うるフィ 学パロ

うるフィ 学パロ


「ねえ、1組のルフィ君てカッコいいよね」

「はぁ?ルフィってあのルフィ?」

「そうそう。うるちゃんはあの子の幼馴染なんだっけ」

「まあ、腐れ縁なのは否定しないでありんすが…」


脳裏に浮かぶのはバカでチビで、なのに大人にも喧嘩売ってよくボコボコにされていたし、重度のブラコン二人とうざそうなジジイに甘やかされていた麦わら帽子の男の子。家が近いからよく顔を合わせれば勝負だ!と喧嘩を売ってきたので私はそれを買ったまでだ。年齢差もあり負けたことはないが、ペーたんは弱いのに根性だけは一丁前のルフィによく負けては泣かされていた。だから私の中のルフィはあまり良い印象がないし、公平な目を持ってもカッコよさのカケラもない男だ。


「あいつがカッコいいだなんて世も末でありんす」

「えーでも、先輩に無理言われて泣かされた女の子の敵をうったり、不良にも物怖じしないのちょっとカッコ良くない?」

「ルフィは大切な人を少し侮辱されたからって脊髄反射で喧嘩売る動物みたいな男でありんすよ〜?」

「なかなかできることじゃないから凄いと思うけどな」


話は平行線のまま、始業前のチャイムが鳴ってお開きとなった。言い返す暇がなかったが、友達の言葉にそうだろうか?と頭をひねる。私だってペーたんを侮辱されたら相手がたとえカイドウさんだって腹が立つし喧嘩を売ると思う。それがなんでカッコいいに繋がるのかよく分からない。帰ったらペーたんにでも聞いてみよう。


「てなことがあったんでありんすよ、なんであいつがモテるのか理解に苦しむでありんす」

「...ルフィか...まあ、姉貴があいつを嫌う理由は何となく分かるけどな」

「ん?バカでチビだからでありんすか?」

「そうじゃねえよ、あいつは姉貴に似てるからな、いわゆる同族嫌悪ってやつなんじゃねえか?」

「はあぁぁあ〜!?あいつと私のどこが似てるんでありんすか!ぜんっぜん違うでありんす!」

「姉貴も言ってたろ、大切な人を守るためなら誰にでも喧嘩を売るって、ルフィはその大切な人の範囲が広いだけだ。そのためなら自分のことよりも他人を優先する。ほら、そっくりじゃねえか」

「ぐぬぬぬ..」


そう言われるとそうかもしれない。わたしがルフィのことを格好良く見れないのは自分がして当然のことをあいつがしているだけだと思っているからかもしれない。逆に、自分を優先して大切な人を蔑ろにする男なんて...そう思って気付いた。あれ、なら.. 相対的に考えて、そういう男よりはルフィのことを好ましく思ってるんじゃ...そこまで考えて思考を止めた。これ以上考えると、思ってもみない結論に到達してしまいそうだったから。...寝よう、寝る前だから変なことを考えるんだ。


「...ルフィ、か」

「ん?あ、おめぇうるティじゃねえか!おれの名前呼んでどうしたんだ?」

「え?」


翌朝、登校中に物思いにふけって思わずルフィの名前を呟いてしまうとそこには本人が立っていた。噂をすれば影というやつだろうか。とはいえ、他人の名前を呟いているのを聞かれるのは気恥ずかしいものである。


「...聞き間違いでありんす」

「え、でも、おれは...」

「聞き間違えであ・り・ん・す!!!!」

「..お、おう...」

「それにしても...あんた大きくなったでありんすね...」

「そうか?うるティは...何か」

「?」

「大人っぽくなったな!しししし!」

「!!」


幼なじみというか腐れ縁ではあるがふたりきりでこんな風に並んだり話したりすることは無かったため、改めて観察すると身長や体格の成長、それに顔つきも大人っぽくなったように感じる。正直言って... このルフィに助けてもらったら好きになるというのは...分かるような気もする。

あと...どこで覚えたそんな言葉!ちょっとドキッとしちゃったでありんす!ルフィの癖に生意気でありんす!


「そういえばおめぇ、色んなやつを助けてるみたいでありんすね、私のとこまでうわさが来てたでありんすよ?」

「うわさ〜?なんだそれ、どんなうわさだ?」

「何だっけ...?女の子を助けたり、不良と喧嘩したり...とか聞いたようなそんな感じでありんす」

「ん〜〜?あれのことかな...それとも...?ししし、色々してるから忘れちまった」

「はぁ〜...あんたおバカでありんすね、聞いて損したでありんす」

「何を〜〜!?バカって言うやつがバカなんだぞ!」

「あぁ!?誰がバカでありんすか!?」

「....」

「....」

「ししし...」

「ふふふ...」

「いやー、何も変わんねえなうるティ!中身は昔のまんまだ!」

「あんたに言われたくないでありんす!まったく、ちょっとは成長したと思ったのに残念でありんす」


ああ、変わらないなぁ。そうだ、こいつはバカでチビだったけど、私とまともにケンカした...相手してくれたやつだった。...あのケンカは楽しかった..気がする。それで私からちょっかいかけたこともあったし...。もしかして私、こいつのこと...好きだったのかな?


「ねえ、ルフィ、あんた私が困っていても助けてくれるでありんすか?」

「え...?」

「いや、何でもないでありんす、気にしないで...」


そう言い終わらないうちに肩を掴まれて正面を向かされた。突然のルフィの行動に固まってしまう。


「何かあったのか?おれに出来ることねぇか?強えぇおめぇが困ることなら相当のことだよな?」

「あ、だから、何でもなくて...」

「本当か?遠慮しないで言ってくれ!おめえだっておれの大切なやつで友達だから力になりてえんだ!」

「あ、いや...その...」


昔と違って力も強くなって...頼りがいがありそうな同年代の男に“大切なやつ”と言われて...うるティの心の中には...好きという感情が芽生え初めたーーー


「〜〜〜///ほ、ほんと何でもないでありんすから!む、昔...おめぇとけんかしたりしてたから、助けてくれるか気になっただけだから!」

「けんかぐらいでおめぇのこときらいになるか!おれはうるティがページワンを守ってるのかっこ良いと思ってたぐらいだから、むしろおめえのこと好きなんだぞ!」

「そ、そうなんでありんすね...なら、本当に困ったら、た、頼るでありんす...」

「おう!なら、いつでも助けを呼べるように連絡先交換するか?」

「良いでありんすよ!」

「えーと、確かここのボタンを...」

「この機種ならこっちだと思うでありんす...」


こうしてうるティはルフィのことを意識するようになり...その晩は連絡先に増えたルフィの名前を見てにやにやしていたそうな...


なお、寝る前辺りにルフィから“今日は楽しかった!また明日な!”という連絡が来たときは飛び上がるほど嬉しかったらしい。


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