うみそこから

うみそこから



待機17の“外なる神”ネタ

兄になった日





飛び交う砲弾

爆発音

投げ出される体

真っ黒な海中

全部が一瞬だった



「だいじょうぶ?」

肺に入った海水を吐き出しながら目覚めると心配そうに覗き込む顔。

「⋯⋯アニキ?」

呟くと何故か嬉しそうに眼を細めて笑いかけられて戸惑う。遠くから近くから怒号と戦闘音は響き続けているのに何故か自分のいる船尾楼周囲は静かに感じた。

「そうだよ。ぶじでよかった。いたいところはない? ⋯⋯キミは体が小さくて軽いから助かったみたいだね。ほかのバラバラふってきたのはぜんぶもげてて」

頭がふわふわして変な感覚だ。アニキの言葉が時折豪雨みたいな変な音が混じっている気がする。

「どうして⋯⋯ここに⋯⋯」

「ここ? ここは君の乗ってた船でしょう。違う? 違うか。ここにいる理由かな? 助けたから。船から落ちて沈んでく君を見たんだよ。変じゃないでしょう? ほら、ちゃんとずぶ濡れだし。ね! ところで君の名前は?」

グッと身を乗り出してきて体がすくむ。

横長の瞳孔が此方をジッと見る。

昔から見慣れた瞳が酷く怖く感じた。

「く、クロ⋯⋯クロコダイル⋯⋯」

つっかえながら答えると名前を呪文のように繰り返していくのを聞いてなんだかどんどん、声が耳に馴染むような気がしてきた。

「クロコダイル⋯⋯クロ。クロ。私は君を昔からそう呼んでいたよね」

「よんで⋯⋯た」

「そうだよね。ふふ。そうでしょう。昔からこの船に乗ってた。今は他の海賊船がこの船に略奪目的で襲ってきて返り討ちにしてるところにクロが後方で大砲の弾を運ぶのを手伝っていたら向こうから飛んできた砲弾が近くに命中して爆風で海に落ちたのを私が助けた。⋯⋯痛いところは、ない?」

「な、ない」

「良かった」

ほう、と安心した顔にようやく我に返る。

「良かったじゃない! 甲板で前線にいたのになんでこっちにいるんだ!」

「敵はあらかた潰したし残りは父さん達の楽しみに残しておこうと思ってね」

「早く戻れよ」

「疲れちゃったからここで少し休んでいい?」

アニキが疲れたところなんて今まで一度も見たことがないので嘘だとすぐに分かったけれど今は追い返すのも面倒なくらい身体がだるい。

「⋯⋯いい」

「ありがとう」

海水でずぶ濡れでベタベタするのにアニキは全く気にする様子はなく隣に座り込んで頭を撫でられる。


真っ黒な海の中でみたあれは結局なんだったんだろうか

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