「お前が抜けたからって捨てるわけねェだろ」と言ったらさらに泣かれた
アラバスタへのエターナルポースを手に入れ、誇り高き巨人達の助けもあり無事にリトルガーデンを出発した麦わらの一味
先の戦いでの反省からさらなる鍛錬を積んでいたゾロがキッチンに入ると、ウソップがテーブルの上で何やら作業をしていた
「何してるんだ?」
冷蔵庫から出した水を飲みながら尋ねると、ウソップは「おっ、ちょうどよかった!」と顔を上げた
「ゾロ、ちょっとこっち来てくれるか?」
「?おう」
ゾロが近寄るとウソップは彼に棒状のものを手渡した
棒の先には紐で吊るされた網のようなものが着いている
「これ、このままこんな感じで持っててくれ」
「ああ」
言われるままに持っていると、ウソップはそのまま何か作業を始めた
暫くすると「もういいぞ」と声がかかったので、ゾロは棒を下ろした
「ウソップ、何だこれ?」
ゾロが尋ねるとウソップは「よくぞ訊いてくれた!」と笑う
「これぞウソップ様特性、炙り棒(ブロイル・スティック)だ!!」
ウソップはゾロの目の前の棒を示し、声高々に紹介した
「ブロイ…なんだって?」
「ブロイル・スティック!この網の上に食材を置いてこの棒を持つ。でもって後はお前の炎で炙ったり焼いたりするだけ。こうすれば、一人でもスルメ炙れるだろ?網は言ってくれりゃいつでも交換するぞ」
ゾロはウソップの説明を聞きながら目の前の棒を見る
持ち手の太さはちょうどよく、持ちやすい
先にある紐で吊るされた網の位置もよさそうだ
「ウソップ、ありがとな」
ゾロは笑って礼を言う、翼も無意識に上下している
ウソップは「へへっ」と笑って鼻の下をこすった
慌ただしくウォーターセブンを出港したその夜、
「宴だああああっ!!」
船長のいつもの発声で船内宴会が始まった
ウォーターセブンでのBBQはそげキングとして参加していたからか、はたまた今回の宴の主役の一人だからか、ウソップはいつも以上にはしゃいでいた
そんな彼がふと周りを見ると、甲板の片隅にゾロが座っていた
いつものように一人酒を飲みながら炎を発する彼の手には、見覚えのある棒が握られていた
「ゾロ、それ…」
ウソップが遠慮がちに声をかけると、ゾロは持っていた酒瓶を芝生に置いた
「ん?ああ、今コックの捌いた魚焼いてんだよ。お前も食うか?」
ゾロはなんの気もなく尋ねる
背中の翼は楽しげに上下し、魚が焼けるのを待っている
それを見たウソップの目頭は、自然と熱くなっていた
「だあべえるぞおおおおっ!!」
「おいやめろ!鼻水つけるな!!」
号泣しながら飛びつこうとするウソップをゾロはなんとか止める
麦わらの一味の新たな船、サウザンド・サニー号での夜はまだ始まったばかり