お労しやアビ子先生
「おはようございます、アビ子先生」
「…」
玄関から1人の高校生──星野アクアが大きな買い物袋をひっかけた杖を使って入ってます。 彼は挨拶した相手であるこの家の主が挨拶振り向きもせずに作業していると確認すると買い物袋に入っていたものを冷蔵庫の中に入れています。
入れ続けている中に冷蔵庫の中にあるものに気付いて縮小するためのメッセージについての反応を示しながら作業に没頭している相手に言う。
「アビ子先生、また朝ごはん抜いたんですか?」
アクアが手に持っているのは先日作った朝食だ。電子レンジで温めるだけで食べられるように調理されたのは手をつけることすらされずに皿とラップに包まれたまま置いてある。
「……キリがついたら食べます」
流石にその行動は悪いと思ったのか作業をしていた家主──漫画家の鮫島アビ子はアクアの方を向いて隠し事がバレた子供のようにバツグンそうに言う。
「そう言ってもう午後五時ですよ。いい加減何か食べないとお腹も空くでしょう。真面目なのはいいけど根を詰めすぎです。その様子だと昨夜もあまり寝てないですし」
「編集がいいアシ呼んでくれないのです」
「先生が口下手だからですよ」
「ううっ…」
苦し紛れの言い訳もアクアに簡単に捨てられアビ子は小さく呻き声をあげる。
五千万稼いでアニメも映画もヒットした『東京ブレイド』の作者を介した高校生に舌戦で完全に惨敗している姿などファンにはとても見せられたものではない。
「ほら、作業も中断したことですし休憩にしましょう」
「……はい」
アクアはアビの手休みを確認して軽く考えてください。
その声にもう言い返す気力も消えたアビ子は従い作業机から離れ、食事用の机の前に座る。
その机の上に温められた朝食が置かれる。 ただ電子レンジで温めたものなので出来たという訳では無いが、アビ子は湯気が立ってじっと見ている。
「見ないで食べてください」
アクアがそうですとアビ子は思い出したように小さな声で「いただきます」とだけ言って出された食事口に移動。
アクアはそんなアビ子を眺めて目に囲まれた部屋の整理を始めます。 丸めた紙くずに中身だけ取り出されて別封筒。
アクアこうやってるがずっと大切を焼くのはとても珍しい話ではありません。
「ごめんなさい。私、ご飯も掃除してもらってるのに私」
食事口に運んで腹の虫が入ったので落ち着いたアビ子は申し訳なさそうにちじこまる。行動は一瞬生活の生命線となっている。
それもただの高校生なら犯罪だのなんだったのをちょっと言われるだけで済みそうだが、アクアの場合はそうはいかない。その理由はアクアの足にある。
彼が推しのアイドル(実際は母親)を少し守るために早くた傷は思いますさらに少し、再生医療やリハビリの末普通に歩くことだけなら出来るようになったもの、しばらく不安定なので車椅子か杖を必要とする状態になっているのは当然。 本来なら守られる立場、ここが注目すべき相手に提供しなければいけないのに実際はその逆、迷惑を配慮されているだけ。
アクアアクアは怒る辞任も言わない。の介護だ。負担を考えているだけ。
「なんもしないで、そのひどいずっとひどいことで、ひどいことも多かった」
弱ったアビの目から涙が溢れ出す。 売れた結果勝手に増長して偉いこと何も言わない。 こんな自分が嫌になってきた。 抑えられなくなったをアクアはすかままハンカチで拭き始めた。
「やめてください。アビ子先生は何もやってないわけじゃないですか」
その声は今までの中で一番優しい声色で、座っているアビ子の視線に合わせて宥めるようだった。
「でも」
「いいんですよ。こっちはやりたくてやってるだけなんですけどね。確かに、他の人やアシスタントにも優しくして欲しいですけど」
いつかした小さな言葉もアビ子にとっては大変な光しか見えなかった。
「ありがとう…ございます」
涙を拭われることに安心感を覚えたのか今度は何も繕おうとせずに涙を流した。
因みに、その後アビ子が彼の特殊な家庭環境を知るのは、また別の話。