「うちの船を沈めようなんざ、百万年早いんだよ」
それはどんよりとした曇り空の日のことだった
海図制作中のナミさんと読書中のロビンちゃんにお茶を持っていった帰りにふと甲板を見ると、ウソップとマリモが将棋をしていた
将棋はチェスに似てるが少し違うゲームで、最初うちではマリモしかルールを知らなかった
おれのいた場所からは盤面はよくわからなかったが、表情からウソップが苦戦しているのはわかった
「うーむ、この振り飛車は苦しい……」
「さっ、どうでる?」
ウソップは頭を抱えて自分の駒を動かす
ウソップの駒の動きを確認した後、少ししてマリモも駒を動かす
そうやって互いの駒を動かしたり取ったりを繰り返した後、しばらくしてウソップが「まいりました…」と頭を下げた
「やっぱお前強いなー」
「ははっ、よく村のじいさん達とやってたからな」
簡単の声をあげるウソップにマリモは笑ったが、
「さて…それじゃ、さっさと帰ってもらうぜ」
直後、戦闘時のようなギラリとした視線をウソップに向けた
「えっ?お前、何言って?」
「お前、さっき言ったろ。「その振り飛車は苦しい」って。一番最初にお前が言った通り、“ひしゃく”はやったぜ?」
戸惑うウソップにマリモはニヤリと笑う
振り飛車?ひしゃく?
いったいアイツは何を言ってるんだ?
おれが頭を抱える中、ウソップはぐぬぬと顔を歪める
「まっ、どうしても引き下がらねェっつうなら…コイツに斬られてもらおうか」
そう言ってマリモが刀に手をかけた瞬間、ウソップの姿は一瞬で消えた
「!?」
ウソップが、消えた!?
おれが驚いてウソップのいた方をもう一度見ると、マリモが「もうちっと根性見せてもよかったのにな」と言いながら立ち上がり、こちらを振り向いた
「おいコック、見てたんなら後で“ウソップ”のいた所に塩まいとけ。海水かけてもいいぞ」
「なんでいきなりおれに指図してんだよ、このクソマリモ!あれはいったい何だったんだよ!?」
トレーニングルームに向かうマリモの背中に怒鳴った直後、「「サンジー!おやつくれー!!」」というルフィとウソップの声がした