お好みは?

お好みは?


「だーかーらー! 新時代スルのは現実でだって言ってるでしょ!?」

こればかりは何をおいても譲れないと少女が叫ぶも、相対する少年もまた己の信念は曲げられぬと主張し返す。

「いいや! お前の世界でスル! こればっかりは譲れねェ!!」

毎度毎度飽きもせずよくやるものだ……と熱いお茶を啜りながら二人を冷めた目で見ているナミ。

普段ならオレンジ系を好むのだが、このバカップルと同じ空間に居るとお茶の方が落ち着ける。

「わかってないなあ! いい? 現実でルフィに押し倒されて、掴む手の力強さとか、腹筋どころか全身の筋肉がっしりなルフィの体をみてすごい筋肉……私の柔肌じゃ絶対勝てないな……ってあの抵抗できない感じがいいんだよ!!」

「ウタこそわかってねーだろ! 二年間あんなに修行して強くなったのに、ウタの世界では手も足も出せずにウタにいいようにされちまうのがいいんだよ!!」

恥ずかしげもなく自分達の性癖を開示してぶつけていく二人。すぐそばに第三者――ナミが居るのにもかかわらず。

これも毎度の事なので、ナミは平静だ。もはや悟りの境地と言ってもいい。

「もー! ルフィのわからず屋! 同じ女の子のナミはわかってくれるよね!?」

ウタに同意を求められたナミは二人の方をちら、と見やる。その眼は冬島の海も真っ青の冷ややかさだ。

「……ナ、ナミ……?」

「おう、ナミ! ウタにいってやってくれよ! 俺の方が正しいってよ!」

その視線にウタはたじたじとなり、ルフィは俺の方に同意するよな! と自信満々だ。

視線を湯飲みに戻し、ゆっくりとした動作で一口。お茶を飲むときは音を立てるのが作法だったか、それともそれは迷信だったか。

そんなことはどうでもいいかと頭から追い出し、スズズズズ……と音を立ててお茶を啜り、コトリとテーブルに置きなおす。

「……」

「……」

そんなナミの一挙手一投足をゴクリ、と生唾を飲んで見守る二人。

そうして審判が残酷な真実を告げる。

「私を巻き込まないで。変態バカップル」

バッサリだった。世界一の大剣豪もかくやという切れ味である。

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