お持ち帰りSSおまけ
・「まだペパアオは普通の友人とします」に対する重大なレギュレーション違反
・めちゃくちゃ付き合ってるつもりでいたしその上で大切にしたいし親友であることには変わりはないので心地良い距離感を続行しているつもりのペパーがいます
・手癖でペパーの理性がはがねタイプ
アオイの呼吸が深く規則正しくなるのを見届けて、ペパーはその眠りを妨げないようにそっとベッドから下りる。
そして懐に忍ばせておいたモンスターボールをひょいと放り投げた。
現れた番犬は主人の意を汲んでか吠えることはなく、ただニヤリと笑ったような顔を見せる。
「見張りちゃん、ありがとな」
小声でマフィティフを労いながらわしわしと撫でると、満足げにふんすと鼻を鳴らしてボールの中へ戻っていった。
とはいえ、ペパーは別に外を見張らせていたわけではない。その対象はペパー自身。自分がアオイに何かしでかすようならボールから勝手に出てでも止めるよう頼んでいた。
自分のブレーキが緩んでしまいそうで、というか正しい段階の踏み方というものがよくわからずキスの一つもできていないペパーである。
アオイに好きだと言われれば喜んで好きだと返すし、抱きつかれるのも嬉しい。親友としての触れ合いとあまり変わらないかもしれないが、こちらからの好意も返しているつもりだ。
その上で。トーヘンボクだなんだと言われようと、今のアオイに手を出すつもりはない。
ペパーの意志は固かった。
「それにしても……なんだったんだろ、これ」
拾ってその辺に置いておいたマッサージ器をスマホロトムで撮影し、画像検索にかけてみる。
店をウロついていたらたまに見かけるものではあるから、最初は元気じるしのアオイが持っていることが意外で何気なく見ていただけなのだ。
そうしたらアオイがこの世の終わりのような顔をし始めたものだから、何かろくでもないものなのだろうということだけ察した。
その場ではごまかされてやったが、一応確認しておくに越したことはない。
肝心の結果としては、疲労回復、筋肉をほぐして肩こり改善、云々。ぱっと出た範囲では特におかしいところはない。
少しだけ考えて、ペパーは検索項目に「エロ」を追加してみた。
「……おわ」
検索結果が様変わりする。そこにあるのと同じような形のものを股間に当ててよがる女性の画像が出るわ出るわ、なるほどそのような目的にも使える類のものであるらしい。
(これ、使ってるのか。アオイが)
音も立てずに眠るアオイの方をちらりと見て、ペパーは己の喉が鳴る音を聞いた。
そしてぶんぶんと首を横に振って頭をよぎった妄想を追い払う。思春期童貞にこれはちょっと刺激が強い。
アオイはあの通り積極的で、ついでにペパーがやることであれば大抵喜んで受け入れてくれる。先へ先へと求めればどこまでも応えてくれる予感はしていた。
裏を返せば、ペパーがちゃんと自制できないと容易に行き着くところまで行ってしまうということである。それはよろしくない。なぜか、というと。
「……」
先程までは遠慮なくごりごりと触っていたその腰に、今度は少しだけ別の意図をもって触れてみる。
アオイの眠りは深いようで、身じろぎ一つしなかった。それをいいことに、なぞる、包み込むように撫でる。その薄さを確認する。
「やっぱ入んねえよな……?」
そこで、かたり、とマフィティフのボールがわずかに揺れた。肩を跳ねさせたペパーは警告に従い大人しく手を離す。まったくよくできた相棒だ。
「……急ぐ必要、ないよなぁ」
電気を消し、これくらいなら許されるだろうと彼女の横に寝転がる。
干したパンツを見られたくらいで顔を真っ赤にして慌てるアオイはまだまだ少女で、いろいろと早いのだと思う。しっかり動揺して直視すらできなかったペパー自身もまたさもありなん。
(いや、でもああいう大人のオモチャ?みたいなのもう使ってんのか……うーん……)
とはいえ。アオイに本気で手を出したくないのなら、本人にいつまでは絶対に駄目だと言えばいいだけなのだとわかっている。そのラインを押し通るほど彼女は道理がわからないわけではない。
それをしないペパーは結局のところ、愛されること、追われることにえも言われぬ幸福を感じてしまっているのだ。
「ほんとオレ、クソガキちゃんだよなぁ……」
届かない自嘲は月の光に溶けていく。
あどけない寝顔に誘われてふわぁと欠伸をしたペパーも、とろとろと夢の中に落ちていった。