(いつか見た「ここの冴なら相手が邪神とかでも雄ならマゾ犬にできそう」ってレスを参考にカイザー被害者枠でそれっぽい話の導入のみ。あと人様の神SSを匂わせる会話あります)

(いつか見た「ここの冴なら相手が邪神とかでも雄ならマゾ犬にできそう」ってレスを参考にカイザー被害者枠でそれっぽい話の導入のみ。あと人様の神SSを匂わせる会話あります)


 何もかもが死に絶えたように静かな夜。

 少しの音もしない花園で、月光が咲き綻ぶ『青薔薇』を照らしている。

 設置された硝子の柩には香り豊かな色とりどりの薔薇たちが敷き詰められ、中に眠る麗人の体を柔らかく受け止めていた。

 薔薇の棘が同じ薔薇を傷付けることはない。麗人の白い皮膚に刻まれたタトゥーがそうさせるのか、無数の茨に触れてなお彼は血を流さない。

 ぴくり。閉じた瞼の上で金色のまつ毛が震える。ゆるりと開かれた碧眼が月の光に晒され、ブルーとゴールドが網膜の表面で混ざり合う。

 麗人は緩慢な動きで体を起こすと、自身の周囲を見回して状況を把握した。溜息を吐き、柩のフチに手をかけて飛び越える。素足で踏んだ土の感触は冷ややかだ。

 振り返った先の柩はよく見れば内側に文字が彫刻されている。『Marry me in my flower garden, blue rose(我が花園に嫁がれよ、青薔薇)』。なるほど、この花園に数多の薔薇あれど青色の薔薇はカイザーのみだった。

 寝巻き代わりのナイトガウンのポケットからスマートフォンを取り出して、かけ慣れた知己の電話番号に最短工程で繋ぐ。

 もう眠っているのか、声が返ってくるまで10秒かかった。


「もしもし」

「俺だ。お前の隣部屋で寝ていた筈なんだが、目が覚めたら知らん花畑で知らん奴に青薔薇と呼ばれ嫁入りを迫られていてな」

「あぁ……このホテル曰く付きだって他の客が話してたな、久々のそういうアレだろ。元凶探して鞭で叩いてくるから待ってろ。嫁とろうとしてんならまず男だ、悪霊だろうが化物だろうが5分で調教してやる」

「ああ、任せた。お前も嫁に来るはめにならないよう気を付けろよ、黒薔薇?」

「……ルナか猫たちから聞いたのかよ、その話」


 柩の中のブラックバカラを一輪だけ手に取り、指先で花弁を弄びながら電話向こうの冴を揶揄う。

 肉眼で見ずともわかる、苦虫を噛み潰したような顔で冴は応えた。

 実際のところは、酒が入って口が軽くなった冴と「俺は赤なのか黒なのかどっちなんだよ」「どっちもだろ。黒薔薇ってのは赤黒い」みたいな流れの会話をした時に聞き出したものだ。

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