おしゃかさま

おしゃかさま

肉の焼ける匂いは好き。

「美味しいお菓子を期待していたんだけど」

最近手に入れたお酒に合うかな、と開けた箱には手足を縛られ猿轡をされた小さな子供がこちらを睨んでいた。

お肉は好きだけど人間なんて調理経験ないし昔死体をちょっと味見したけどすぐペッしちゃった。あんなの食べれたもんじゃないね兎の方が断然⋯⋯

そこまで考えてバタバタと暴れる子供に我に返る。

「はいはい今切るから大人しくして」

とりあえず猿轡を、と外した途端指に噛みついてきて目を丸くする。

「さわるな! 殺す!」

「さわらなきゃ外せないじゃない」

噛みついたまま荒い息で脅してくるが所詮子供だ痛くないし怖くないむしろなんだか懐かしい。懐かしい?

「ううん、まっ良いか! 兎に角ここにいられたら迷惑だから早く帰りなさい。私もうすぐ夜ご飯食べるの」

縛られた縄を切ると暫く呆然と見上げていた子供が今度は掴みかかってくる。情緒不安定だなチョクラーツでも食べたらいいのに。

「誰のせいでこんなところ来たと思ってるんだ! お前が雨を止めないから! だからおれは押し付けられたんだ! 何にもねぇから⋯⋯おれが⋯⋯なにも」

「なんにもないの」

「⋯⋯ここにぶちこんだのは親だ。捨てられて腹立ったから指二・三本噛みきってやった」

噛みきった!

「ふっ、ふふ。あはは!」

「笑い事じゃねぇ」

「笑い事だよ! 面白いそんなの捨てられたんじゃなくて君が棄てたんだよ! ねえねえ」

ずいと顔を近づけるとのけ反って離れようとする。さっき噛みついた癖に今更だなあ。



「その村ってどこ?」 

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