたの本気というわけね。だとしても、私のやる事は…」

イイネイヌ「ヌァッ!!!」

その言葉が終わる前に、イイネイヌの拳がムーンライトのいた場所に突き刺さった。

〜〜〜

そして少し時間が戻り、ムーンライトが飛び立ってすぐの頃。

ましろ(お猿)「ウキ、ウキウッキ」

キチキギス「キチチャ、キチ」

仲間が吹っ飛ばされたからか、なにやら会議をしているようだ。

小声であるためプリズムもなにを言っているかは聞こえない。

そして猿のましろとキチキギスは懐から何かを取り出し頬張る。

すると猿のましろとキチキギスの体は大きくなっていく。

ましろ(お猿)「ウッキ〜〜〜!」

キチキギス「チチチチッキャ!」

スカイ「なんですかあれは!?ましろさんはあんな事もできるんですか!?」

プリズム「わたしもあんなの知らないよ!?」

フィナーレ「(品田好きのましろがツッコンだ!?)」

ダークドリーム「言ってる場合!?どう見たってパワーアップした状態よ!構えなさい!」

急な事態に驚きを隠せないプリキュア達だったが、ダークドリームの一声で気持ちを切り替え、相手の出方をうかがった。

ましろ(お猿)「ウッキー!」

しかし驚きの展開はまだ続く。

猿のましろの手のひらから紫色の液体が噴き出てくると、それを前方、つまりプリキュア達へ放たれた。

その液体は見るからにやばい代物。だが放たれた範囲も広く避けるのは困難。ならば。

バタフライ「みんな固まって!スパイシー!」

スパイシー「うん!」

9人は密集し、スパイシーとバタフライのバリアで液体を堰き止める。

そして数秒後、液体の勢いは消えて引いていく。

スパイシー「ふぅ、なんとかなっ…」

プレシャス「スパイシー!」

液体が引いたその一瞬、バリアが構えられていない上空からキチキギスが強襲してくる。

スパバタ「「きゃあ!」」

プリズム「バタフライ!この!」

ヤムヤム『バリバリカッターブレイズ!』

二人を襲ったキチキギス目掛けて遠距離攻撃組が反撃を試みるが、キチキギスはそれをひらりとかわす。

フィナーレ「速い!」

ウイング「だったら僕が!」

素早いキチキギスへ対抗するためにウイングがそれを追いかける。

キチキギス「チャァ!」

ウイング「追いつけない…バタフライ!」

バタフライ「ッ…まかせて!ミックスパレット!ホワイト…」

ウイングの声に反応し、即意図を理解し立ち上がり支援しようとするバタフライだが…

ましろ(お猿)「ウキッ!」

その瞬間猿のましろが不可思議な色のビームをバタフライに放つ。

バタフライ「くっ…」

たまらずミックスパレットをしまいバリアで防ぐバタフライ。

スカイ「やぁぁぁ!」

プレシャス「はぁぁぁ!」

バタフライをフォローするためにスカイとプレシャスが猿のましろへ仕掛ける。が、

ましろ(お猿)「キッ!」

スカイ「ぐぅっ!」

プレシャス「うわっ!」

巨大化した事で長くなった腕を使い二人を両手で一人ずつ掴む。

ましろ(お猿)「ウ〜ッキ!」

スカプレ「「うわ〜!」」

そしてそのまま投げられてしまう。

しかし数はプリキュア側が多い。その隙に猿のましろをフィナーレが狙う。

フィナーレ『プリキュア・フィナーレブー…』

キチキギス「チャ!」

フィナーレ「くっ!」

しかしその前にキチキギスの光弾がフィナーレを襲った。

ウイング「この!」

キチキギス「チチャ!」

ウイング「くっ!…すいません、僕があいつを抑えなきゃいけないのに」

フィナーレ「きみだけの責任じゃない、あの鳥が遠距離攻撃まで可能となれば今のはどうやってもやられる場面だ。しかしどうにもやりづらいな、手数はこちらが多いのに完全に後手な状況、あいつらが強いのもあるが、誘導されているような感覚だ」

バタフライ「ひょっとしてだけどさ、あのお猿なましろんにはあたし達の戦術全部筒抜けなんじゃないの?なんか変になっちゃってるけど、大元はましろんなわけだし」

フィナーレ「…なるほど」

おかしな事態が起こり過ぎて当たり前の事実を見落としていた。

いやこれが当たり前と言ってはなんだが、目の前の相手は自分達の仲間に等しい存在、戦術が筒抜けなのも当然だった。

ダークドリーム「ふーん、だったら取れる手があるんじゃない?」

フィナーレ「ッ!そうか!みんな!」

ダークドリームの一言でフィナーレはあることに気づき、みんなに合図を送る。

ゆっくり相談する時間は無いが、最低限の意図を伝える。

フィナーレ「散会!」

『うん(はい)!』

フィナーレの号令とともに皆一斉に散らばる。

当然相手もそれを見逃さない。

ましろ(お猿)「ウッキー!」

猿のましろは再び紫の波を広範囲に起こす。

散らばったプリキュア達を一網打尽にするつもりだ。

フィナーレ『プリキュア・デリシャスフィナーレファンファーレ!』

プリズム『ヒ〜ロ〜ガ〜ルプリズムショット!』

しかし当然プリキュア側も無策では無い、大技で波を散らしてみせた。

だが猿のましろはそれでかまわない、紫の波、『ヘドロウェーブ』は猿のましろにとってそう出し惜しむ技でもない。

それを散らすために大技を使ってくれるなら、収支はこちらの方が得なのだから。

そして散会したプリキュア達はデリシャスパーティが猿のましろへ、ひろがるスカイがキチキギスへ向かっていた。

スカイ『ヒ〜ロ〜ガ〜ルスカイパンチ!』

ひろがるスカイチーム1のフィジカルを持つスカイの必殺技、パワースピードともに優れた技、喰らえばキチキギスもただではすまないが…

キチキギス「チャ!」

飛行能力を持たないスカイの攻撃は上空へ飛べば逃れる事は簡単だ。

ウイング『ひろがる!ウイングアタック!』

しかしその先にウイングが迫る。

自在に空を飛び、スピードならばスカイを超えるウイングの必殺技。

それを上空へ誘導された状態ではキチキギスのスピードでもかわすのは難しい。が、

キチキギス「キチチャ!」

翼に力を纏い交差させて迎撃した。

スピードは優れていてもパワーが劣るウイングの攻撃はキチキギスは返せる。

ウイング「うわー!」

ましろ(お猿)「キキ」

バタフライの推察通り猿のましろはプリキュア達の戦術を"おみとおし"だ。

プレシャス「やぁぁぁ!」

例えばプレシャスは近接主体、伸びたリーチで射程距離から離すように戦えば恐れる相手では無い。

スパイシー「くっ!」

そしてスパイシーは防御、拘束タイプ。

拘束に捕まると厄介だが、盾役を兼ねているのがポイントだ。

ある程度火力を集中すれば、役割の比重をそちらに傾けられる。

ヤムヤム「チョアー!」

ヤムヤムは少しやっかいだ。

始動の早い中距離技をメインとしたスタイルは完全に凌ぐのは難しい。

しかしある程度割り切った対処をすれば相手の決定力の低さにつけ込める。

フィナーレ「ふぅっ!」

フィナーレは近、中距離タイプ。

基本はプレシャスと同じ射程だが、油断していると中距離の『フィナーレ・ブーケ』が飛んでくる。

しかしそのための布石は打ってある。

範囲攻撃である『ヘドロウェーブ』、もし発動を許せばフィナーレ一人では対処できないゆえに、始動そのものを止めるために距離を詰めざるをえなくする。

このようにデリシャスパーティチームを抑え徐々に押していく。

キチキギスにも対応策をきっちり教えてある。

負けるわけが無いと猿のましろは考えていた、が、

ダークドリーム「ハァッ!」

ダークドリームに後ろを取られた。

油断した?いや流石に買い被りだ。

この多人数を相手にしていれば当然隙くらい生まれる、肝心なのはそれを埋めるために適切に対処する事だ。

ましろ(お猿)「キ…!」

猿のましろの動きが一瞬止まる、なぜなら…

ダークドリーム「大人しく夢でも見ていなさい!」

ダークドリームは右腕に黒いエネルギーを纏い。

ダークドリーム『ダークネス・アタック!』

それは彼女の元となったキュアドリームの『ドリーム・アタック』に似た一撃。

猿のましろは抵抗できずその攻撃を喰らった。

ダークドリーム「この技は知らないでしょ?あの子とあいつの前でしか使ってないからね!」

キチキギス「キチャ!?」

猿のましろがやられた事にキチキギスも動揺する。

その隙も見逃さない!

ウイング「バタフライ!」

バタフライ「任せて!『ミックスパレット!二つの力を一つに!ホワイト!イエロー!速さの力アゲてこ!』」

一瞬の隙を縫い、バタフライのバフを受けるウイング。

アゲたスピードでキチキギスに迫る。

ウイング『ひろがる!ウイングアタック!』

放たれる二度目のウイングアタック、その一撃は先程より早く、迎撃すら追いつかない。

キチキギス「キチャァ!」

ウイングアタックを喰らいキチキギスに大きな隙ができる。

ウイング「今です!」

スカイ「スカイブルー!」

プリズム「プリズムホワイト!」

『プリキュア・アップドラフトシャイニング』

そしてキチキギスはスカイとプリズムの合体技に飲み込まれていった。

キチキギス『スミキッター』

ましろ(お猿)「キ!?」

ダークドリームの攻撃を耐えて立ち上がる猿のましろ、しかしすでに状況は詰みかけていた。

???『……!』

ましろ(お猿)「ウキー!」

焦った猿のましろは『ヘドロウェーブ』を放つ、ひろがるスカイチームがこちらに来ないうちに少しでも相手に被害を与えるために。

しかしそれは明確な握手。

『トリプルミックス!』

その技は、知っていたはずだ。

デリシャスパーティチーム最強の遠距離技。

『プリキュア・ミックスハートアタック!』

紫の波を引き裂き猿のましろに迫る光線。

失敗だった、この技を打たせる余裕を与えたのが、もしキチキギスがいれば自分を連れて逃げてくれたかもしれない。

いやそもそも有利な位置どりをしていれば…だが、もう遅い…

???『…!』

〜〜〜

イイネイヌ「ヌンダフル!」

イイネイヌはかつて弱かった。

だから力を求めた、その結果力をつけた。

今のイイネイヌにかかれば強敵と感じたムーンライトですら一撃でしとめ…

イイネイヌ「ヌォッ!?」

仕留めた、そう思った瞬間死角から強烈な衝撃が襲う。

そこにいたのは当然。

ムーンライト「まさか、あれで倒せたと思った?」

ムーンライトだ、パンチが届く直前に死角に潜り込み反撃を放ったようだ。

イイネイヌ「ヌッ!」

ムーンライト「フッ」

再びパンチを繰り出すイイネイヌ、今度は振りかぶったフックパンチではなく振りかぶらないショートジャブだ。

一撃で倒す威力ではなく、隙を減らし追い詰める方向を選んだ。

ムーンライトも潜り込めないとみると、後ろへ下がりながらかわす。

イイネイヌ「ヌァッ!」

距離を取ったムーンライトへ向けて紫の鎖をぶんまわす。

ムーンライト「!」

それをなんとかかわすムーンライト、しかしたまらずマントを羽織り上へ飛ぶ。

イイネイヌ「ヌッ、ダ!」

イイネイヌはそれを追い跳ぶ。

その勢いでムーンライトへ再びパンチを放つ。

ウイングと違い空中では地上ほど自由が利かないムーンライト、この一撃はかわせない!

…かわせないなら流せばいい。

ムーンライトは拳にエネルギーを纏い、イイネイヌの拳を適切なタイミングで弾く。

そして逆の手で衝撃波をイイネイヌに叩き込んだ。

イイネイヌ「ヌァ!」

地面に叩きつけられるイイネイヌ、しかしすぐに立ち上がる。

今のところ一方的にやられているイイネイヌだが、むしろ先程の攻防でイイネイヌは勝ちを確信した。

最初の『シルバーフォルテウェイブ』そして先程のクリーンヒット二発、これらをくらってもイイネイヌは大したダメージを負っていない。

つまりムーンライトではイイネイヌは倒せない。

一連の攻防で理解した、パワーもタフネスも、そしてスピードですらイイネイヌが僅かに上回っている。

この戦い、イイネイヌがムーンライトを倒すのが早いか遅いかの結果しか訪れない!

再び拳を振るうイイネイヌ、今度はラッシュだ。

ギリギリで避け続けるムーンライト、次第に徐々に追い詰められる。

イイネイヌのパンチはより勢いを増す。

イイネイヌ「ヌダッ!」

しかしムーンライトへ拳が届くより前にイイネイヌの顔面に何かがぶつかってくる。

いや違う、ぶつかったのはイイネイヌの方だ。

攻撃に夢中で注意を怠っていたのだ。

その正体はムーンライトが貼ったバリアだ。

その一瞬の怯みを当然ムーンライトは見逃さない。

懐に潜りこんで今度はムーンライトのラッシュ、イイネイヌとは逆にその攻撃は全弾ヒットした。

しかしそれでもイイネイヌに大きなダメージは無い、イイネイヌは今度は手を広げ噛みつきにかかる。

だがムーンライトは大きくなった分広がった股下を滑り込む形で潜り抜け、がら空きの背中にまた大きな一撃を叩き込む。

それでも倒れないイイネイヌ、だが相手の一方的な攻勢に苛立ったイイネイヌはまた鎖をぶんまわす。

それがムーンライトの誘いだとも気づかずに。

鎖が放たれると同時にムーンライトはタクトを構える、イイネイヌも流石にフォルテウェイブをまともに喰らえばただでは済まないと一瞬身構える。

その一瞬はムーンライトに技を使わせるには充分。

ムーンライト『プリキュア・シルバーフォルテウェイブ!』

ムーンライトのフォルテウェイブはイイネイヌ、ではなく鎖へと当たる。

イイネイヌ「ヌッ!」

放たれたフォルテウェイブは鎖を連れて空へ飛んでいく、繋がっているイイネイヌも連れて。

やがてフォルテウェイブは鎖から外れるが、イイネイヌは宙へ放り出される。

先程のある程度指向性を持たせた跳躍とは違う、自由を失った浮遊状態、自由に飛べるムーンライトには格好の的だ。

自由の効かないイイネイヌへどんどん攻撃を加えるムーンライト、落ちそうになれば再び宙へと蹴り上げるのも忘れない。

イイネイヌは抵抗を試みるも、自由の効かない宙ではもがく事しかできなかった。

ムーンライト「フゥッ!」

そして最後には地面へと叩きつける。

イイネイヌ「ヌ、ッダ!ダフッ…」

再び立ち上がろうとするイイネイヌ、しかし足に力が入らない。

ムーンライト「一撃二撃で効果が無いなら、効くまで続ければいいだけよ」

最強のプリキュア、しばしば議論の起こる事柄。

その結論は前提や議題の参加者によって異なるが、その一つの結論こそが彼女キュアムーンライト。

しかし彼女のスペックそのものは他のプリキュアと大きな差があるわけでは無い。

スペックでいうなら、例えばキュアアースのような並外れた者は他にいる。

ならば何が彼女を最強と言わしめるか、それは技術と経験。

プリキュアの戦いは約一年、長くて二年程度で終わるもの。

しかし彼女の戦闘経験は三年以上。

たった一年で大きく成長するプリキュア、それが三年分の経験値を持ったならどうなるか、その答えが彼女キュアムーンライトだ。

イイネイヌはここに来てようやく悟る、彼女は自分が勝てる相手では無いと、せめて万全なうちに無理矢理突破して仲間の力を借りるべきだったと。

だが、もう遅い…

ムーンライト『プリキュア・フローラルパワーフォルティシモ!』

後半へ


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