いつも通りに

いつも通りに

ウタルテット:原作ホビ逃亡船長ウタの四重奏 Part3スレ



ふと意識が覚醒する。ボーっとしてしまっていたみたい。


いつものこと、と思い直す。私たちが全員揃ったらまず宴が始まり、たけなわを過ぎるとみんな静かになる瞬間がある。


自分たちのそれまでの軌跡を思い浮かべているのか、今の幸せをかみ締めているのか。


それぞれの『私』を盗み見ると、海兵の『私』は同じ海兵の『ルフィ』と見つめ合っている。

その様からはお互いへの深い信頼がうかがえる。そして、愛情も。

それはそうだ。だって、あの二人の間には…こ、子供が、いる。あの『私』は身ごもっている。

きっと、お互いへのそれらがどれほど深いものなのかを正確に知ることは、同じ存在と言えるだろう私でも、歩んできた道が違う以上できないんだろうな。


似たようなことを、人形になったことのある『私』にも感じる。


それにしても、ルフィが海兵か…。海兵の『ルフィ』。

同じ海兵同士(一人は“だった”)気が合うものがあるのか、麦わら帽子の『私』のところの『ルフィ』と話し込んでいるのをよく見かける。

あの子のところの『ルフィ』が10歳年上だと判明した時はみんなしてビックリしたな。

そんな年上の『ルフィ』がある時とても驚いてすごい様相を呈しながら海兵の『ルフィ』の肩を掴んで何かの確認をした?あと、黙り込んでしまったことがあるけど、何の話をしていたんだろう?


あ、キスしそう。した。私たちがいるというのに、自分たち以外目に入っていないのバレバレ。


麦わら帽子の『私』も、大人の余裕?包容力?がありそうな年上の『ルフィ』の首に両腕を回して抱きついて、至近距離ですごく目を潤ませて見つめている。

身も心もゆだねきっているとしか思えないあの抱きつき方からは相手に対する全幅の信頼を感じちゃう。

相手の『ルフィ』もしっかりと受け止めて見つめ返している。たしかにカッコイイな…。

いつかマキノさんのことでヤきもきしていたのも今はうなずける。年も近いし、マキノさん魅力的だもんね。


あの子が自分のところの『ルフィ』を連れてきた時はすごかった。

マタニティードレスを着た海兵の『私』を指して


『見て!ルフィ!よぉ~~~く見て!あれは未来のこの私!ううん、私たちだよ!!!』

『せっかく見せてくれているんだから、ムダにしちゃいけないよね!予行演習するべきじゃないかな!?というわけで、しよう!ん~~~❤❤❤』


と抱きついて唇を突き出したものの、やめろって頭をはたかれて涙目になりながらむくれていたっけ。


他の『ルフィ』も、大きくなったら彼のようにカッコ良くなるのだろうか?

私のところのルフィも…?大きくなってもお肉にかぶりついている姿ならすぐに思い浮かべられるんだけど。


人形になったことのある『私』はそんな四人を『ルフィ』の肩にもたれかかって微笑みながら見ている。

って!『ルフィ』がそんな『私』の肩を抱いている!?あの『ルフィ』が!?

海兵の『ルフィ』たちは何かそんなイメージもわくようになったけど、あの子のところの『ルフィ』は私のところと同じ海賊だから衝撃だ。

性格も同じと言っていいくらいだと思うし。


…ちなみに、海兵の『私』たちはまだキスをしている。いつのまにか恋人つなぎをしているし、何か、舌が絡み合っているような…?何か垂れて地面にシミを作っているような…?気のせいだよね?うん。


私のところのルフィはどうしているんだろう…?ようやくそのことに意識が向いて隣に視線を向けると——


ビックリして息が詰まった。ルフィが私を見つめている。

いつから?そう思と同時にルフィが小声で話しかけてきた。


「ウタ!こっそり抜け出すぞ!」


そう言うや、私の返事など聞かずに私の手を握って立ち上がり、歩き出した。

引きずられることになる前に慌てて私も立ち上がって後を追う。

もう!少しは年上の『ルフィ』を見習ったら!?




月明かりが照らしてくれる懐かしいフーシャ村の夜道をルフィと歩く。

ウタワールドなのはわかっているけど、月、キレイだな…そう思いながら歩いていると、ルフィがぽつりとつぶやいた。


「ほんと、良かったなァ…」

「ルフィ?」

「どのおれらも嬉しそうで、楽しそうだ。」


…幸せって言うんだよ。きっとそれは。


「いろいろあったみたいだもんね。」

「やっぱあいつらはすげェ!」


そうだね。まぁ、別の世界とはいえ私たち自身なんだけど。


「よォーし!おれはッ!これからももっともっと肉を食うぞォーーー!!!」


両こぶしを夜空に向かってかかげ、大声で力強くそう宣言する幼馴染になにそれ、と私は笑う。


「ウタ!お前ももっともっと歌えよ!」

「宴は楽しいほうが良いからな!!!」


ニカッ!と太陽のように笑う、月明かりに照らされた幼馴染を見て思う。

私も助けられた。きっと、ほかの『私』も同じに違いない。

でも、『私』も、『ルフィ』の何かの役に立てていたら嬉しいな。


「ルフィ、私を誰だと思っているの?歌のことならまかせなさい!!!」


かつて貰った歌姫の称号はだてじゃないんだよ?新時代のマークが刺繍されたアームカバーをした手を、同じように夜空に向かってかかげながら私も笑顔でそう言い返し、来た時と同じく、ルフィと手をつなぎながらみんなのところへ戻っていった。


つないだ手はとても温かかった。






戻ってみると、人形になったことのある『私』たちしか残っていなかった。ほかのみんなは?


『帰ったよ。あなた達によろしく言っておいてくれって。』


そっか。


『じゃ、おれたちも帰るよ!またな!』


「うん、またね」

「おう!またな!ししし!」


『楽しかった。またね…』


人形になったことのある『私』は小さく手を振り、『ルフィ』と手をつないで帰って行った。

…戻ったら『ルフィ』と仲良く一緒に眠るんだろうな。海兵の『私』も。身ごもっていると色々不安になるそうだから、安心するだろう。


麦わら帽子の『私』は…愛し合っているだろうな。念願叶ったあとの彼女はすごかった(二回目)。海兵の『私』に先生のおかげです!!!と大泣きしながら報告していた。

最後には海兵の『私』も貰い泣きして抱きしめ合って泣く始末。人形になったことのある『私』は良かったね私…と頭をなで。ありがとう私!!!と大声で返す麦わら帽子の『私』。

カオスか。私はうん、ホントによかったね…とつぶやくほかなかった。



次にみんなと会えるのはいつになるだろう?いや、みんなとまた会う事ができるだろうか?

別れ際、いつもこの疑問が胸をかすめていく。私も含め、みんなそれぞれの道がある。これからも色々あるに決まっている。

でも、また会えると良いな…。

麦わら帽子の『私』からはまたのろけ話を聞かされるんだろうな…とぼんやり考える。

それもいい。

今までも会えてこれた。これからも大丈夫、といつも通り自分に言い聞かせる。

そうして、私もルフィと一緒に帰ったのだった。






ちなみに、私たちは別々のベッドで寝ました。…本当だから!













そして何のことはなく、いつも通りにその時は訪れ、案の定麦わら帽子の『私』のノロケ話をイヤというほど聞かされたのだった。


年上の『ルフィ』は見事なまでの無表情で、人形になったことのある『私』は微笑みながら、ほかのルフィたちは我関せずと山盛りのお肉をがつがつ食べ散らかしながら。


あ。海兵の『ルフィ』が食わねェのか?ならくれ!と腕を伸ばして年上『ルフィ』のお皿からお肉を強奪していく。年上『ルフィ』は全く気づいていない。

いつもならあり得ない光景だ。なにか深刻な考えごとでもあるのかな…?(棒)


麦わら帽子の『私』は上気した頬に手を添え体をくねらせながらおかまいなしに情事をマシンガントークでぶっちゃけていく。


「すごく優しくベッドに寝かしてくれてね?…」ぽっ「普段はすごく紳士なのに私だけに!私だけに!ケダモノに変わる瞬間が…」キュン!「べろちゅーきもちィーんだ…」ポーッ「泣きながらいっぱい許しを乞うたのに許してくれないんだよ!…」ぷぅ!「それで結局抱き潰されちゃったし…」テレッ「あ!そうだ!ダーリンダーリン!キスマーク消えてきたからまた付け直してね?私も付け直すから」エヘヘ!「私たちもそろそろかな?(お腹をなでながら)」ペラペラペラペラ…


わかる、わかるよ。信頼できる仲間がいるとはいえ、のろけ話はなかなかできないよね。私たちだからできる話ってあるよね。

それもいい、って思ったのも私だし。でも、それでも、これらは普通は秘めるものなのでは…?

いつもと毛色がちがうのろけ話に張り付いた私の笑顔に気づいて貰えることなく話は続いていく。


(年上『ルフィ』への想いがあふれちゃったんだね…。)


海兵の『私』が時折「なるほど…」「それいいなぁ…」「二人目の時には…」とボソッと言っていたのは、きっといつも通りの気のせいに違いない。



おわり













少ないオマケ


船長ウタ「あの時よろしくヤリに行ったんじゃなかったの?」


原作ウタ「やり…? ❗ そんなわけないでしょ!?」


船長ウタ「なーんだ、そうだと思ったから私たちも帰ったのに。」


原作ウタ「……。」











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