いまさら
『よかった、全部終わって。アクアくんが無事で、本当によかった』
復讐が終わった時、俺の企みを止めるために駆けつけ、そして有言実行して俺の企みのうちの一つを止めたあかねの言葉を思い出す。
危険なことはするなと言ったのに、巻き込まないために突き放したのに、地獄に連れて行く気はないとも言ったのに、もう関わらないと──いやこれを反故にしたのは俺自身だったか。ともかく、それなのにあかねは危険を顧みずに俺を救ってくれて、地獄への道に入りながらも間違えた俺を『正しい道』に連れて行ってくれた。
もう一度、その時のことを思い出す。あかねの安堵した、何も混ざっていないただただ俺のことを思っていてくれたのかとわかるあの優しい笑顔と言葉。思い出すだけで鼓動が早くなって、顔が熱を帯びる。
「……今更かよ」
自嘲気味にそう呟く。
最初はただ助けたかったから、あの動画も腹が立ったから作っただけにすぎなかった。付き合ったのも打算しかなくて、利用できるモノ扱いをしていた。そこから理解者になってくれた。俺の持ってるみっともない弱さを見せられる唯一と言ってもいい相手になった。いつの間にか大切な人に、守りたい人になっていった。一緒に幸せになりたかった。少しずつ、ずっと俺の心を救ってくれた。あのときに言った「好き」は嘘じゃない。
あかねに対してどんな感情を持っていたのか聞かれれば複雑で分からない。言語化するのが難しすぎる。
だけど、本当に今更、自覚してしまった。この感情だけはたった一文字で表現できてしまう。
────俺は黒川あかねに「恋」をしている。